71連敗のデータについては、後程いろいろ調べたい。滅茶苦茶弱いチームと言うのはどんな数字になるのか興味があるからだ。
それは良いとして、私はいつも釈然としないものを感じている。
東京六大学は、今も昔も日本の学生野球の頂点だ。
NPBに最も多くの野球選手を送り込んでいるのは明治大学であり、続いて法政大学、早稲田大学、立教大学と続く。そして日本大学を挟んで慶應義塾大学。
日本のプロ野球は、東京六大学が支えていると言っても過言ではない。
間違いなく最もレベルが高いリーグなのだ。

ここに“なぜか”東京大学がいるのだ。
他の5大学は多かれ少なかれ「スポーツ枠」などで高校野球の有名選手を入学させているが、日本の最高学府である東大にそんな枠はない。みんな偏差値70と言われる厳しい受験戦争に打ち勝って入学しているのだ。

そういう秀才たちが野球漬けの日々を送った選手たちと、同じ土俵(グランド)で戦っているのだ。
相手になるはずがない。負けて当たり前である。

しかし東京六大学には入れ替え戦がないから、負け続けても降格はない。負けても負けてもリーグにとどまっている。

これが他の大学ならば「おかしいのではないか」という声が澎湃と湧き上がってくるだろう。
しかし東大を東京六大学から外せと言う声は一向に起こらない。

一つには、東大が日本の学生野球の「開祖」的な位置づけにあることがあろう。明治中期、東大の前身である第一高等学校は、学生野球界で無敵を誇っていた。「一高時代」である。
私学の雄、早稲田も慶應も一高の胸を借りて強くなったのだ。そういう伝統に敬意を表して、という面はあろう。

しかし、もっとあけすけにいうなら、負けても許されるのは、東大が日本の最高学府だからだ。トップエリートを輩出する特別の大学がリーグにいることで、「箔」がつくのだと思う。
学歴社会である日本では東大生は勝者である。将来の出世も保証されている。そうしたエリートたちと戦うことで、野球漬けの半生を送ってきた他大学の野球部員の「格」が上がるのだと思う。
だから、どんなに負け続けても東大不要論は起こらない。学歴社会の日本ならではだが、ちょっと嫌らしい話だと思う。

東大野球部のエースだったNHKの大越健介キャスターも連敗の話のたびに眉をひそめてみせるが、それはおそらくポーズだ。
そりゃ勝った方がいいに決まっているが、負けたからと言って別段状況は変わらないのだ。
東大大学院に入った桑田真澄が東大にアドバイスをしている。これで一つ二つは勝つかもしれないが、土台となる「素材」が違うのだから、連敗するに決まっているのだ。
でも東大生のプライドはさほど傷つかない。
なぜって「東大生」だもの。

真剣に野球が強くなりたいのなら、「今季全敗したらリーグを離脱する」と宣言でもすればよい。
負けてもだれも困らないし、何も変わらない。困ったふりをしているだけなのだ。

こうした例が関西にもある。
関西の大学野球の実質的なトップリーグである「関西学生野球」には東大とならぶ最高学府である京都大学が加盟している。
もともと関西には関西六大学があった。いわゆる関関同立などが加盟していた。ある時期まで東京六大学同様入れ替え戦はなかったが、他の大学の要望もあって入れ替え戦にしたところ、関関同立がリーグに揃わない事態となった。

これを不満に思う関係者が独自のリーグ設立に動き、関関同立に近大、そしてなぜか京都大学も入って新たな「関西六大学」が生まれたのだ。
野球の実力では上回っているのに、ここに加われなかった大学は悔しい思いをしたのだろう。“「関西六大学」の名は使わせない”、ということになって「関西学生野球」と名称を変えたのだ。

恐らくは東京六大学に東大が入っているのに倣って、京大を仲間に入れたのだろう。
京大も東大に負けず劣らず弱いが、出て行けと言う声は聞かれない。やはり「京大」だからだ。

東大、京大は「野球の素質がない普通の人が、トップクラスの選手と試合をすればどうなるか」という実験を延々と続けているようにも思える。
ごくたまに東大出のプロ野球選手も出てくるが、活躍したことはない。

別にかまわないのだが、そろそろ違うストーリーもあって良いと思う。

MLBでは、プリンストン大学やハーバード大学、MITなど錚々たる大学出身の選手がたくさんいる。
ウィリー・べナブルやクリス・ヤングはプリンストン大出身。クレイグ・ブレスローはエール大学出身だ。
私は向こうの大学のシステムは良くわからないが、高学歴の野球選手はおそらく文武ともに抜群の成績を残したのだと思う。
昔、ゲール・ホプキンスと言う選手がいた。広島、南海で主軸を打ったが、同時に医師になることを目指して日本の医大に通うなど勉強をしていた。
他の野球選手が試合が終わって飲みに行ったり、女の子をひっかけたりしている間、彼はこつこつ勉強していたのだ。
今、ホプキンスは整形外科医として活躍しているという。

日本では、野球選手になる子供は小さいころから野球ばっかりさせる。勉強をする子はずっと勉強。野球バカは野球バカ、勉強バカは勉強バカ。
だから、本当の意味での文武両道エリートは滅多に生まれない。
また、一度レールに乗ったら、他の分野に進むのは容易なことではない。チャンスは非常に限られている。

「僕ちゃん、負け続けちゃって困っている」と東大生は言うが、彼らが本気にリーグで好成績を上げたいとは思っていないのは明白だ。

東大(京大もだが)が、本気で負けて悔しいと思っているのなら、OBも含めた関係者を総動員して「勉強もできる凄い野球選手」を生み出すシステムを作ったらどうか。
それは日本の発展にも絶対に役立つはずだ。

その気がないのなら「ごまめ」の身分に満足していればいいのだと思う。

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