kouryu-0604
パ、挽回。



重版決定だそうで。もう少し早く書評をすべきだった。今、本を紹介するのは「高いところに土持ちをする」ようなものだ。⇒「黄金の大黒」参照
この本は、面白いし、見ているだけでも楽しいが、それだけではなく、資料価値もあるし、ある種の職業の人には、利用価値も高いだろう。

私にスポーツメーカーや、スポーツビジネス系のクライアントがいたら、即座に1年ごとの内容を球団別の一覧表にまとめた資料を作って、クライアントに提示するだろう。場合によっては高く売れるかもしれない。
プロ野球のマーケティング、特にマーチャンダイジングが、ここ10年でどのように変化したかが、的確に紹介されている。
単にモノやサービスがそのまま紹介されているだけでなく、長谷川晶一というバランス感覚に優れたコンシューマーの批評が加えられているので、違いやトレンドがくっきりとわかるのだ。
この本、マーケッターには使い勝手の良い資料集になっていると思う。しかし、使うときは®長谷川晶一 のクレジットをお忘れなく。

資料としても優秀だ。プロ野球界の動きが、側面史としてしっかりとらえられている。
松坂大輔の移籍によって入ってきたポスティングフィー5111万ドルの一部が、ファンクラブの強化に使われていたと言うのは興味深い。
そしてダルビッシュのケースが微妙に違うことも興味深い。西武、日本ハムという企業の個性の違いなのだろう。

また横浜という球団が、ファンサービスやマーケティングの分野でもまったく無能、あるいは無気力だったことが記されているのも面白い。
TBSは、しがらみで球団保有したのだろうが、お得意のマーケティングを全く動員しなかった。要するにやる気が無かったのだろう。

巨人というチームの過剰かつ懇切丁寧なサービスも印象的だ。まるで老舗ホテルのようなもてなしぶり。
私は讀賣、巨人は良くも悪くも「老舗」だと思っているが、その良い面が出ている。「他球団とは違うのだ」というプライドもあるのだろう。

広島の「CQ(カープ・クオリティ)」も興味深い。どういう企画会議を経てこんなものが生み出されたのか、という珍商品が頻発されるのだ。

書き下ろしではなく、毎年「野球小僧」「野球太郎」に書かれた記事がベースになっているので、その時々の時代感覚が反映されているのも良い。

私は長いこと野球ファンをしているが、ファンクラブに入ろうと思ったことはない。特定球団のファンではないからだが、南海という贔屓チームがあったときでも、ファンクラブには見向きもしなかった。
チームを応援するのはあくまで「私個人」であり、球団に誘われて統一行動をしたり、誰かと一緒に応援したりすることには違和感があったのだ。

「人に言われて何かをする」ことを嫌う性格が災いしていたのだが、この本を読んで、ファンクラブに入りたいという気持ちがふつふつとわいてきた。
長谷川さんの家には、あらゆるチームのいろんなグッズがあるのだ、と思ったらコレクターの血が騒ぎ出したのだ。
とりわけ、球団オリジナルのグラブのコレクションは、いいなあ、と思ってしまう。



こうしたファンクラブは、ある意味でNPB独特のものだ。

MLBではライセンシーやマーチャンダイジングは機構が一括している。
球団はローカルなマーケティングはできるが、全国的にファンを募って、オリジナルグッズを配ることはできない。球団が、グッズを勝手に制作、販売することはできないのだ。
長谷川さんは、ファンクラブの中には来場促進には熱心だが、全国のファンに対する配慮がないものがあると指摘しているが、それが本来のファンクラブの在り方でもあるのだ。

私はNPB改革の基本は、全国的な放映権、ライセンシー、マーチャンダイジングを機構が一括して担うことだと思っている。
そうなれば、ファンクラブはより来場促進に特化したものになるだろう。
グッズなどの制作、販売も大きな制約を受けると思われる。
NPBの発展のためには必要だと思うが、CQのような不思議なグッズは消えていくのだろう。

長谷川さんは頑張って、15年、20年とグッズを集めていただきたい。
マニアとしては今後は「普段使い」と「保存用」の2種類を確保していただき、将来的には「HFM(長谷川ファンクラブミュージアム)」の建設を目指していただきたいと思う。


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