昨日、言及したように、「侍ジャパン」はNPBの主流ではない。メインの事業でもないし、人材的にも主流派の人はいない。しかし、この事業はNPB、野球界の「希望の星」になっている。これはどういうことなのか。
NPBを牛耳っているのは、12球団のオーナーたちである。
彼らは偏に「既得権益の保持」を考えている。
これは今のオーナー、経営者だけではない。はるかに昔から、ずっとそういう姿勢だった。
1950年NPBが2リーグに分立した時は、それを提唱したのが正力松太郎だったのにもかかわらず、巨人、中日などの既存球団は「ファンを奪われる」と新規参入に強く抵抗した。
今、自分たちがやっているビジネスを守り、新規参入者をつくらない、というのがNPB球団オーナーの基本姿勢だった。
後年だが、30億円という巨額の連盟加入料も参入障壁として設けられたのだ。
特にセリーグは、保守的だった。DH制や前後期制などパリーグが観客動員のための新機軸を打ち出した時も、同調することはなかった。
セリーグはDH制について
という理由を掲げている。今となっては陳腐化しているが、未だにセリーグの公式サイトに掲げられている。
25年経って、今ではイースタン、ウェスタン両リーグの大部分の試合でDH制が導入されている。また、世界の野球の趨勢もDH制が主流になっているが、セリーグは未だに導入していない。
最近のコミッショナーの人事をめぐっても、パリーグがビジネスマン、金融関係者など実務肌の人材を候補に推したのに対し、セリーグは相も変わらず法曹関係者を据えようとした(パの一部球団は、現侍ジャパン担当の荒木重雄氏を推した)。
結局、今回もセリーグの主張が通り、ナベツネ氏が推した検事出身の熊﨑勝彦氏がコミッショナーに就任した。
ことほど左様に「保守」「現状維持」を金科玉条の如く保持し続けるセリーグが、なぜ“13球団目の創設”と言われる「侍ジャパン」の事業化を認めたのか?
一つには、前回も触れたとおり「侍ジャパン」が、電通=讀賣新聞の強い影響下にあり、讀賣グループがハンドリングできることが大きいと思われる。ナベツネ氏風に言えば「この件も俺がおさえてるんだ!」と言うことだろう。
ではあるが「侍ジャパン」のマネジメントを切り盛りするのは讀賣、巨人系ではなく、パリーグや他球団出身者。それも親会社の出向者ではなく、現場上がりのたたき上げである。
これは、NPBの体制側に事業を切り回す力量のある人材がいないことを物語っている。
「親会社の顔色をうかがっているサラリーマン」と揶揄される幹部職員には、その才覚がないのだろう。
PLMを中心とするパリーグサイドの人材、そして他の企業でスポーツマネジメントを経験した人材が、「侍ジャパン」を取り仕切っているのだ、
しかしながら、より本質的な理由は、守旧派の総本山たる巨人も含めて、NPBの各球団が、明るい将来展望を持てなくなってきていることにある。
かつて1試合1億円と言われた巨人戦の放映権料は、ある球団の関係者によると3000万円、あるジャーナリストによると「もう少し多い」程度に落ちている。
しかも地上波での巨人戦中継は、今年は8試合。他球団も数試合にとどまっている。
全盛期にはセリーグ各球団に10億円以上転がり込んできた巨人戦の放映権料は、今や2~3億円。一方で選手年俸は以前よりも大幅に騰がっている。
現場の営業努力で入場料収入やグッズ販売、スポンサー収入などは増えてはいるだろうが、多くの球団が単独の決算では赤字かとんとん。しかも市場が頭打ちの中で、次の展開が見いだせなくなっている。
まことしやかな話かもしれないが「巨人の身売り」さえ、あり得ない話ではないとされる(情報源あり)。
そんな中で、NPBの守旧派サイドの人も含めて、多くの関係者が「侍ジャパン」に一縷の望みを託しているのだと思う。
NPBは利益相反する人や企業の集まりではあるが、パイの縮小に不安感を抱いていると言う点では、認識はほぼ共通する。
NPBのすべての人たちにとって「侍ジャパン」は、望むと望まないとに拘わらず「次なるステップ」になっているのだと思う。
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彼らは偏に「既得権益の保持」を考えている。
これは今のオーナー、経営者だけではない。はるかに昔から、ずっとそういう姿勢だった。
1950年NPBが2リーグに分立した時は、それを提唱したのが正力松太郎だったのにもかかわらず、巨人、中日などの既存球団は「ファンを奪われる」と新規参入に強く抵抗した。
今、自分たちがやっているビジネスを守り、新規参入者をつくらない、というのがNPB球団オーナーの基本姿勢だった。
後年だが、30億円という巨額の連盟加入料も参入障壁として設けられたのだ。
特にセリーグは、保守的だった。DH制や前後期制などパリーグが観客動員のための新機軸を打ち出した時も、同調することはなかった。
セリーグはDH制について
という理由を掲げている。今となっては陳腐化しているが、未だにセリーグの公式サイトに掲げられている。
25年経って、今ではイースタン、ウェスタン両リーグの大部分の試合でDH制が導入されている。また、世界の野球の趨勢もDH制が主流になっているが、セリーグは未だに導入していない。
最近のコミッショナーの人事をめぐっても、パリーグがビジネスマン、金融関係者など実務肌の人材を候補に推したのに対し、セリーグは相も変わらず法曹関係者を据えようとした(パの一部球団は、現侍ジャパン担当の荒木重雄氏を推した)。
結局、今回もセリーグの主張が通り、ナベツネ氏が推した検事出身の熊﨑勝彦氏がコミッショナーに就任した。
ことほど左様に「保守」「現状維持」を金科玉条の如く保持し続けるセリーグが、なぜ“13球団目の創設”と言われる「侍ジャパン」の事業化を認めたのか?
一つには、前回も触れたとおり「侍ジャパン」が、電通=讀賣新聞の強い影響下にあり、讀賣グループがハンドリングできることが大きいと思われる。ナベツネ氏風に言えば「この件も俺がおさえてるんだ!」と言うことだろう。
ではあるが「侍ジャパン」のマネジメントを切り盛りするのは讀賣、巨人系ではなく、パリーグや他球団出身者。それも親会社の出向者ではなく、現場上がりのたたき上げである。
これは、NPBの体制側に事業を切り回す力量のある人材がいないことを物語っている。
「親会社の顔色をうかがっているサラリーマン」と揶揄される幹部職員には、その才覚がないのだろう。
PLMを中心とするパリーグサイドの人材、そして他の企業でスポーツマネジメントを経験した人材が、「侍ジャパン」を取り仕切っているのだ、
しかしながら、より本質的な理由は、守旧派の総本山たる巨人も含めて、NPBの各球団が、明るい将来展望を持てなくなってきていることにある。
かつて1試合1億円と言われた巨人戦の放映権料は、ある球団の関係者によると3000万円、あるジャーナリストによると「もう少し多い」程度に落ちている。
しかも地上波での巨人戦中継は、今年は8試合。他球団も数試合にとどまっている。
全盛期にはセリーグ各球団に10億円以上転がり込んできた巨人戦の放映権料は、今や2~3億円。一方で選手年俸は以前よりも大幅に騰がっている。
現場の営業努力で入場料収入やグッズ販売、スポンサー収入などは増えてはいるだろうが、多くの球団が単独の決算では赤字かとんとん。しかも市場が頭打ちの中で、次の展開が見いだせなくなっている。
まことしやかな話かもしれないが「巨人の身売り」さえ、あり得ない話ではないとされる(情報源あり)。
そんな中で、NPBの守旧派サイドの人も含めて、多くの関係者が「侍ジャパン」に一縷の望みを託しているのだと思う。
NPBは利益相反する人や企業の集まりではあるが、パイの縮小に不安感を抱いていると言う点では、認識はほぼ共通する。
NPBのすべての人たちにとって「侍ジャパン」は、望むと望まないとに拘わらず「次なるステップ」になっているのだと思う。
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では先々、侍ジャパンをどんなコンテンツに育てていきたいのか?
再三指摘されていますが、そもそもサッカーで代表戦ビジネスが大当たりしたのは
かの競技の「世界の舞台」が比べようもないほど
グローバルかつ整備されていたからであって、
今すぐ野球でその後追いをしようと考えるのは
浅はかにもほどがあると言わざるを得ません。
サカ豚じゃなくたって、笑いたくなりますよ。
年に何試合もできず、またWBC予選・本選以外は
そのほとんどが花相撲的な親善試合でしかない現状で
ただでさえジャンル自体からとうに離れている世間の耳目を
広く、また強く惹き付けられるとは、正直とてもとても…。
現状まだそんな段階の野球の国際試合を、
本当にかつての巨人戦中継に代わるコンテンツに育てようというのなら
数十年、いやもっと先の実りを目指した地道な世界的普及活動を
IBAFに率先する形で行わなければダメでしょう。
やるならそれだけの覚悟と(世の嘲笑に耐える)根性、
そして長期的ビジョンを持ってやってもらいたいです。
(この前、Facebookの侍ジャパン公式ページにそう書いたら削除されました(^_^;))