IBLJ

眼光は、チームのどの選手よりも鋭いかもしれない。
徳島インディゴソックスの坂口裕昭代表は、2011年2月に就任した。
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「神戸の法律事務所で、弁護士として企業法務や企業再生を担当していました。兵庫県弁護士会のチームで野球をしていたのですが、その頃に四国アイランドリーグPlusの鍵山誠代表と知り合いました。また高知のオーナーである北古味鈴太郎さんとも面識を得ました」

坂口代表は関西独立リーグのトライアウトを受けたこともある。野球への情熱も半端ではない。
2010年、徳島インディゴソックスが経営危機に陥った。そんなときに鍵山代表と北古味オーナーと会食する機会があった。

「鍵山さんは『徳島がどうしようもない、このままでは止めざるを得ない、でも四国で徳島だけ止めることなどできない。やってみてくれないか』と言われました。そこで私が代表を引き受けることにしたのです。鍵山さんは『10年一括り、10年目まではやれることをすべてやりたい』と言っていました。だったら私も、10年目までは頑張ろう、と決心したのです」

坂口さんは東京大学法学部卒の弁護士である。俗な質問とは思ったが、その決心をするとき躊躇いはなかったのか、聞かずにはおれなかった。
大きな目を見開いて、代表は言った。

「それが日本がスポーツ後進国だと言うんです。私はアメリカで暮らしたことがありますが、アメリカではスポーツビジネスはあこがれの仕事です。みんながスポーツマネジメントの仕事をしたいと思う。アメフトしかり、NFLしかり、もちろんMLBも。スポーツ文化はビジネスと密接に結びついています。NO SPORTS,NO LIFE。スポーツマネジメントのステイタスは非常に高いんです」

でも、苦労はあったんじゃないですか?独立リーグの運営は大変でしょう?

「私の顔を見てください。血色よく笑いながら話しているでしょう。これが4年間の仕事の内容を物語っています。何事にも代え難い経験をしてきました」

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代表に就任して、坂口代表はまず経営内容を全面的に見直し、球団の収益構造を新たに構築した。
70%がスポンサー収入、10%弱が入場料収入、同じく10%弱がグッズ、イベント収入。
県からの支援は数%。ほぼ他球団と同じ比率だ。
スポンサー収入は、選手たちの地域貢献に基づいている。
選手は「野球50%:地域貢献50%」ですね、と聞くと。

「いや、『野球100%:地域貢献100%』ですよ」と即座に返ってきた。

徳島はこれまで6人の選手をNPBに送り出しているが、選手を育成し、得た収益は微々たるものだ。

「今の収入構造そのものが、独立リーグの欠陥ですね。寿司屋は寿司を食べてもらって成り立っている。独立リーグは、選手の育成をして成り立つべきですが、選手育成の収入は微々たるもの。ビジネスモデルとしては話になりません。これからの10年で変革していきます。当たり前の企業経営ができて、なおかつ強いチームを作ることができて、はじめてビジネスモデルを構築したと言えると思います」

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坂口代表は、他の球団の代表とは異なり、企業の後ろ盾を持たない。

「資産を持ってやっているのではなく、私自身が独立リーガーとしてやっています。代表とGMを兼務し、チームの補強から営業、マネジメントまでを見ています。年間予算を組んで会社を回しているのです」

四国アイランドリーグPlusは、海外へ向けた情報発信にも前向きだが、坂口代表はこの分野でも独自の考えを持っている。

「今、徳島には外国籍が2人、オーストラリア系のハーフの選手もいます。こういう形で外国の選手の受け入れ、送り出しもしますが、私はアジア圏の野球後進国に指導者を派遣するような展開も考えたいですね。
東南アジアに拠点を置いて、現地の人と野球を通じて交流したり、スポーツや教育を推進したり、アジアの野球市場を開拓して、そのハブの位置づけになりたいですね。
四国アイランドリーグPlusの球団で受け入れた外国人選手が、各国のナショナルチームの主力になったり、指導者になったりすることで、市場は深く、広くなっていくと思います。
アメリカも良いですが、これからの国際戦略は、アジアが中心になるのではないでしょうか」


前述したように、坂口代表はGMも兼務している。

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「当然、チーム力の強化を常に考えています。でも勝利のためにNPBや社会人のベテラン選手をとってくるようなことはしません。若い選手を育成して、戦力強化を図ります。うちの選手の平均年齢は22.6歳です。
今の島田直也監督は私と同期の入団です。指揮官としても選手の指導者、育成者としても最高の人材ですね。
キャプテンの松嶋 亮太、大谷 真徳も私と同期の入団。彼らと意識を共有し、強いチーム作りを続けています。
それまで徳島はリーグ最弱チームでした(2010年までの勝率は.363)でも2011年以降は6割近い勝率です(2013年度末までで.591)。育成と強化は両立することを、身を以て示したいと思います」


四国アイランドリーグPlusの各球団は、創設時にはカラーの差はそれほどなかったように思うが、若くて意欲的な経営者を得て、強い個性が出始めている。

鍵山代表との約束の10年目を迎えて、坂口代表ますます意気軒高だ。

「チームをお引き受けした時に、私が40代、50代であったならこの仕事は務まらなかったかもしれません。この4年間で経営、戦力両面でチームを立て直しました。これからは積極的に打って出ます。そうしないと、埋もれてしまいます。これからが勝負ですね」


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