ここしばらくワインドアップで投げていたダルビッシュだが、この日はなぜかノーワインドアップで初球を川崎に投じた。147km/hの速球。2球目からは振りかぶったが、忘我に近い、ただならぬ入れ込みようが見て取れた。


この試合で福岡ソフトバンクが引き分け以上だとマジックナンバーが出る。また一昨日はここ4年間、ボスと仰いだ梨田監督が退陣を表明。
吉井コーチが「今日のダルビッシュの気合の入り方は凄い」と言っていた。







1回はエラーの出塁を許したものの、内川、カブレラという強打者を連続三球三振。この日は速球のコントロールがやや甘かったが、スライダーが抜群だった。捕手の鶴岡が体を伸ばさないと取れないような大きく外れたスライダーに、バッターが手を出す。恐らく打席からは、ストライクゾーンに来るように見えるのだろう。スライダーだけでなく、ボールの球に手を出す打者が多かった。キレがあったのだろう。
例によって日本ハムは、ソフトバンク戦になると全く打てなくなるが、ダルビッシュは自軍の攻撃には全く頓着せず、ぐいぐいと相手を抑え込んでいく。

ソフトバンクはダルに2勝3敗。ダルの攻略法を一番よく知っている。この日は相性の良い福田秀平を先発起用。このほっそりとした打者はバットを短めに持ち、内角球を呼び込むように大きく構えしぶとく球に食らいつく。コツンとバットに当ててファウルにしたり、バントの構えをしたり、忙しくダルを挑発する。3回には先頭で内野安打、2死後本多も内野安打とダルを揺さぶったが、内川は三振。今のダルは、いざとなればどんな打者からでも三振が取れる。これは強い。

6回、見方が絞り出すようにして1点先取。ベンチ前で見ていたダルは大きく雄叫びをあげた。

8回まで4安打されたが、いい当りは一つもなかった。福田の2本目の安打はスライダーの曲がりはなをすくい上げた見事な一打だったが、落ちたところが良かったのだ。累上にランナーを背負っても、全く危なげがなかった。

見方が7回、8回と満塁のチャンスをものにできず、1点差のままで最終回へ。

8回を投げ終えて、ダルはベンチに引きさがった。クローザーに後を託すのかと思われた。ベンチ前でキャッチボールもしなかった。しかし、ダルは9回、マウンドに。

この回のダルは明らかに上ずっていた。ここまで完全に抑え込んでいる内川に、スライダー、直球が2球大きく外れた。投球間隔が短すぎる。カウントを整えに来た内角直球を、この日、はじめてジャストミートされた。速球に対応できなくなっているカブレラは三振に打ち取ったものの、走者は盗塁。1死二塁。ここで吉井コーチがマウンドへ。「歩かしてもええで、ほな、また。」というところだろうが、ダルはその気は毛頭なかった。松田は、初球、148km/hの低めの速球をすくい上げてフェンス直撃の三塁打。この日のソフトバンク打者は、外角低めの球を逆らわずに打つ、という意識があったようだ。

1死三塁のピンチは切り抜けたもののダルの17勝目はならず、ソフトバンクにマジックが点灯した。

2009年のWBC。国際的な晴れ舞台で、ダルビッシュは気が上ずって球が浮き、十分な活躍ができなかった。それから2年余、ダルは肉体的にも精神的にも飛躍的に成長したが、「ここ一番」で一人相撲を取る傾向は消えていない。

この日は本塁打はおろか、四球も許さなかった。12三振を奪ったことで、DIPSはさらに向上して1.55。NPBの記録をさらに更新した。前人未到の境地である。

MLBでも十分に通用すると思うが、今の課題は、過酷なスケジュールに対応することと、スターター、セットアッパー、クローザーという分業が確立されたMLBのシステムと、「俺が、俺が」というダル自身の強い自意識との折り合いをどうつけるか、ということだ。煎じつめれば無敵のダルビッシュの唯一の敵は、ダル自身だということになろう。


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