今年のオールスターは2試合、いずれもテレビ朝日の中継だった。テレ朝は野球中継をするのは能力的に無理だと思う。痛すぎる。
スポンサーのマツダはオールスターゲーム全体のスポンサーでもあり、資本関係はないにしてもカープのスポンサーだから、しっかり放送してほしいとは思っただろう。
しかしプロ野球中継は、視聴率が取れないので、手を上げる放送局はそれほど多くなかったのではないか。
昨年もテレビ朝日は、オールスター戦(3試合あった)のうち2試合を中継した。恐らく営業的には厳しかっただろうが、代理店やスポンサーの関係もあって、今年も引き受けたのではないかと察する。
引き受けるにしても昨年のように、試合終了まで放送するわけにはいかない。後番組のスポンサーに無理は言えない。
だから1戦目は20:54、2戦目も21:24分で打ち切る。
2戦目がより長く放送できたのは、藤浪、大谷の投げ合いがあったからだろう。2人のインタビューをする時間を確保するためだ。
恐らく、藤浪、大谷の投げ合いは、地上波局、代理店サイドがNPBに働きかけたのだと思う(このアイディアそのものは素晴らしいけれども)。
プロ野球放送が「オワコン」なのは、今回の局の扱いを見ても痛感する。プロ野球はスポーツニュースのネタではあるし、WBCでは大騒ぎをしたいから、お義理で付き合っておこうか、というところか。
私は45年ほど野球を見ているが、プロ野球の試合は確実に面白くなっている。パワー、スピード感もあるし、作戦も多様化している。
また見る側の情報量もはるかに多くなっているから、選手の動きを「意味」として把握することができる。
さらに、試合そのものも球団の力量差が縮まり、接戦が増えているように思う。
優れた投手による息詰まる投手戦や、パワフルな打撃戦など、見ごたえも増している。
問題は「見る側」「作る側」なのだ。
以前にも書いたが、ここ30年ほどで古典芸能の上演時間は3時間半から2時間弱に縮まった。長すぎると聴衆が辛抱して見てくれない、というのだ。
かつてスポーツや芸能は、じっくりと「見る」娯しみだったが、今では「参加する」「一緒に騒ぐ」ものになっている。「カラオケ」の登場以来、じっと座って「見る」ことが苦手な人が増えている。
テレビ制作側はこうした「こらえ性のない」視聴者のために「すぐに笑える」番組をつくるようになった。「5分に1度はクライマックスが来る」番組が普通になった。そうした番組の氾濫が、さらに視聴者の「こらえ性」を無くさせた。
野球中継は、こうした現代のニーズには全く適合していない。
時間は長いし、いつ盛り上がるかわからない。それまでずっと注視していなければならない。そのうえ、予備知識が無ければ面白くない。自分が能動的に関与することもできない。
作る側も「野球中継は面白いはずがない」という前提で制作しているのだ。だから予算が許せばアナの横にたくさんゲストを並べたがる。そして試合中であっても「盛り上がり」をねつ造したがる。
テレビ朝日には「メジャーな野球中継になると、自動的に中居正広が付いてくる」という大きなハンデキャップがある。
芸能界は「マフィア化」していると言われるが、これは恐らく芸能事務所への接待だろう。口跡も悪く頭の回転もスローモーな中居の話を喜んでいるファンは全国で115人くらいしかいないのではないか。
そして工藤公康、古田敦也(別コーナーで前田智徳)という単体で使えばいい話をする解説者をお飾りとして置く。
昨日のアナウンサーは清水俊輔。テレ朝では最も野球を分かっているアナだと言って良い。
しかし、話を振る優先順位が中居―古田―工藤になっているために、まず最初にけつまづく。話は広がらない。
そこへ後から後から試合を終えた選手がやってくる。
目の前で試合をしているのに、狭い放送ブースに席を設けて、アナや中居や解説者が質問を次々ぶつけるのだ。この質問が“痛い”。
「ベンチで誰と話したか」
「何を話したか」
「何を教えてもらったか」
「ふだんは誰と仲が良いか」
「誰と食事に行くか」
芸能人と同様、プライベートや人間関係のことばかり聞くのだ。例えば
「今日対戦した投手は本気で投げていたか」
「どの内野手がうまいと思うか」
「レギュラーシーズンならどんな攻め方をするか」
など、野球のことをもう少し聞けばいいと思うのだが、そういうことは聞かない。
局側がかたくなに「野球の話は面白くない」と信じているからだ。
インタビューをだらだら続けるのも「試合だけを流したら、すぐに飽きられる」と思っているからだ。
タイムリーや本塁打などドラマが起こるまでの間をトークで「つないでいる」のだ。
だから試合経過はほとんどわからない、身が入らない。
作る側が「野球を見せたくない」とかたくなに思っているからだ。
で、合間に六本木で真夏にやる客寄せイベントの告知をする。試合は続いているのに、平気で遮って、自分たちの「販促イベント」の宣伝をする。
何とかして「面白くない野球中継」の時間を有効活用しようとしているのだ。くだらない子供だましのお手盛りイベントの告知の方が、お客は喜ぶと思っているのだ。
かくして昨日のオールスターゲームも「土曜ワイド劇場」にコールド負け。試合途中に打ち切られた。
清水アナは「申し訳ありません」「ごめんなさい」と謝っていた。彼はわかっているのだろう。
地上波テレビの衰退は「自分たちが面白い」と思ってもいないものを作っていることに象徴される。何かを提案しようとか、波紋を与えようとかいう気概はない。ただ視聴率を上げて、お金をもらうことを考えている。
スポンサーからすれば、こういう委託業者は一番望ましくないと思うのだが。
テレビ朝日だけではないが、地上波はオールスターゲーム番組制作を返上してはどうか。
NPBにとって放映権料は大きな実入りだろうが、ろくな番組を作らないし、やる気がないから却ってイメージダウンだと思う。
むしろNPBサイドがPLMなどの協力も得て、番組を自主制作し、これを地上波やBS、CSなどに販売してはどうか。
パリーグTVは、選手の素晴らしいプレーをFBなどにどんどんアップしている。
選手の魅力をピンポイントでタイムリーに発信している。
そうした技術と熱意を集約して、自らの手で「プロ野球の魅力」をアピールするときが来ていると思う。
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しかしプロ野球中継は、視聴率が取れないので、手を上げる放送局はそれほど多くなかったのではないか。
昨年もテレビ朝日は、オールスター戦(3試合あった)のうち2試合を中継した。恐らく営業的には厳しかっただろうが、代理店やスポンサーの関係もあって、今年も引き受けたのではないかと察する。
引き受けるにしても昨年のように、試合終了まで放送するわけにはいかない。後番組のスポンサーに無理は言えない。
だから1戦目は20:54、2戦目も21:24分で打ち切る。
2戦目がより長く放送できたのは、藤浪、大谷の投げ合いがあったからだろう。2人のインタビューをする時間を確保するためだ。
恐らく、藤浪、大谷の投げ合いは、地上波局、代理店サイドがNPBに働きかけたのだと思う(このアイディアそのものは素晴らしいけれども)。
プロ野球放送が「オワコン」なのは、今回の局の扱いを見ても痛感する。プロ野球はスポーツニュースのネタではあるし、WBCでは大騒ぎをしたいから、お義理で付き合っておこうか、というところか。
私は45年ほど野球を見ているが、プロ野球の試合は確実に面白くなっている。パワー、スピード感もあるし、作戦も多様化している。
また見る側の情報量もはるかに多くなっているから、選手の動きを「意味」として把握することができる。
さらに、試合そのものも球団の力量差が縮まり、接戦が増えているように思う。
優れた投手による息詰まる投手戦や、パワフルな打撃戦など、見ごたえも増している。
問題は「見る側」「作る側」なのだ。
以前にも書いたが、ここ30年ほどで古典芸能の上演時間は3時間半から2時間弱に縮まった。長すぎると聴衆が辛抱して見てくれない、というのだ。
かつてスポーツや芸能は、じっくりと「見る」娯しみだったが、今では「参加する」「一緒に騒ぐ」ものになっている。「カラオケ」の登場以来、じっと座って「見る」ことが苦手な人が増えている。
テレビ制作側はこうした「こらえ性のない」視聴者のために「すぐに笑える」番組をつくるようになった。「5分に1度はクライマックスが来る」番組が普通になった。そうした番組の氾濫が、さらに視聴者の「こらえ性」を無くさせた。
野球中継は、こうした現代のニーズには全く適合していない。
時間は長いし、いつ盛り上がるかわからない。それまでずっと注視していなければならない。そのうえ、予備知識が無ければ面白くない。自分が能動的に関与することもできない。
作る側も「野球中継は面白いはずがない」という前提で制作しているのだ。だから予算が許せばアナの横にたくさんゲストを並べたがる。そして試合中であっても「盛り上がり」をねつ造したがる。
テレビ朝日には「メジャーな野球中継になると、自動的に中居正広が付いてくる」という大きなハンデキャップがある。
芸能界は「マフィア化」していると言われるが、これは恐らく芸能事務所への接待だろう。口跡も悪く頭の回転もスローモーな中居の話を喜んでいるファンは全国で115人くらいしかいないのではないか。
そして工藤公康、古田敦也(別コーナーで前田智徳)という単体で使えばいい話をする解説者をお飾りとして置く。
昨日のアナウンサーは清水俊輔。テレ朝では最も野球を分かっているアナだと言って良い。
しかし、話を振る優先順位が中居―古田―工藤になっているために、まず最初にけつまづく。話は広がらない。
そこへ後から後から試合を終えた選手がやってくる。
目の前で試合をしているのに、狭い放送ブースに席を設けて、アナや中居や解説者が質問を次々ぶつけるのだ。この質問が“痛い”。
「ベンチで誰と話したか」
「何を話したか」
「何を教えてもらったか」
「ふだんは誰と仲が良いか」
「誰と食事に行くか」
芸能人と同様、プライベートや人間関係のことばかり聞くのだ。例えば
「今日対戦した投手は本気で投げていたか」
「どの内野手がうまいと思うか」
「レギュラーシーズンならどんな攻め方をするか」
など、野球のことをもう少し聞けばいいと思うのだが、そういうことは聞かない。
局側がかたくなに「野球の話は面白くない」と信じているからだ。
インタビューをだらだら続けるのも「試合だけを流したら、すぐに飽きられる」と思っているからだ。
タイムリーや本塁打などドラマが起こるまでの間をトークで「つないでいる」のだ。
だから試合経過はほとんどわからない、身が入らない。
作る側が「野球を見せたくない」とかたくなに思っているからだ。
で、合間に六本木で真夏にやる客寄せイベントの告知をする。試合は続いているのに、平気で遮って、自分たちの「販促イベント」の宣伝をする。
何とかして「面白くない野球中継」の時間を有効活用しようとしているのだ。くだらない子供だましのお手盛りイベントの告知の方が、お客は喜ぶと思っているのだ。
かくして昨日のオールスターゲームも「土曜ワイド劇場」にコールド負け。試合途中に打ち切られた。
清水アナは「申し訳ありません」「ごめんなさい」と謝っていた。彼はわかっているのだろう。
地上波テレビの衰退は「自分たちが面白い」と思ってもいないものを作っていることに象徴される。何かを提案しようとか、波紋を与えようとかいう気概はない。ただ視聴率を上げて、お金をもらうことを考えている。
スポンサーからすれば、こういう委託業者は一番望ましくないと思うのだが。
テレビ朝日だけではないが、地上波はオールスターゲーム番組制作を返上してはどうか。
NPBにとって放映権料は大きな実入りだろうが、ろくな番組を作らないし、やる気がないから却ってイメージダウンだと思う。
むしろNPBサイドがPLMなどの協力も得て、番組を自主制作し、これを地上波やBS、CSなどに販売してはどうか。
パリーグTVは、選手の素晴らしいプレーをFBなどにどんどんアップしている。
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延長なし、しかもBS朝日やテレ朝チャンネルでの同時放送若しくはリレーがなかったのは中居正広を起用したからでしょう。亀梨和也を地上波で起用するため地上波とBS日テレ若しくはG+で別の解説・アナウンサーというのと同じ様なケースなのかも。
しかも、大谷・藤浪や巨人の選手のトークばかりで金子千尋のピッチングには殆ど触れないのはウンザリで、途中からはテレビの音声消してラジコを聴いてました。たまたまABCラジオ聴いてましたけど、ちゃんと試合を伝えてたので、ワイプの中居と巨人菅野に苛つきながらも(笑)、試合は楽しめましたが、途中で土曜ワイド劇場に(笑)。
NPBは「オールスターは完全中継を契約の条件としていない」と言ってるそうですが、数少ない機構主管試合なんだから、例えば放映権料下げてでも完全中継を徹底するとか、地上波ダメならJ-SPORTSやFOXとかに放映権を渡すとかにしてもらいたいです。