昨日の試合についての記事に、いろいろな意見をいただいている。議論したいと思って稿を起したので、所期の目的を達している。
今日になって、J-Sportsでこの試合を改めて見直してみると、春浅く調整途上でありながら、選手はよく頑張っていたことがわかった。打撃も走塁も真剣だった。初回に1点を先取されたことで、選手の目の色が変わった。少なくともオールスター戦よりは気合が入っていた。

それにしても、TBSとJ-Sportsでは、同じ試合がこうも違ってしまうのか、と思った。J-Sportsは島村アナ。先日「島村さんはお声以前に、現在の選手の情報についていい加減すぎる事の方が問題に思えました」コメントをいただいた。こうした部分、是々非々で見ていかないと、単なる“島村ファン”になってしまうと自戒した次第。
しかし、この試合に関して言えば、島村アナはTBSの林正浩アナとは数段上の実況をしていた。

島村さんに限らず、J-Sportsのアナウンサーは、目の前で行われている試合を、できるだけそのまま伝えようとしている。プレーの邪魔にならないように、控えめである。アナの口から伝えるのは、目の前に見えていることではなく、バックヤードの情報や、会場の雰囲気などだ。そこには「野球はそのままで面白い」という意識が前提にある。
また台湾野球でプレー経験のある高津臣吾の解説も適切だった。J-Sportsのマイクは台湾応援団の例のうるさい応援もとらえていた。

これに対してキー局は、「野球の試合を流すだけでは、客は飽きてしまう」という前提で、映像にかぶせて大げさで思わせぶりな言葉を弾丸のように発する。それだけでは不安なようで、様々なシーンをインソートする。
この日は2009年WBCのシーンを挿入していたが、大げさなナレーションまみれで、中身がほとんど分からなかった。
解説者はゲストの中畑清も含め3人。明らかに多いうえに、誰も台湾野球について知らない。
林アナはTBSを代表するスポーツアナにして甲子園球児。WBCでも熱狂的な中継をしていた。民放では一番ましなアナだとは思うが、放送は全体としては落ち着かないバラエティのようなものになっていた。一言でいえばきめの細かさが違った。
何度も言及しているが「視聴者は野球なんて見ない」という局の思い上がりが前提にあると思う。





一番問題だと思ったのは、9回2死で放送を打ち切ったこと。あらかじめ中継は9時19分までとなっていたが、この放送は通常のスポーツ中継とは重みが違っていたはずだ。

J-Sportsでは試合終了後、勝利を喜び合うNPB選手の映像が流れ、秋山監督の「侍ジャパン」「台湾への感謝」「復興支援」を語るインタビューがあった。スタンドには12000人の被災者が招待されていたが、その人々に向けて秋山監督は語ったのだ。客席にははるばる来てくれた台湾への謝辞のプレートも数多く掲げられていた。またスタンドには多くの台湾人もかけつけていた。いつもの試合とは違う交流が確かに存在したのだ。

「東日本大震災復興支援ベースボールマッチ」は、そうした交流まで含めたイベントだったはずだ。勝敗は明らかだったとはいえ、あと一人まできて放送を打ち切るTBSは、この試合の意味合いが理解できていなかったと言われても仕方がない。

この後の番組は「世界ふしぎ発見」。日本を代表する原発企業の一つ、日立グループの看板番組だ。震災チャリティイベントを最後まで放送することに、日立や広告代理店が難色を示したとすれば、それも問題だ。

民放キー局は、いったいどこを向いて放送を流しているのか。
自分たちが作っている番組が、どんな意味合いを持っているのか。視聴者に何を伝えなければいけないかをもっと真剣に考えるべきだ。浅薄なマーケティングは、メディアリテラシーが飛躍的に高まっている視聴者に見透かされている。
“華やかな斜陽産業”になりつつある現状をテレビは重く受け止めるべきだと思う。


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