現地9月18日のTEX戦の1回、二塁へ飛んだ打球が内野安打となった。それはイチローのMLBでの2222本目の安打だった。ただそれだけの話だが、日本のマスコミはこれにNPBでの1278安打を加算して、日米通算3500本安打だと騒ぎたてようとしていた。



しかし場内の掲示板はこのことには一切流れず、何のセレモニーも行われなかった。イチローも全く表情を変えず、そのままプレーを続けた。この日はもう1本内野安打を加えた。







日米通算3500本安打を黙殺したのは、ほかならぬイチローの意向だったようだ。彼は「日米、ちょっと面倒くさい」というセリフを吐いて、日本のマスコミに肩すかしを喰らわせた。3000本安打のときにチームメイトからバッシングを受けたことが下敷きにあるようだが、それ以上に「3500」という数字が何の意味もないことを知悉していたからだと思う。

何人かのジャーナリストが書いているように、アメリカでは、日米通算という概念は全く理解されない。そもそもNPBがMLBと同格という意識が全くない。多くのアメリカの記録サイトでは、NPBでの記録はMinorという項目で、AAAやAAと一緒くたに合算されている。

日本人にしてみれば、イチローはじめNPB出身の選手が活躍しているし、WBCではアメリカ代表を圧倒して優勝したのだから、もうマイナーじゃないと言いたいところだが、アメリカ人からすれば、ここ10数年程の間にほんの数人が活躍しただけで、同格とは片腹痛いというところだろう。

そもそも、同じ競技とは言え、歴史も、試合数も、市場も異なるリーグの記録を後付けで合算するのは、無理がある。互いのリーグの歴史に敬意を払うなら、そういうことはしないものだ。

日米合算という発想は、恐らく「名球会」から始まったのだと思う。そこには野茂やイチロー、両松井、高津ら人気選手を引き入れたいという下心があった。「名球会」は、のちに松永浩美を仲間にするためにマスターズリーグの安打数もOKにした。志の低さにあきれる思いがする。

韓国のプロ野球(KBO)は、今年李大浩の9試合連続本塁打を「世界記録」と喧伝した。KBOはすでに2003年、李 承燁の56本を王貞治らの55本を抜く「アジア記録」とアピールしたが、このとき日本は韓国側の報道をほとんど相手にしなかった。NPBとKBOを同列に扱うなど百年早いという思いがあったはずだ。これと同じ思いが、MLB側にもあるはずだ。

イチローは、あと数年でやってくるであろう「4256」騒動を危惧しているのだと思う。あと750本あまり安打を重ねると、日米通算でピート・ローズの4256安打に手が届く。このとき、日本の軽薄メディアが巻き起こすであろうから騒ぎで、アメリカ人、MLBが被る不愉快を考えて、ここで「日米通算」という虚構の根を立ちたかったのではないか。

日米通算の記録を言わなければ、イチローの偉大さは伝わらないわけではない。イチローはNPBでもMLBでも抜群の存在、それでいいのではないか。


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