左打者のシーズン安打記録を出す前に、野球選手の「国籍」について考えておきたい。
NPBのシーズン記録10傑をまとめた。ただし、ここではSTATSではなく、選手の出生国(地)、国籍、ステイタスに注目いただきたい。

best10


出生国(地)は、文字通り自分が生まれた土地。自分で選ぶことはできない。
国籍は当初は出生国と同じだが、多くの国では成人の後、一定の期間その地に居住するなど、手続きを経れば自分で選択することが可能だ。
ステイタスは、NPBが設定している外国人枠。外国籍で、日本の中学、高校、大学に3年以上在籍したことが無く、5年以上日本に居住せず、3年以上社会人野球に在籍しなかった選手。しかし外国人枠の選手でもFA資格を得れば外国人枠から外れる。プロ野球の世界では日本人になるのだ。

NPBの記録だから、日本生まれの日本国籍の選手が多いのは当たり前だが、王貞治、張本勲というNPB史上最高の打者はともに外国籍。王貞治は母は日本人だったので、日本国籍を選択することもできたが、台湾国籍で通している。高校時代、国籍の問題で国体に出られなかったことが尾を引いているかもしれない。

いわゆる外国人の中にも、外国人枠を外れた選手もいる。
この表にはないが、アレックス・ラミレスも日本国内でFAを取得したので外国人枠を外れていた。
朝の更新の表で分かるように、右打者のラミレスはシーズン204安打を打っている。“日本人枠”の選手としては、山田よりも多くの安打を打っている。
もちろん、その当時はFA以前だと言うこともできるが、それくらい「日本人で」というカテゴライズはあやふやだと言うことだ。

投手陣では、さらに「国籍」は微妙になる。

スタルヒンはロシア生まれ、日本で教育を受けたが終生無国籍で通している。
投手の中には韓国、朝鮮人の親から生まれて後に日本国籍を取得した選手もいる。
誰でも知っていると思うが、ここでは書かない。「あいつは〇〇人だ」と暴き立てる汚らしいサイトの真似はしたくないからだ。

さらに言えば、日本国籍で日本人だとされている人の中にも、出自をたどれば韓国、朝鮮、中国の選手もいる。

こうしてみるだけでも「日本人」「外国人」という区別が、どれだけデリカシーが必要なことかがわかる。

日本は植民地時代を持っていた時代に、植民地の人々に対する差別意識が根深く定着してしまった。もともと「被差別部落」に対する差別感情が下地にあったことも大きい。他国の人に比べて人権意識が高かったとはとても言えない。

差別された人々は、就職、結婚、開業などで大きなハンデを背負った。私は鶴橋の近鉄高架下の市場でトッポギを売っているおじさんの中に、京大工学部卒の人がいたのを知っている。
差別を受けた人々は、出自に関わらず実力で未来を切り拓くことができる世界を目指す。
プロ野球はそうした「自由の大地」の一つだったのだ。

今も、「在特会」のような卑劣な人々が、日本では「言論の自由」を盾に活動をしている。日本はいまだに世界から「人権意識が薄いおかしな国」と言われている。「国籍」「人種」の問題は、今、この時も解決されていない。

報知新聞、サンケイスポーツ、日刊スポーツ、スポーツニッポン、デイリースポーツは、そうしたことを踏まえて山田哲人の「日本人最多安打記録」を報じたのだろうか。

スポーツ紙と言えどもジャーナリズムである。あまりにも無邪気に過ぎるのではないか。

※追記:トリビア的に「日本人選手の最多になる」と小さく報じるのはありだとは思う。しかしあたかも大記録のように書き立てる神経の無さに危機感を抱く。


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