私は大久保博元と面識がない。人柄を知らない。しかしマスコミ報道を見る限り、この人は危なっかしいなあと思ってしまう。
現役時代の実績はほとんどない。キャリアSTATS

Dave-Okubo2014


84年西武ドラフト1位、2位は西武監督田辺徳雄。同期には中日1位の中村武志、ヤクルト1位の広沢克己などがいる。
強肩、強打の捕手として伊東勤の牙城を脅かすことを期待されたが果たせず。92年に中尾孝義とのトレードで巨人へ、巨人では出場機会が増えた。
現役時代のハイライトは94年9月の阪神戦、サヨナラ本塁打を打って、本人がバットを持ったまま呆然とし、挙句に泣きだしたシーンだろうか。
現役時代からひょうきんなキャラクターでマスコミをにぎわした。
引退後は解説者、タレントに。このままいけば「パンチ佐藤」と似たようなポジションに落ち着くかと思われたが、2008年、41歳の時に西武、渡辺久信監督に乞われてコーチに就任した。

明るいキャラクター。明快に断を下すタイプ。
また、トレーニング方法を独自に開発したり、新工夫を取り入れたり、研究熱心。自身が故障もあって存分に活躍できなかったこともあり、選手のコンディション維持にも気を配っていた。ノックも巧みだとされる。有能な指導者なのだろう。

しかし、人格面では常に毀誉褒貶が半ばしている。
Wikipediaに記載された不祥事。
2008年11月 知人女性に暴行 隠し子騒動 登板日漏洩 コーチからフロントに異動
2010年 二軍打撃コーチとして復帰するも菊池雄星への暴力事件で解雇
2014年2月 楽天コーチ。ノックを受けた柿澤貴裕が昏倒。脱水症状による意識喪失発作を起させ、厳重注意を受ける。

こうした事実からは、「上には服従、下には隷属を強いる」縦社会で育った人間であること、そして言葉よりも手が出るタイプであることが分かる。

私は昨年、野村弘樹にインタビューをした。選手の指導法について聞くと
「昔のコーチは、ピャーッとやればいいんだよ、と言っていたが、今は、なぜこうしなければならないか、選手が納得するまで説明する」
と言っていた。
選手をより大きく成長させるためには、頭ごなしに叱って従わせるのではなく、理解させ、自分で考えさせることが必要だ、ということだ。

日本ハムファイターズは教育機関と提携をして独自にコーチングシステムを導入しているが、そのシステムは選手の自主性を重んじ、自らモチベーションを高めることができる選手の育成を目指している。
旧弊なプロ野球だが、質的には変貌しつつあるのだ。

そういう意味では、大久保は古いタイプの指導者だと言えよう。
しかし、「若いものを服従させる」タイプの指導者は、年配の上司や経営者には受けがいい。
そうした年寄りは、理屈では分かっていても「今の若いものはなってない、俺たちの時代は違った」という不満を常に抱えている。星野仙一前監督が大久保を後継に指名したのは大久保の「古臭さ」が好きだったからだろう。
楽天の三木谷オーナーは、極端なトップダウンで知られるが、オーナーにとっても好ましい指導者に映っているのだろう。

最近、大久保新監督はマスコミに自身の指導方針を語るようになった。

東スポ

大久保監督は「自衛隊は本当に合理的に組織を動かしている。いざという時は陸・海・空で同時に動くわけだし、組織が効率的に動かなければならない。ムダのない組織について学ぼうと思った」と話した。
指揮官が特に関心を持ったのは、命令系統に関する自衛隊流の考え方だったという。球団関係者は「自衛隊ではたとえ指揮官が間違った指令を出しそれに従って部隊が全滅したとしても、命令に従わず助かった場合よりもいいと説明されたそうです」と明かした。


大久保新監督は、松井裕樹に自衛隊の体験入隊を奨めたと言う。

さらにPDCAサイクルについても学んだと言う。そんなことも知らなかったのか、という気もするが。

要するに新しくもない「軍隊方式」を自らの指導法の理論的な支柱にしようと言うのだろう。
技術面や作戦面で優れていたとしても、人心掌握ができるかどうか心もとない。

こういうタイプの指導者は、うまくいっているときは並みはずれた成果を残すが、逆風が吹くと途端に内紛や事件を起しがちだ。危うい指導者だと言えよう。

年齢やタイプは異なるが、今年前半だけ西武の指揮を執った伊原春樹に似た指導をするのではないか。

恐らくは、滑り出しが勝負である。そこでうまくいけば、大久保楽天は予想外の成果を上げるだろう。ダメなら、彼の退任は相当早いのではないか。


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