何て愚かしいのだろうと思うが、スポーツ界の「体質」としてはNPBやアマ野球に通じるものがあると思う。
もともと日本のバスケットボールは、1930年に発足した日本バスケットボール協会(JBA)が統括していた。
1967年にはバスケットボール日本リーグ(JBL)が発足。76年には法人化。
この間オリンピックには男子は6回出場、しかし76年を最後に出場していない。
ただ、アジア競技大会では銅メダルの常連となっていた。

昭和のバスケットボールは、学校、実業団が中心であり、国際大会よりも国内リーグを重視していた。
いわゆる企業アマが最終のステイタスであり、選手は引退後、学校、企業の指導者になるのが通例だった。
内向きに閉ざされた「業界」を形成していたといってよいだろう。

しかし90年代に入ってアメリカンスポーツの情報が怒涛のように入ってくるとともに、バスケットボール界もプロ化の波が押し寄せる。
その背景には、長引く不景気と企業の体質の変化によって、実業団チームの存立が難しくなったことがある。
JBLのチームの中にもクラブ化するものが増えた。
JBAは、1995年にはプロ化を視野に入れた機構改革を進め、リーグを統括するバスケットボール日本リーグ機構を設立。97年にはプロ選手が誕生、2000年には初のプロチーム新潟アルビレックスが生まれた。
翌年には日本リーグはJBLスーパーリーグと改称された。

しかしこうした動きは既存の企業チームの理解を得て、既得権益を侵さない範囲で一歩一歩進められたものであり、プロ化を推進したいと考えるサイドからは改革のスピード、内容ともに不満の残るものだった。

2005年新潟アルビレックスを中心とした4チームが日本プロバスケットボールリーグ(bjリーグ)を設立し分離独立した。
日本にはトップリーグが2つある状態となった。

両リーグはともにプロ選手を容認しているが、体質は大きく異なっている。

JBLスーパーリーグは、アマリーグだ。企業色が強く、選手の中にはプロ契約の選手もアマチュアの選手も混在している。運営母体は一般社団。
bjリーグは、Jリーグに似た地域密着型であり、純然たるプロリーグ。独立採算での球団運営をしている。運営母体は株式会社。

野球界でいえば、JBLはNPBによく似ている。球団としての採算性は低いがバックには大企業がついている。
bjリーグは、独立リーグとほぼ同じ考え方。企業色は薄く地域に密着している。リーダー格の新潟アルビレックスは、NSGという企業グループに属しているが、野球やサッカーのプロチームも横並びにある。

野球界ではNPBと独立リーグには規模、実力ともに大差があるため、争いの種にはならなかったが、バスケットボール界は実力が拮抗している。このためもあって市場や選手の獲得を巡って深刻な対立が起こった。

両リーグは当初は全くの絶縁状態にあったが、2011年から統合へ向けた話し合いが始まった。
ややこしいことに、両リーグの統合が進まない内に、見切り発車的に第3のプロリーグとして今年からナショナル・バスケットボール・リーグ(NBL)が発足した。
NBLにはJBLからチームが移行したが、bjリーグからは参加したチームは千葉ジェッツだけ。
実質的にJBLが看板を掛け変えただけになった。

両リーグの球団。

Bascket


両リーグは、今、外圧によって統合を強く求められている。
国際バスケットボール連盟(FIBA)が、「JBAのガバナンスの強化と事業性の向上」「男子代表の強化」、そして「トップリーグの統一」を強く要求したのだ。それができないとオリンピックへの参加を認めないと。

両リーグはなおも統合へ向けて何度も話し合いを続けたが、平行線に終わり、FIBAの求める期日までに結論が出せなかった。

最も大きな問題は、NBL側の一部がチーム名に「企業名」を残したいと言っていることだと報じられている。

両リーグの球団を見るとNBLには日立、トヨタ、東芝、アイシン、三菱電機と企業名が残った球団が5つある。しかし8球団には企業名がない。主張しているのは両リーグ37球団のうち5つだけだ。

管見の限りでは、新リーグの球団が企業名を名乗ってはいけないという制約はないようだ。
実際は、統合によってそれまでリーグ運営に強い影響力を及ぼしてきた企業側の発言力が弱まることを危惧しているのではないか。
日本のアマチュアスポーツは、リーグ、競技者団体の運営を通じてOBたちが強固な利権を形成していることが多い。
これが「統合」と本格的な「プロ化」によって失われることを危惧しているのではないか。
確かにこれまでバスケットの既得権益で飯を食ってきた人には、死活問題だ。

そもそもbjリーグは、既存のリーグに不満を持つ人が設立したのだから、統合したとしても融和への道は遠いだろう。既得権益を保持する方向の議論は通りにくいだろう。

しかし「オリンピック」への道が断たれかねないという「死活」の局面に来て、一部の人間の我執が振り払えないのは情けないとしか言いようがない。

強力なリーダーシップを持ったリーダーがいないことが混迷を招いているのだろう。

いわゆる企業スポーツが成り立たなくなる中で、スポーツの世界は「国際化」「プロ化」「事業化」「独立採算」「地域密着」が必然となっている。その流れは不可逆的だ。

NPBは、バスケットボール業界のように差し迫った状況にはないが、大きなトレンドとしては同じである。
これまでこの大きなパラダイムシフトに成功したのは、サッカー界だけだと思うが、野球界の改革も避けて通れないことを改めて確認したい。


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