黒田博樹の去就が注目されている。
先日はヤンキース傘下のケーブル放送局であるYESが、黒田博樹は残留すべきだ、と述べた、
「黒田と4度目の1年契約を結ぶことはヤンキースのできる最も無理のない行動かもしれない」とやや控えめな言葉ながら、彼の残留を地元も望んでいることを明らかにした。

この背景に、ヤンキースが交渉をしていたブランドン・マカーシーがドジャースと、FAのジョン・レスターがカブスと契約したことがあったのだろう。
まだマックス・シャーザーやジェームズ・シールズは市場に残っているが、スターターの出モノは確実に少なくなっている。

多くのベテラン選手が来季の契約がおぼつかない状況にある中で、来季41歳になる黒田博樹には、各球団が熱視線を送っている。
それだけ「計算できる先発投手」は数が少ないということだろう。

しかし黒田は態度を明らかにしていない、
黒田博樹の選択肢は、3つ。

1. もう1年MLBでプレーする
2. NPBに復帰し、古巣の広島カープでプレーする
3. このまま引退する

普通、野球選手は少しでも高いレベルで(高い年俸がもらえるリーグで)、少しでも長くプレーしようとする。その点で考えれば1.しかないはずだが、黒田は1から3までの選択肢を考えているのだろう。
彼がそう思うのは、「無様な所は見せたくない」ということと「古巣広島にいつかは帰りたい」という思いがあるからだろう。
黒田はMLBでベテラン選手たちが、プレーできる場所を求めて右往左往するのを見てきた。そうなりたくないと思っているのだろう。

野球選手と言う仕事は、「いくら入っているかわからない財布(能力)を持って、ショッピングをする」ようなものだ。
若いうちは財布は膨らんでいるから、散財をしても平気だ。ぜいたく三昧をすることができる。しかしベテランになると、こうした買い物がいつまで続くのか、と思い始める。
今日、これだけ買い物ができたからと言って、明日、同じことができるとは限らない。今使った1万円が、最後のお札なのかもしれない。

黒田は、まだ昨年と同じ「買い物」ができるのならMLBでやりたい。でも、そうでないなら残りの金は広島で使いたい、と思っているのではないか。

私は広島カープへの復帰はあまり良いとは思えない。
広島時代とは大きく投球スタイルが変わってしまった黒田である。かつてはきれいな4シームとスライダーを主体にしてきたが、今はシンカー(2シーム)、スプリッター、スライダーと多彩な攻め方に変わっている。
その投球スタイルが、黒田の在籍した時代とは使用球も変わり、選手もあらかた入れ替わった今のNPBで通用するかどうかは全く分からない。
凱旋のはずが、ファンを大いに落胆させる可能性もあろう。
過去、MLBからNPBに復帰して昔のように活躍することができた選手は数えるほどしかないのだ。

ヤンキースは、MLBでは特別なチームである。MLB一格式が高いチームであり、多くの選手にとって「上がり」だ。
このチームでは余力があるベテランが「今季限りで引退する」と宣言して最後のシーズンをプレーするケースが続いている。
昨年のマリアノ・リベラ、アンディ・ペティット、今年のデレク・ジーターがそれだ。
MLB全体が“市場化”するなかで、それは稀有な「名誉ある引退」だと言えよう。

黒田もそれに倣って「今季限りでMLBを引退する」と宣言して、ヤンキースと1年契約をしてはどうだろうか。年俸は今季と同じ1600万ドル。円安でその価値は高まっている。
そうすれば黒田は「あと1年」と限って頑張ることができる。体が何ともなければ、彼の投球はまだ通用するかの性が高い。
そして、「2016年は広島」という選択の余地を残すことで、彼自身も心の準備をすることができるだろう。
もし2015年の出来が不本意なものであれば、そのまま引退する選択肢もある。

とにかく、来季、黒田の登板がMLBで見られないのは、あまりにももったいない。もう1年、MLBで活躍する姿を見てみたい。


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