野球界にとっても歴史的な動きだ。54年ぶりに両国は国交を正常化し、アメリカは数か月以内に大使館をハバナに設置する。
私が生まれた日の新聞には、アイゼンハワー大統領(日本の新聞はアイクと書いていた)とソ連のフルシチョフ議長が、その年に革命政権が成立したキューバを巡って厳しいやり取りをしたことが記されている。
その時期以降、キューバはアメリカの膝元にある「敵国」となり、国交断絶状態が続いていた。
革命前のキューバは葉巻の名産地として知られ、アメリカの経済圏の中にあった。1932年にできたジョージ・ガーシュインの名曲「キューバ序曲」は、キューバへの観光誘致を目的に作られたという。

今回の政策転換は、2期目の任期が2年を切ったオバマ大統領が自らの功績作りを意図したため、との見方がある。
一方キューバでは、革命を主導したフィデル・カストロ前国家評議会議長が引退。弟のラウル・カストロ現議長になってからは、部分的に市場化を進めるなど、ゆるやかに共産主義体制は崩壊しつつあった。
端的に言えば「キューバはアメリカの脅威ではなくなった」ということだろう。

MLBでは186人のキューバ出身のMLB選手が輩出している。
安打数と勝利数50傑。

Cuba-H


Cuba-P


1961年以降は両国の国交が無くなったために、多くの選手は亡命してMLBに入った。中には革命前にアメリカに来て入団した選手もいたが、近年のルートはほぼ亡命だけ。

日米野球にも来たヤシエル・プイグは、1度亡命に失敗し、国内リーグに出場できなくなるなど干された上でメキシコを経由して再度亡命。
キューバからの亡命は第三国を経由するが、間にややこしいブローカーが介在することも多かった。MLBに入団後もさまざまなトラブルがあったという。

国交正常化によって、キューバの選手はアメリカにも普通に移籍することが可能になろう。
キューバの「国技」である野球の国内リーグは、このところ弱体化が進んでいるとされたが、アメリカとの交流が再開されることで、MLBがテコ入れする可能性もあろう。
あるいはメキシコのように国内リーグがMLB傘下に入ることも考えられる。
選手はMLBとキューバ国内リーグを自由に移動することが可能になるだろう。それにともなってキューバ国内リーグのステイタスが低下するのは間違いないだろう。

最近、NPBにはキューバ国内リーグから亡命せずに移籍する選手が増えていたが、これは「雪解け」の前兆だったのではないか。
水面下でのアメリカとキューバの国交正常化へ向けた交渉は2年近く続いてきたという。

来季へ向けて日米球界には「キューバフィーバー」が起こるかもしれない。今後も注目していきたい。



私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!




クラシックSTATS鑑賞もご覧ください。
船田和英、全本塁打一覧|本塁打大全




広尾晃、3冊目の本が出ました。