昨年も100冊以上野球の本を買った。送っていただいた本も多い。書評を書きたいと思っていたができなかった。これから数日、まとめてアップたい。
2014年に読んだ野球本で一番はこの本だ。

アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた  小国綾子



筆者は元毎日新聞記者、青少年問題や女性問題などを担当。2007年から4年間、ワシントンDCに赴任した元同僚の夫にともなって、9歳の長男=太郎と3人でメリーランド州モンゴメリー郡ロックビル市に暮らした。

太郎は地元の学校や友人になじめなかった。半年後、両親は、日本で少年野球をやっていた太郎を地元の少年野球チーム「ナショナルズ」に入団させた。

しかしアメリカの少年野球は、日本のそれとは天と地ほども違っていた。

日本であれば、指導者の言うことを良く聞き、チームワークを大切にすることを学ぶが、アメリカではアグレッシブに自己主張をするように教えられる。

日本の少年野球は何十人もの選手の中からレギュラーが選抜され、残りは球拾い、ベンチで声だしとなるが、アメリカでは1チームは十数人。全員が試合に出られるようにする。
それでもレギュラーを外れると、親たちはすぐにチームを抜けさせ、もっとレベルが下のレギュラーになれるチームに移籍させる。
「成功体験」をさせて「自信」を付けさせることが何よりも大事だと考えるからだ。
チームも他の選手の親もそういう選択に理解を示す。

チームはシーズンが終わるとトライアウトで新たに選手を募集する。それに伴ってレギュラーを外れ退団する子供もいる。スカウト的な人物もいて、優秀な子どもを勧誘することもある。
チームメイトの子供が今度はライバルチームに移って対戦することも珍しくない。

試合はトーナメントが中心(リーグ戦の地域もあるようだ)。しかし毎週のようにトーナメントが行われるので、日本のような一戦必勝主義にはならない。

コーチはマイナーリーガー出身者もいる。彼らはお金を出せばプライベートで子供を指導することもある。
ただコーチも異動が激しい。

太郎もチームを移り、さまざまな環境で野球を経験しながら成長していく。

私はこの本を読んで、日米の「野球観」の違いはちょっとやそっとでは埋まらないことを痛感した。

日本の少年野球は大きな「家」のようなものだ。子どもたちは絶対的な指導者に従って、野球を学んでいく。
そこで教わるのは「規律」であり、「忠誠」であり、「全体、仲間に奉仕する心」だ。
そしてレギュラーになれなくてもチームのために尽くすことが「人間修行」になるとされる。

今は個性を伸ばす指導者が数多く出てきているが、それでも全体としては軍隊的な「規律」を重んじる。「自主性」よりも「素直さ」「従順さ」を重んじる。

試合よりも練習が大事であり、反復練習こそが技術を磨く鍵である。

試合においては「一戦必勝」主義であり、勝利に徹底的にこだわる。

親が転勤でもしない限り、子どもたちはずっと同じ少年野球チームでプレーする。そして有望な選手は監督や指導者のコネクションで高校野球へと進む。
少年野球時代に培った人脈は、一生続いていく。

NPBからMLBに進んで成功する選手は日本野球の超エリートではあるが、同時に全体主義的な日本野球の「限界」を突き抜けた存在だとも言えよう。野茂英雄、イチロー、ダルビッシュなどその多くが、NPBでは異質な存在だったことがそれを物語る。

彼らは個人主義的で自己主張の強いアメリカ野球界でも堂々と自らをアピールできる「実力」を持っている上に、自ら学び、進化することができる「勁さ」ももっている。

反対に言えば、NPB出身の選手がMLBで成功するためには、箱庭の様な日本野球を超克しなければならないのだろう。

昨年、私は四国アイランドリーグPlusの坂口裕昭 代表にインタビューした。参照
東大法学部出の弁護士というステイタスを捨てて独立リーグの経営者になった坂口氏も、少年時代にアメリカでこの本とそっくりの体験をしている。
そしてアメリカのスポーツのステイタス、意識の高さを実感したことが、独立リーグ経営者になる原点となった。

アメリカと日本の野球システムや文化の差異を的確に語ることができるのは、男性、子どもと行動を共にした女性ではないだろうか。この本を読んだときもそう思った。この本も素晴らしい。



男性は技術や才能の差異に目を奪われて、その根底にあるものまで思いが至らない。「野球」にとらわれて「野球文化」まで目が届かない。

太郎は日本に帰国して元の少年野球チームに戻り、また「日本野球」に染まっていった。しかし、彼のハートにもアメリカンスポーツの自由さ、楽しさはしっかり刻み込まれていることだろう。

文章も生き生きとしている。わくわくしながら読み進むことができる。傑作だ。


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