2008年シーズンを最後に、松坂大輔はフルシーズンの活躍をしていない。DLを出たり入ったりした挙句、復帰まで一年半と言われるトミー・ジョン手術を受けてしまった。
うまく行っても来年の今頃まで、松坂をマウンドで見ることはない。








MLBで活躍する日本人先発投手は、黒田博樹だけになってしまった。一昨日の黒田の登板は、トレード拒否を宣言した直後だけあって、ただならぬ迫力があった。しかし、いつも思うのだが、黒田の登板には花がない。与えられた仕事を黙々とこなす実直さはあるが、次の展開を息を呑んで見るような、昂ぶりがない。それが黒田のキャラだから仕方ないが、松坂とは持って生まれたものが違うと思ってしまう。こういう仕事人の雰囲気、MLBの大エース、ロイ・ハラデーにも感じるのだが、いかが?

松坂は、試合の流れとは別に、常に打者との勝負を楽しんでいたように思う。調子の良いときは、打てそうなコースギリギリにズバリと決めて、打者に「まいった!」という表情をさせることもあった。いわゆるフライボーラーだが、飛球が上がると球の行方を見ることもなく、グラブをパンと叩いてマウンドを降りる。実に絵になった。

高校時代から、常に日本中をわかせてきた稀有のスターだけに、単に投げるだけではなく、野球を楽しむような感性があった。そういうところも、同年の選手が「松坂世代」とまとめられることを誇らしげに語る所以だろう。
こういう才気あふれる投手は、今のNPBではダルビッシュ有くらいしかいない。かつての堀内恒夫や、江夏豊、江川卓などと同様、野球をアートにできる才能とでもいうべきかと思う。MLBでは、フェリックス・ヘルナンデスやCCサバシアにそれを感じる。

ボストン・レッドソックス=BOSに移ってから、球数を使ってでも勝負を楽しむ松坂の投球は、チーム方針とあい入れない部分も多かった。彼は100球を超えてから真価を発揮するタイプだったが、それはアメリカでは許されなかった。監督やコーチと何度も対立した。また、体調管理も万全ではなかったようで、故障も多かった。しかしながら、元気なときの松坂は、アメリカでも魅力的だった。MLB移籍以来、最高のシーズンは2008年だったが、8月にシカゴ・ホワイトソックス=CWSを8回零封するなどこの年は胸のすくような投球をしばしば見せた。

今年も4月18日トロントブルージェイズ=TOR戦と23日ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム=LAA戦の松坂の速球はぐんと伸びていたし、スライダーは素晴らしい切れ味だった。むしろ2008年よりも良い出来に見えた。そういうときの松坂はマウンドで躍っているようで、リズム感もあって実に楽しそうだった。MLBの打者も、彼の投手としての稀有な才能を認めていたのではないか。

4月末にあんな素晴らしい活躍をしていた投手が、2カ月後にはトミー・ジョン手術をするはめになるとは。

来年後半、MLBのマウンドに復帰する松坂は9月に32歳になる。もはやベテランの範疇だ。しかし、彼の肩が戻っていれば、そして気力が充実していれば、再び楽しいマウンドを見せてくれるはずだ。ひょっとすると、ダルビッシュとのMLBでの投げ合いもあるかもしれない。そんな楽しみを懐に温めて、彼の復帰を待ちたい。

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