キューバ選手についての連想で思い至ったのだが、NPBの外国人枠はそろそろ撤廃しても良いのではないか。
元々NPBには外国人枠などはなかった。草創期からNPBにはバッキー・ハリスやジム・ボンナなどの外国人選手がいた。
また日本の教育システムで育っていたがビクトル・スタルヒンも日本国籍ではなかった。
さらに、主としてハワイ育ちの日系選手もたくさん日本でプレーしていた。

この状況に歯止めをかける必要性が生じたのは2リーグ分立後のことだ。
当時はまだNPBとMLBの実力差は大きかった。マイナーリーガーでもNPBとは大人と子供くらいの差があった。そういう選手の無制限な流入は、日本野球の成長を阻害する恐れがあった。
外国人選手を無制限に入れて戦力強化を図ることに歯止めをかけるとともに、日本人選手の「職場」を確保するために外国人枠は設けられた。

1953年に毎日に入ったレオ・カイリーは、レッドソックスでほんの少しだけ投げた程度の選手だったが、わずか40日ほどの間に6戦6勝ERA1.80、打っても19打数10安打を記録した。
カイリー以降、いわゆるパートタイマーでの外国人選手獲得も禁止された。高橋ユニオンズのジム・ドゥールのような「違反契約」は以後も散見されたが、日米の差はそれほど大きかったのだ。

1952年から93年までは支配下登録選手は3人、出場選手登録は2人。
94年からは支配下、出場ともに3人。
96年からは支配下は制限なし、出場は3人。
98年からは支配下は制限なし、出場は投手2人、野手2人の4人。
2002年からは支配下は制限なし、ベンチ入りが投手3人、野手3人、出場は投手野手合わせて4人となった。
外国人枠は段階を追って広くなってきている。

日本が国内の産業育成のために保護貿易主義を取っていたのを、次第に関税を下げて門戸を開放していったのとよく似ている。

外国人がこの枠以外でNPBでプレーするためには高いハードルをクリアしなければならなかった。
昨年急逝した大豊泰昭は20歳で来日したが、日本人としてプレーするために大学、球団職員として5年もの歳月を費やした。
外国人枠があったために活躍することができずに日本を去った選手もいた。

昨今のNPBの状況を見ていると、外国人枠を撤廃しても「日本の市場が荒らされる」懸念は大きく減ったように思える。

まず日米の実力差が縮まったこと。
昔のようにMLBで半端な成績を上げた程度の選手が、そのままNPBで通用することは無くなっている。
NPBの野球に適性のある選手でなければ、MLBで多少の実績があっても通用しない。

そしてNPB側が過大な期待をしなくなったこと。
以前ならば「大リーグで何十本」という選手はタイトルを取ることが期待されたが、今はそこまで期待される選手はほとんどいなくなった。
.270、20本塁打程度の成績でも、首がつながる選手が多くなった。そして年俸も日本人並みになった。
日本人選手と同じくらいのレベルの選手でも、NPBの野球に順応してくれるのならそれでいいと球団側が考え始めたのだ。
ホセ・フェルナンデス、ターメル・スレッジ、ホセ・オーティズなどのように大した成績を上げていなくても、長く日本でプレーする選手が増えてきたのだ。

さらに言えば、MLBで活躍できる選手は日本には来ないことがわかったこと。
マット・マートンはおそらくMLBでもスター選手になれた可能性があると思うが、そういう「出世前」の選手がNPBに来ることはほとんどない。MLBではパワー不足だったり、スピード感が無かったり、力が衰えたり、何らかの理由で通用しなかった選手がNPBにやってくる。
本当の大物が来ることはまずない。そういう選手を獲得しようと思えば、法外な金を用意しなければならない(もちろん、それを見たい気持ちは強いが)。

例え門戸を開放しても、NPBで通用する「お手頃」な選手は限られているから、外国人選手が急増することはないと思われる。
門戸を開放すれば、今は二軍や育成枠でくすぶっているノンブランドの外国人選手をテストすることができる。
キューバなどから若い素材を引っ張ってきて試すこともできる。
外国人枠があるために「試合に出られない」理不尽をなくすことができる。
それはおそらく競争環境の激化につながって、日本人選手にも良い影響を与えるのではないか。

同時に日本人のアメリカやキューバなどへの「武者修行」も積極的に行うべきだ。
今年から四国アイランドリーグPlusは、アメリカ独立リーグとの交流戦を行うが、異文化圏の野球と交流することは、凝り固まった「日本野球」に新風を与えることになると思う。

TPP交渉は最終段階を迎えているようだが、日本野球も「門戸開放」を考えるべき時が来ているのではないか。

以下、参照されたし。

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