日本のファンの多くは「何とか手術は回避できないか」と思っていることだろう。私も心情的にはそうだが、理性的に考えれば手術以外に道はないだろう。
「右ひじに異状がある」のは動かない事実だろう。
そしてその異状は、MLBの常識で考えれば「トミー・ジョン手術が相当」ということになるのだろう。レンジャーズのチームドクター、キース・マイスターはそう判断した。

ダルビッシュ有はメッツのチームドクター、デビッド・アルチェックのセカンド・オピニオンを仰ぐため、ニューヨークに向かったという。

ダルビッシュにしてみれば一年を棒に振るのはあまりにもつらい、田中将大のようにPRP療法で済むのならそうしたいと思っている。
日本のファンもそう思っている人が多いだろう。
しかし、恐らくアメリカのファンや関係者は
「さっさと手術すればいいんだよ」と思っている人が多いだろう。

日米の意識の差は顕著だ。

アメリカではトミー・ジョン手術への抵抗感は日本よりはるかに低いと思われる。マイナー選手も入れれば毎年数十人が手術を受けている。
一つにはこの手術が、おびただしい術例があり、安全性が確立されていることが大きい。
また、リハビリも一定のメソッドが確立されており、日常生活レベルではなく、野球選手として復活する可能性が高くなっていることも大きいだろう。

さらに言えば、MLBの感覚では、「手術を受ける」ことは、ビジネス上必須だ。

ダルビッシュのような主力級の選手は、複数年大型契約を結んでいる。それは球団の資産であり、生産手段でもある。
それはメーカーでいえば、最先端の高額な機械を購入したようなものだ。巨費を投じたのだから、その機械は多くの収益を生み出してくれなければならない。
機械が故障したとなれば、当然、メカニックを呼んで徹底的に修理をする必要がある。
たとえその期間、操業できなくなるとしても、機械の減価償却期間を考えれば、一刻も早く修理して使えるようにしなければならない。

日本の感覚は、言ってみれば、「壊れたといってもまだ動いているんだから、応急処置で使わないと元が取れなくなる」というところだろう。異音はしているがだましだまし使えば何とかなるのではないか。
大工場と町工場の感覚の差、と言っても良いかもしれない。
例によって、「野球選手を機械に例えるとは何事か」とお叱りを受けるかもしれないが、ビジネスに例えた方が、問題がわかりやすい。論点が明確になる。

ヤンキースが田中の手術を回避したのは、異状の程度が軽くて、手術を受けるかどうかボーダーな状態だったからだろう。
そしてヤンキースがチーム崩壊の危機にあり、長期間、田中を戦線離脱させるゆとりがなかったからだろう。

テキサス・レンジャーズは昨年最下位に沈んでいる。すでに再建モードであり、今年、どうしても浮上しなければならないわけではない。監督は1年目、好成績を絶対に挙げなければならないわけでもない。
仮にダルビッシュの症状が田中将大と同じ程度だったとしても、「手術をする方が確実に完治が期待できる」のであれば、手術に踏み切るのではないか。

日本では「ひじに異状がある」としても、手術をする例はまだまだ少ない。
一つには現役選手が「ひじにメスを入れる」ことへの抵抗感がある。それは感傷の類だと思うが。
そして、日本ではトミー・ジョン手術からの復活例がMLBほど多くないこともあるだろう。
五十嵐亮太など、その例はわずかしかない。
日本のプロ野球選手のトミー・ジョン手術は50例ほどあるが、多くは成績が下降気味になってからの手術だ。
例えトミー・ジョン手術に成功したとしても、その選手自体が「下り坂」だとすれば、筋肉や反射神経の衰えによって成績が上がらないケースもある。期待値ほどには復活できないことも多い。

また手術後のリハビリの問題もあろう。
復活を信じて医師やリハビリ担当者の言うことを忠実に守り、焦らず、着実にリハビリテーションを行う選手は成功する可能性が高い。
焦って1日も早くマウンドに上がろうとしたり、無理なフォームで投げる選手は再び故障することが多い。
日本でのトミー・ジョン手術の成功例の少なさは、そうした選手の意識が影響しているのではないか。

ダルビッシュはまだ20代だ。これからMLBで実績を積み上げていく投手だ。まだ上昇中の選手だといってよいだろう。
しかも、彼の自己管理能力には定評がある。医師や専門家の意見を良く聞いて、しっかりリハビリすることができるだろう。

だましだまし使うことで、悪化、深刻化を先延ばしすることはできるかもしれないが、ひじの故障自体は、このまま放置しても「自然治癒」することはない。

セカンド・オピニオン次第ではあるが、ダルビッシュ有はその必要があるのなら、ためらうことなくトミー・ジョン手術を受けるべきではないだろうか。

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