野球の“あるある”シリーズが好きで、本屋で見つけると買っている。

改めて紹介しなくても良いかもしれないが、“あるある”とは、一つのものごとで多くの人が経験、実感しているような、些末な出来事を取り上げて、笑いを取るものだ。
もとは芸人の手法の一つだったが、今は本やネットの世界でも広がっている。

笑いの種類としては「共感の笑い」。同時代の同好の人たちが「あるある」と言いながら膝を打つような笑いだ。

野球の「あるある」本もたくさん出ているが、プロ野球はカネシゲタカシさん、高校野球は菊池選手さんの本が、内容的には一番だろう。

「あるある」本は、売れているようで、他の筆者による本もたくさん出ているが、単なるトリビアだったり、共感できないネタだったりすることも多い。
「あるある」は、センスがなければ作ることができない。笑えないだけでなく、作り手の頭の悪さが露呈して、本を放り投げたくなる。
本屋にたくさん並んでいる「あるある」本に迷ったら、カネシゲタカシ、菊池選手の名前を手掛かりにすると良いと思う。

菊地さんの「野球部あるある」は、レギュラーになりたい、女子にもてたい、先輩に怒られたくない、など、球児たちの日常で生じる「感情の揺れ」をうまくすくいあげている。
甘酸っぱいような感情が湧いてくる。
日本の高校野球が、どういうものかがリアルに分かるという点でも、貴重だ。



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さてカネシゲさんの「あるある」は、一般のファンからtwitterで「あるある」を募集し、そこからネタをピックアップしている。サブタイトルにあるように「野球大喜利」だ。

だとすれば、面白いのはカネシゲさんではなく投稿者ではないか、と思われるかもしれないが、そうではない。
「あるある」シリーズも版を重ねているが、レベルがどんどん高くなっているのは、選者であるカネシゲさんが「どんなネタをピックアップするか」を示すことで、投稿者が先鋭化しているのだ。
昭和の昔「糸井重里の萬流コピー教室」というのがあったが、これと同様、選者のセンスが投稿者を育てているのだ。

カネシゲさんは漫画家でもある。一つ一つのネタに絶妙の漫画を添えることで、笑いの飛距離が飛躍的に伸びる。「芸」になっているな、と思う。

最新刊の「みんなの あるあるプロ野球 グランドスラム」を読んでいて、気がついたのは、一つ一つのネタが、そのチーム、選手の秀逸なキャッチコピーになっているということだ。

地味な補強をすると、それはそれで文句を言われる 巨人
若返りにもほどがある 日本ハム
二刀流・大谷翔平が凄すぎて食事が止まる

コピーライターにとっても必携の一冊かも知れない。

あまりなじみのない地方のチームのネタでも笑えるのは「あるある」が熟成されて、その価値観が広く共有されているからかもしれない。

この本で笑えるか、笑えないかで、野球ファンの“センス”がわかる。毎年すべてネタは入れ替わっている。今年もご購読を。


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