昨日は藤川球児の初登板を見るために、再び高知に行った。試合の模様はベースボール・チャンネルを見ていただきたい。
プレスパスをもらって一塁側のベンチに座った。目の前にブルペンがある。
藤川球児はここで投球練習をするはずだ。ブルペンのネットの裏には多数の報道陣が陣取っている。
私の斜め前には、鼻の高い少し藤川に面影の似た男性が少年野球のチームを率いて座っている。同い年の藤川の従弟。地元では有名だ。すでにビールが入って、「今日は3回や、言うとった」などと話している。

相手チームのシートノックが終わり、高知のシートノックも終わった。しかしなかなか藤川は現れない。
私は待っているうちに、どんどん胸が高まり、興奮が抑えられないような気分になった。周囲もいよいよ盛り上がっている。

阪神時代の藤川は、甲子園でも、京セラドーム大阪でも、他の球場でも何度も見ている。梅田でスーツ姿の藤川球児を見かけたこともある。しかし、そのときはこんなにときめかなかった。

高知のファンとともに、その登場を待ちわびている藤川は、そのころとは比較にならないほど偉大で、大きな存在のように感じられたのだ。

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なぜなのか?
まず、ここが大阪でも東京でもなく、高知だということ。そして藤川が投げようとしている試合は、MLBでもNPBでもなく、独立リーグの、しかも練習試合だということ。

NPB、MLBと華やかな舞台で投げてきた藤川が投げるには、あまりにも小さなステージだった。つまりこれまでの藤川が活躍してきた舞台と、今から上がる舞台に、大きな落差があるために、プレミア感が増したのだ。

言い方を変えれば、藤川球児はMLBという最高の舞台から「降りてきた」のだ。これが人々の心を動かし、熱狂的な声援に結びついたのだ。

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今季、同様の選択をした選手がいる。言わずと知れた黒田博樹だ。
黒田はMLBでメジャー契約が可能なほどの高みにいながら、古巣の広島に「降りてきた」。これが感動を呼んだ。
藤川はNPBではなく、さらにランクが下とみなされる「独立リーグ」まで「降りてきた」その落差の大きさが、関西、東京から大報道陣が詰めかけるほど世間を揺るがしたのだ。

対照的な選択をした選手がいる。松坂大輔だ。彼もMLBで活躍した投手だが、ここ数年、芳しくない成績でマイナー契約の選手になっていた。
しかしソフトバンクは彼とばりばりの主力選手の年俸で契約した。
ソフトバンクは、言わば松坂に「下駄をはかせた」のだ。
それにこたえる活躍ができていれば、何も問題はなかったのだが、松坂は未だに公式戦で1球も投げることができない。大きく期待を裏切っている。今季絶望の声もある。
「はかせてもらった下駄が高すぎて、ひっくり返った」状態にある。

実のところ、昨年の松坂と藤川の成績は似たり寄ったりだ。藤川も大手を振ってメジャー契約ができるレベルではなかった。
藤川が阪神と大型契約を結んでいれば、やはり「下駄をはかせてもらった」感がまとわりついたことと思われる。
しかし藤川はそうせず、さらに「降りる」ことで、昨年、今年のMLBでの不振を忘れさせるほどの期待感を持たせる選手になったのだ。

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私は浅薄な処世術の話をしているわけではない。
勝負師は、自分の実力を知って、それにふさわしい選択をすべきだと言っているのだ。
好条件だからと言って、ダボハゼのように飛びつくのは愚かしい選択なのだ。

昨日の藤川の投球は「NPBで即、通用する」とは断言できない内容だった。試合後の記者会見では、藤川自身も球速の衰えをちらっと認めていた。
しかし、藤川は「降りてきた」ことで時間ができた。プレッシャーも少ない。じっくりと自分を試すことができる。
高下駄を穿いたまま走ることを強いられる松坂とは大きな違いだ。

付け加えるなら、藤川が「降りてきた」ことで、高知ファイティングドッグス、四国アイランドリーグplusは「少し上がった」。
藤川の様な大選手が選択肢にするくらいのリーグとして、全国的な注目を集めたのだ。信用がアップしたと言っても良い。郷土を愛する藤川球児は、本当に良いことをした。

今朝の高知新聞は一面トップで藤川の登板を報じている。

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今、MLBとNPBの関係は「逆流時代」に入ろうとしている。今後、NPBに復帰する選手が増えてくるはずだ。
このときに「下駄をはくか」「降りてくるか」は大きな違いがある。聡明な選手はこのことを考えておくべきだろう。

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