SportivaのWeb版で宮本慎也とアレックス・ラミレスが対談をしている。二人は異口同音に「パ・リーグの方がレベルが高い」と言っている。ともにセ・リーグ育ちだけに、二人の話には惹きつけられる。

宮本慎也×ラミレス「セ・パの格差が生まれた理由」を語る




総合すると、パ・リーグはセ・リーグより球場が大きい。だから投手は思い切り腕を振って投げるし、打者も振りぬこうとする。球速や飛距離で、パがセよりも上なのはこれが原因だと。
パワーをつけるためにパの選手はウェートトレーニングをする。体格、体の厚みでもパはセを上回っている。
また、セの打者は当てに行く指導をされるが、パは振りぬけと言われる。この差も大きい。

週刊ポストの近号では、大阪桐蔭の西谷監督が選手に「マン振り(フルスイング)」をするよう指導しているという記事が載った。
中村剛也、浅村栄斗、中田翔、森友哉など大阪桐蔭出の打者が好成績を挙げている大元はこの指導にあると思うが、西岡剛を除くと、彼らはすべてパ・リーグの球団にいる。そして高校時代の「マン振り」をそのまま続けて強打者にのし上がった。
話としては筋道が通っている。

金田正一や張本勲などは「野球選手はウェートトレーニングをすべきでない」と言っている。余分な筋肉がつくと動きが悪くなるからだ。
しかし、それは箱庭でちまちま野球をやっていた時代の話なのかもしれない。MLBのスケールの大きな野球を知ってしまった選手は、それでは勝ち抜けないと思っているのではないか。

パ・リーグはなまじ伝統がない分、御大、ご意見番の意見を拝聴しないのかもしれない。どんどん新しいトレーニングを取り入れ、選手自身が肉体改造をしているように思う。

こういう傾向がはっきりしだしたのは21世紀に入ってからだろう。ダルビッシュ有が2010年オフに肉体改造をしてマッスルマンになり、翌年、空前の成績を挙げたのは記憶に新しい。

確かにそうした「野球の質」の差がついたのは大きいが、私はもう一つセ・パ格差の原因として「FA効果」を挙げておきたい。

先日、ベースボールチャンネルで、これから期待できる打者の大記録のリストを作った。

谷繁元信は、あと2試合でNPB記録を樹立 野球人生を賭けたベテラン打者たちの静かなる戦い【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】

このランキングに名を連ねているのは、ほとんどがセ・リーグの選手なのだ。すでに峠を越して、大記録への挑戦が目標になったような選手。
谷繁元信、和田一浩、小笠原道大、阿部慎之助、村田修一、新井貴浩。
中には松井稼頭央のようにパの選手もいるが、セの選手が圧倒的に多い。

そして彼らの多くは、FA移籍している。西武から中日に行った和田、日本ハムから巨人、中日の小笠原、オリックスから巨人に行き、オリに復帰した谷佳知。

彼らは全盛期に移籍した。短期的に見れば元のチームとしては大打撃だ。しかしFA移籍した選手は数年で下り坂になる。移籍先のチームは大型契約をした手前、優先的に使わざるを得なくなる。その分、若手の活躍のチャンスが失われる。

一方で元のチームは、若手を抜擢せざるを得なくなる。こういう状況が続くと、スター選手はいずれチームを出ていくことが既定路線になるので、チームは常に次世代の選手を育成するようになる。

パ・リーグだけでなくセでもDeNAや広島のように主力選手が他球団にFA移籍するのが恒例になっているチームは、若手の有望選手がどんどん出てきている。

結局「育成に優る補強なし」ということなのだろう。
今季、巨人は珍しく大型補強をしなかった。経済的な事情もあるとは思うが、FAでの選手獲得は不良資産を増やす割に効率が悪いことを悟ったのではないか。

セ・パの実力格差は野球史上で非常に面白いテーマだと思う。また違った観点から、考えてみたい。


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