例の三木谷オーナーの現場介入問題、私はどうやら読み誤ったらしい。内部の反三木谷派のリーク、あるいは特定メディアの意図的な報道だと思ったのだが、そうではなく三木谷オーナーは 、結構自慢げに今回の事態を自ら説明したようだ。
報知新聞
【楽天】三木谷オーナー、独占インタビュー!現場介入は一体化の象徴
三木谷オーナーはこういうことを言っている。
1)現場介入ではなくフロントと現場の一体化、協調。フロントと現場が一体となってコンシステンシー(一貫性)のある野球のスタイルを構築しようとした。
2)田代コーチはプライドがあったため、それが伝わらなかった。
3)データを活用したトラックマンシステムの導入、松井裕の抑え起用、伊志嶺の捕手から内外野へのコンバート、超機動力野球など、現場と意見が一致して成功した例も多い
4)オープンディスカッションで合意してやっている。“鶴の一声”で何かが決まることはない。
5)サッカーの場合、ダメな場合、解任するのが普通だから解任したが、野球はそうではない。今は大久保監督を気に入っている。
ありていに言えば、三木谷オーナーはサッカーに続いて、プロ野球も「おもちゃ」にしようとしているのだ。
三木谷氏は20年前に楽天を創業し、一代で売り上げ6000億、連結純利700億の大企業を作った稀代のベンチャー経営者だ。ビジネスに関しては、成功原理を体得している稀有のビジネスマンだ。
おそらく氏の全身には、自分の成功原理は、どんな分野でも通用するという強固な信念、あるいは全能感がみなぎっていると思われる。
三木谷氏から見れば、野球やサッカーなどのスポーツはビジネス規模も小さいし、その構造も単純だし「こんな低次元のことで何を悩んでいるのか」と思っているのだろう。そして「自分がやれば、絶対にうまくいく」と確信ているのだろう。
三木谷氏が言う、現場とフロントの一体化、コンシステンシー(一貫性)の実現とは、要するに三木谷氏が現場に介入して、主導権を握るということだ。
現在のベンチャー企業の多くは、経営トップ以外は代替可能な人材で構成されている。
ベンチャーは、創業当時は同志的な結合でスタートするが、意見の対立などで一人欠け、二人欠けして、最終的には独裁が完了する。ほぼ間違いなくそうなる。
ベンチャーにおいて独裁は必ずしも「悪」ではない。独裁のほうが決断は格段に速くなるし、実行力も強くなる。
独裁経営者の下には、かつての同志に代わって、有能だが最終決断を求められない人材が集まる。彼らはさらに良いサラリーという功利あるいはクビになる、仲間に抜かれるという恐怖心で行動する。明確な目標を設定され、競争原理で常に淘汰され、入れ替わっていく。
そういう組織においては、三木谷氏のようなトップダウンのデシージョンは常に有効だ。
しかしスポーツの組織は基本的に代替不可能な人材によって構成される。
プロ野球選手は個々が別個の能力、技術を持っている。しかもそれは半端ではない。
四国アイランドリーグplus徳島の監督だった島田直也は「四国にきて、NPBでプレーする選手は、みんな“天才”だとわかった」としみじみ言ったが、NPBはトップクラスのアスリートによって構成されているのだ。
彼らの行動原理には功利や恐怖心もあるだろうが、それ以上に、より高次のモチベーションで動いている。プライドはその代表格だ。
三木谷オーナーは、田代コーチが「プライドを捨てられなかったために辞めざるを得なくなった」と憐れむように言ったが、プロ選手や指導者がプライドを捨ててはプレーすることはできない。
三木谷オーナーから見れば、楽天の選手は、自社の社員と同等か、それ以下に見えたかもしれないが、それはプロスポーツの世界を知らないからだ。彼らはベンチャー企業の社員よりもはるかに厳しい競争を勝ち抜いた、選ばれた人材なのだ。
会議ではおそらく、「プライドを捨てて俺の言うことを聞け」と迫っているのだろうが、それは指導者、選手にとっては自由を奪われ、牢屋に押し込められるようなものだろう。
みんな田代コーチの後を追いたい衝動をこらえているのではないか。
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1958年西村貞朗、全登板成績【不振の中での完全試合】
【楽天】三木谷オーナー、独占インタビュー!現場介入は一体化の象徴
三木谷オーナーはこういうことを言っている。
1)現場介入ではなくフロントと現場の一体化、協調。フロントと現場が一体となってコンシステンシー(一貫性)のある野球のスタイルを構築しようとした。
2)田代コーチはプライドがあったため、それが伝わらなかった。
3)データを活用したトラックマンシステムの導入、松井裕の抑え起用、伊志嶺の捕手から内外野へのコンバート、超機動力野球など、現場と意見が一致して成功した例も多い
4)オープンディスカッションで合意してやっている。“鶴の一声”で何かが決まることはない。
5)サッカーの場合、ダメな場合、解任するのが普通だから解任したが、野球はそうではない。今は大久保監督を気に入っている。
ありていに言えば、三木谷オーナーはサッカーに続いて、プロ野球も「おもちゃ」にしようとしているのだ。
三木谷氏は20年前に楽天を創業し、一代で売り上げ6000億、連結純利700億の大企業を作った稀代のベンチャー経営者だ。ビジネスに関しては、成功原理を体得している稀有のビジネスマンだ。
おそらく氏の全身には、自分の成功原理は、どんな分野でも通用するという強固な信念、あるいは全能感がみなぎっていると思われる。
三木谷氏から見れば、野球やサッカーなどのスポーツはビジネス規模も小さいし、その構造も単純だし「こんな低次元のことで何を悩んでいるのか」と思っているのだろう。そして「自分がやれば、絶対にうまくいく」と確信ているのだろう。
三木谷氏が言う、現場とフロントの一体化、コンシステンシー(一貫性)の実現とは、要するに三木谷氏が現場に介入して、主導権を握るということだ。
現在のベンチャー企業の多くは、経営トップ以外は代替可能な人材で構成されている。
ベンチャーは、創業当時は同志的な結合でスタートするが、意見の対立などで一人欠け、二人欠けして、最終的には独裁が完了する。ほぼ間違いなくそうなる。
ベンチャーにおいて独裁は必ずしも「悪」ではない。独裁のほうが決断は格段に速くなるし、実行力も強くなる。
独裁経営者の下には、かつての同志に代わって、有能だが最終決断を求められない人材が集まる。彼らはさらに良いサラリーという功利あるいはクビになる、仲間に抜かれるという恐怖心で行動する。明確な目標を設定され、競争原理で常に淘汰され、入れ替わっていく。
そういう組織においては、三木谷氏のようなトップダウンのデシージョンは常に有効だ。
しかしスポーツの組織は基本的に代替不可能な人材によって構成される。
プロ野球選手は個々が別個の能力、技術を持っている。しかもそれは半端ではない。
四国アイランドリーグplus徳島の監督だった島田直也は「四国にきて、NPBでプレーする選手は、みんな“天才”だとわかった」としみじみ言ったが、NPBはトップクラスのアスリートによって構成されているのだ。
彼らの行動原理には功利や恐怖心もあるだろうが、それ以上に、より高次のモチベーションで動いている。プライドはその代表格だ。
三木谷オーナーは、田代コーチが「プライドを捨てられなかったために辞めざるを得なくなった」と憐れむように言ったが、プロ選手や指導者がプライドを捨ててはプレーすることはできない。
三木谷オーナーから見れば、楽天の選手は、自社の社員と同等か、それ以下に見えたかもしれないが、それはプロスポーツの世界を知らないからだ。彼らはベンチャー企業の社員よりもはるかに厳しい競争を勝ち抜いた、選ばれた人材なのだ。
会議ではおそらく、「プライドを捨てて俺の言うことを聞け」と迫っているのだろうが、それは指導者、選手にとっては自由を奪われ、牢屋に押し込められるようなものだろう。
みんな田代コーチの後を追いたい衝動をこらえているのではないか。
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1958年西村貞朗、全登板成績【不振の中での完全試合】
昨年オフ、週刊ベースボール取材班の取材に対し、三木谷氏は、最初の10年間は「経営は95点」と自己採点。今後10点間は「チームの実力。チーム力を上げていく」と明言しています。そして2015年を「お金の勝負じゃなくて、知恵の勝負」と位置付けていました。
知恵の勝負とはITを使ったチーム力向上でしょう。立花社長就任後に立ち上げたチーム戦略室。外部からアナリストを雇い、セイバーメトリクスや統計学をメインに据えたフロント主導(オーナー主導とも言える)チーム作りを進めてきました。
その方向性をデーブというイエスマンを監督に据えることができた2015年、一気に現場レベルの隅々まで落とし込み、加速化させようと狙ったのだと思います。複数球団からアプローチのあった親交のある山本氏を自ら口説き落としたのもその表れです。
ところが、コンセンサス不足で現場の理解がなかなか得られず、時間だけが過ぎていった。特に田代コーチのような守旧派の叩き上げには受け入ることができない酷な状況だったかと思います。
その緩慢さが、三木谷氏には我慢ならなかった。
三木谷氏にしてみれば、いつものビジネスでのスピード感覚を持ち込んだのでしょうが、プロ野球の世界では性急すぎた。
まあ、でも、この手法は変わらないのでしょうね。