元讀賣新聞記者の務台達之氏が、プロ野球と題してセ・パ両リーグの力量差がついた理由について考察している。
「パ高セ低の謎」

務台氏はパの実力アップは「個の力」のレベルアップがうまくいっているからだとし、その主因としてDH制の導入を挙げている。
DH制は投手を鍛えた面が大きいとし、終盤に代打を送られることなく長い回を投げられるパの投手はより経験を積むことができる、と説明している。

セ・パの実力格差の要因としてDH制を挙げる人は務台氏だけでなく結構多い。
しかし私は釈然としない。
そもそもDH制は40年も前に導入されたものだ。その効果が今頃になって出てきたということなのか。
セ・パの格差が明るみになったのは2005年に交流戦が始まってからだ。ここまで11年間でパが10回勝ち越している。
DH制がそこまでレベルアップに効果を発揮していたなら、その前からパは強かったはずだ。

オールスター戦、日本シリーズ、交流戦の年代ごとの推移をまとめてみた。

CL-PL


オールスター戦は、「人気のセ、実力のパ」と言われ、昔からパが強かったが、最近はセの方がずっと強い。
日本シリーズは70年代から20年はパが強かったが、95年から2004年はセが強く、ここ10年はパが強い。
交流戦はパが大きく勝ち越している。

確かにDH制は先発投手の練達に一定の効果はあるだろうが、プロ野球での先発投手が勝敗に占めるウェイトは1974年にセーブが導入されて以来下がっている。
セ・パの力量差を「先発投手の差」だけで説明するのは無理があると思う。
私は以下の4点ではないかと思う。

1. ドラフト
まず、ドラフトによる戦力均衡が下地にあるだろう。江川事件などドラフトの本旨を踏みにじる事件はあったが、半世紀がたって戦力均衡は進んだ。とりわけパ・リーグの恩恵は大きかった。

2. 親会社の変遷
次に、パのチームがほぼ全部身売りによって親会社が変わったことが大きい。時代とともに繁栄する企業の顔は様変わりする。ホークスなど電鉄➡流通➡IT、通信と、親会社は象徴的な変遷を遂げてきた。これに対しセは国鉄がサンケイ、ヤクルトになったのと、大洋が横浜、DeNAと変化した程度で、親会社に大きな変動はない。
結果としてパは「時代の先端を行く企業の傘下」、セは「老舗企業の傘下」となった。チームの強化や経営革新において、セ・パ両リーグの親会社の姿勢は大きく異なるはずだ。資本力にも差がある。親会社に大きな変化がないセのチームは「守旧派」になったと言ってよいだろう。

3. FA
そしてFAの影響が大きい。一定年限を経た選手が自由に交渉できるFAは、NPBにおいては主としてパの選手が、巨人などに移籍するために使われた。パのチームにとっては痛手だったが、大物選手が抜けることで、新陳代謝が大幅に進んだ。反対にFAで選手を獲得したチームは、盛りの過ぎた大物を起用することになり、中長期的に見れば戦力はダウンした。

4. 育成システム
2.3.と関連するが、パのチームは主力選手が一定年限でいなくなることを想定して、選手を積極的に育成した。またその登用もはやかった。親会社も人材育成にノウハウを持っており、それが球団にも反映された。
反対のセのチームは大枚をはたいて獲得したFA選手の「元を取ろう」とするあまり、生え抜きの選手の育成、登用が遅れた。古い企業が多いだけに、人材育成のシステムも整備されていなかった。

こうしてみるとDH制は要因としては微々たるものだったのではないかと思える。
今のスポーツ・ジャーナリスト、特に新聞記者に欠けているのは、物事を現象面だけではなく経済や社会的背景とともに見る力ではないかと思う(自分が所属している会社の悪口は書けないのだろうが)。

讀賣新聞出身の務台氏は、最後に巨人の検討をちょっと褒めている。確かに巨人は三軍の導入など、本気で育成を考え始めたように思える。

しかし、この流れがセの他球団に広がるかどうかは疑問だ。親会社自身が「守り」に入っている中で、積極的なチーム強化は望み薄ではないか。

セの球団が変わるのは、複数の球団が身売りをする時ではないかと思う。


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