台湾にいる間、ニュースに疎かったので、パリの惨事をしばらく知らなかった。阿藤海が死んだのは全然知らなかった。

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ある時期から試合前のナショナル・アンセムの時に、音楽が流れる前にしばらく時間があいた。「不手際だ」と思っていたのだが、昨日、合流した豊浦彰太郎さんが「パリの事件の犠牲者への黙とうですね」と言われた。英語の聞き取り力の貧しさに恥じ入ったが、事件の大きさを思い知った。

世界はアジアの島国ともつながっているのである。
その地に、アジア、北米、中南米、ヨーロッパの国の選手が集まって、同じ競技をしている。命を賭けて人殺しをしている人がいることを考えると、なんと平和なことだろうと思う。

世界大会と銘打っているが、出場している選手たちの中で、エリートは少ない。
アメリカは、独立リーグの選手も多い。すでに終わった選手、出世せずじまいの選手が、体裁を繕うために出てきている感がある。監督のウィリー・ランドルフはヤンキースのスターだったが。
ドミニカは、ミゲル・オリボ、ウィルソン・ベテミットなど、元のMLB選手はいるが、このチームもくたびれている。監督のミゲル・テハダは、MVPを取ったスターだが薬物使用でMLBを引退した。
ベネズエラは、NPBに再就職したい選手が多い。その中でMLB156勝のフレディ・ガルシアは、プライド一つで投げている感があった。彼の毅然としたマウンドは美しかった。

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メキシコは、もめにもめた挙句に出場を決めたが、出世前の若手も多く、士気は高かった。戦う中で、まとまりをつけてきた感があった。
韓国は、兵役免除がなくなったことですっかり勢いがなくなったが日本への対抗心をモチベーションに勝ってきた。応援団もいるにはいるが、
日本だけが、エリート集団を送り込んだ。正装に身を包み、メディアがにぎにぎしく取り巻く中、スタジアムにやってきた。
試合前の日本サイドは、多くのメディアが取り囲み、実に華やかだ。スタンドの最前列にはファンが鈴なりになってカメラやスマホを向けていた。

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反対側のベンチはひっそりと静まり返っている。だれも見向きをしない中で、選手がストレッチを行っている。

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甲子園の予選で私立強豪校と無名の公立校が対戦しても、ここまでの落差はないと思った。

しかしながら、試合が始まると、“無名校”のような相手チームは、日本相手に互角の勝負を挑むのだ。韓国船を除く4試合は、日本が負けそうな一瞬があった。
寄せ集めで、作戦もほとんどないチームが、日本の投手陣を易々と打ち崩す。バントや足でかき回す。そこには、彼らのプライドも見て取れた。“特別待遇”でやってきた日本が“バカ坊ちゃん”のように見えたりもした。なんとなく心情的に相手チームを応援したくもなった。



世界中には、「野球で成功したい」と思う若者がたくさんいるのだ。彼らの中にはその夢を果たした選手もいるが、大部分はそうではなかった。
しかし、どんな道筋であれ、若者たちは、野球の一心に打ち込むことで、高いレベルに達する。たとえ成功できなくても、実力を蓄えた選手はたくさんいるのだ。
彼らは、その実力を試合で発揮して見せた。

NPBの選手たちは、無名でもあっても高いレベルの選手たちとプレーすることで、畏敬の念を抱いたのではないか。「世界の野球」の広がりを、文字通り、体で感じたのではないか。
国際大会の意義とは、第一にそこにあると思う。

観客の応援スタイルも様々だったが、彼らは十分に試合を楽しんでいた。日本や台湾のように大観衆がいなくても、スタンドは一生懸命だった。そして楽しんでいた。

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人来ぬスタジアムでプレーした選手たちの心意気を大事にしたい。
日本が勝って東京ラウンドはたくさんの観客が入るだろうが、日本戦以外の試合も注目してほしい。

言語も思想も生活も価値観も全く違う選手たちが「野球、Baseball、棒球」という一つの競技でつながる。試合を通してコミュニケーションを深める。スタンドでも応援を通して、みんなが一つになる。
ベースボール・ネーションの一員になっていくのだ。

世界が混迷を深める中で、かけがえのない時間を、選手やファンと共有した。そのことの意味をかみしめたい。

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