最近、日曜朝はこの局にチャンネルを合わさないようにしている。張本勲が世間受けを狙って極論、毒舌を吐くのがわかりきっているからだ。

しかし、ネットを見ていると彼の発言が漏れ聞こえてくる。

デイリースポーツ
野球評論家の張本勲氏(75)が6日、レTBSテレビ「サンデーモーニング」(日曜、前8・00)の「御意見番スポーツ」で、ポスティングシステムによる大リーグへの移籍を表明した広島・前田健太投手(27)について「(米国行きは)やめてほしいね。ポスティングシステムは人身売買ですよ。(広島には)黒田やカープ女子がいるじゃないですか」と、日本選手の海外流出阻止への気持ちをあらためて表した。

張本は「行くのなら海外FA権を得てから行け」とも言った。
誰でも知っている話だが、海外FA権を行使してMLBに行けば、球団には1銭の金も入らない。
マエケンは今でも年俸3億円、球団の財政を圧迫している。来年末、海外FA権を取得するまで彼を保有すると、さらに数億円の年俸がいる。そのうえで、ポスティングフィーは入ってこないのだ。

ポスティングシステムを「人身売買」だというなら、NPBで行われているドラフトも「人身売買」になる。
有力選手は巨額の契約金を手にするが、そのうちの一定額は学校や指導者に懐に入る。
独立リーグではそれは公表されており、球団は契約金の1割を得ることになっている。これらは、すべて「人身売買」だということになる。
さらに「金銭トレード」や、国内FAにおける「補償金」も、選手を手放す代わりに元の球団が金銭を得るという意味では「人身売買」である。

張本はポスティングシステムをあしざまに言いたいがために「人身売買」という毒のある言葉を吐いたのだ。
彼は有力選手に「NPBから出ていくな」と言いたいだけである。
野村克也などと同様「育ててもらった日本野球に後足で砂をかける行為だ」と怒っているのである。

それは時代錯誤だ。確かに野球選手は指導者の下、成長するが、彼らが成績を上げ、スターにのし上がるのは、選手自身の才能と努力によるものだ。指導者は選手の成長を助け、適宜アドバイスをするだけの存在に過ぎない。今の考えでいえば、彼らは育ててもらったのではなく、実力でのし上がったのだ。
古い時代の野球人は、プレイヤーズファーストの考えがないからこのようなことをいうのだ。

私ははるか昔からパ・リーグひいきだった。
1975年、日本ハムの主軸打者だった張本勲は、三原脩球団社長、大沢啓二監督と不仲になった。
「張本が出るらしい」という噂はかなり早くからスポーツ紙上をにぎわした。
私は大阪球場や日生球場で
 「張本――!お前の気持ちは巨人にあるのやろー」
 「試合に気入ってないやろー」
などとヤジを浴びながら打席に立っていたのを見ている。
そのヤジには、昔から多くの選手がそうだったように、張本勲も閑古鳥のなくパ・リーグから巨人に行ってしまうのか、というパのファンの無念さが込められていた。

当時のパ・リーグから巨人に移籍するのは、今、NPBからMLBに移籍するのと同じくらいのメリットを選手にもたらしたはずだ。
多くのファンは、「育ててもらった恩を忘れて、パ・リーグを捨てやがって」と思ったはずだ。

私は張本の移籍を否定する気はない。そういうやじを背中に受けて、傲然と背をそらし、打席で素振りをくれる張本勲は恰好がよかった。
実力のある選手がよりレベルの高いステージ、より多くの報酬を求めてチームを変わるのは当然のことだと思う。
そうした選手の紆余転変を見るのも、野球のだいご味だと思う。

グローバル化が進む今のプロ野球では、移籍のスケールも大きくなった。
マエケンが広島からMLBに行く動機は、昔、張本勲が日本ハムファイターズから讀賣ジャイアンツに移籍した動機といくらも変わらないはずだ。

昔のことに口を拭って、もっともらしい言説を吐く張本勲は曲学阿世の徒だ。情けないと思う。
似非ナショナリズムは、渡世のすべだと思うが、国籍や差別で苦労をしたはずの張本勲の口からはききたくない。そもそも張本は韓国プロ野球の創設に尽力し、日韓の野球選手の流動性を促進した立役者ではないか。

殿堂入りした野球人らしい発言をしてほしいと思う。

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