昔から「学校案内」というのをたくさん作ってきた。学校の先生にはよく話を聞いてきた。
公立校の先生の中には、教育問題や暮らしの問題に直面している先生もいたが、公立でも名門校や、私立校でそれなりの地位にある先生は、若者たちが生きにくい人生に直面していることなどよその世界のように思っている人もいた。自分が学校で職を得て、収入を得ていることに何の疑いも感じていない先生たちだ。

体育会系の先生の中には、その印象が強い人が何人もいた。
指導の方針を訪ねているのに、自分が何年にどの大学のどの体育会に入って、そこでどう言う成績を残して、誰のコネクションで学校に就職して今に至るかをとうとうと話す先生がいた。
その先生は、どこどこ高校のA先生は同級生。B先生は教え子、C先生は先輩、みたいなことを果てしなく話した。それが彼のすべてのようだった。

P5074607



これは極端な例だとしても、体育会系の先生は横のネットワークが強い。それだけで世渡りをしているのではないかと思える人も多い。
最も勢力が強い野球部は特にそうで、多くの指導者は互いに顔見知り以上の関係だ。他校の生徒であっても、有望な選手は子供のころから知っていたりする。
東京六大学最多勝投手で、アマ指導者として活躍した山中正竹は、著書で出身校である佐伯鶴城高校のOBである阿南準郎や八木孝などのプロ選手と少年の頃から親交があったと書いている。また野村謙二郎は八木孝の甥にあたるが、山中は野村を子供のころから指導していた。野球関係者はみな「身内」という印象だ。

野球の人脈、地方閥、学閥は外部から見る以上に強固だ。名門校を出てプロに進む選手たちの周囲には、親や兄弟だけでなく、大学、高校、リトルリーグやボーイズの指導者、先輩、OBなどがびっしりと取り巻いている。
ドラフトで指名を受ければ、そうした周囲は一気に“関係者”になる。選手たちはお世話になった人たちにお礼を言うだけでなく、金やモノでお返しをしなければならない。母校には何かを寄付しなければならない。
今季、阪神にドラ1で入団した明治大学の高山俊に対して、彼が野球を本格的に始めた船橋リトルシニアのGMは、冗談交じりではあるが、出世の暁には専用球場「高山ボールパーク」を寄付してくれと頼んだ。
選手の中には、関係者に金品を配りまくった挙句、翌年の所得税、住民税が払えなくて破産しそうになるケースもあるという。球団関係者は、税金分だけは留保するようにアドバイスするという。

野球選手がプロ野球に入るとは、こういうことなのだ。巨額の金は、彼を取り巻く人脈に吸収されていく。
巨人の選手の場合、表の契約金の数倍の金が動くことが多いが、それはそれだけ利害関係者が多いからだ。

NPBの野球、とりわけ選手の獲得や育成システムがなかなか変わらないのは、こうした既得権益者がプロのみならずアマチュアの領域までたくさんいるからだと思う。彼らは表立って発言することはないが、影響力は依然、強い。

P4292147


独立リーグを三軍性にすること、そしてエキスパンションや新興企業の参入などによって経営に新風を吹き込むことは、NPBは発展するうえで不可欠なことだと思う。しかしこうした既得権益を有する層が、これ位に抵抗していると思う。

独立リーグに入団する選手のほとんどは、主流の野球人脈からドロップアウトした選手だ。独立リーグからドラフトでプロに入団しても、見返りを求める恩師や関係者はそれほど多くないと思われる。
規定で、ドラフトの契約金から10%が独立リーグの球団に支払われるが、それ以外の“御礼”は他から入団した選手よりも少ないはずだ。もともと下位指名の選手が多いので、契約金はそれほどの金額ではないが。
独立リーグを経て入団する選手が増えれば、アマ球界はうまみがなくなってくるのだ。

もちろん、独立リーグがNPBの三軍になれば、独立リーグは独自の選手獲得をやめるだろうから、ドラフトにかかわる一連の流れは維持される。利権も温存されるだろう。
しかし、これまでアウトローだった独立リーグがプロ球界に組み込まれることによって、利権の仕組みが影響を受ける可能性はあるだろう。
また、ファーム組織が拡大することで、これまで「強化費」という名目で支払われていたさまざまな利益供与が減る可能性もあろう。

アメリカではオープンになっている金の話が、日本では裏に潜り込んでいる。今の「野球」そのものが、既得権益なのではないかとさえ思う。

障壁は想像以上に大きいのではないか。内情は表にはめったに出てこない。推測でしか話ができないが、プロ野球が大きな金を集め、利権が大きく、運営側に危機感がない現状では、なかなか改革は進まないと思う。
皮肉な話だが、野球界がもう少しだめにならないと、改革は日の目を見ないのではないか。


私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!


2015年西野勇士、全登板成績【クローザー2年目、セーブ失敗0の驚異】


発売しました!