昨日の投稿以来、大友一仁さんのブログのヘッドスライディングのことがひとしきり議論になっている。私も少し考えてみたい。
一塁への走塁で、ヘッドスライディングのほうが早いか、駆け抜けるのが早いのかの議論。おおむね駆け抜けるのが早いようだ。ヘッドスライディングするためには前傾姿勢になるために一瞬スローダウンする必要がある。加速したまま走るほうが早そうだ。
しかしながら、その差は大きなものではないだろう。フォースプレイの場合、走ろうがヘッドスライディングしようが、決定的な差がつくわけではない。
要するに、ヘッドスライディングしたほうが早くなるという一般的な思い込みに対する反論として「駆け抜けるほうが早い」と言われているのだろう。
しかし、ヘッドスライディングと駆け抜けるのでは、けがのリスクは大きく異なる。
駆け抜けてもベースで躓いたり、タッチが体に当たったりするリスクはあるだろうが、ヘッドスライディングすることのリスクはその程度では済まない。自ら体を地面に激しくたたきつけるのだから、その衝撃は大きいはずだ。さらに、手や指先などを踏まれるリスクもある。突き指の恐れもあるだろう。
一瞬のプレーで、長期間、戦線離脱するようなアクシデントにつながる可能性ははるかに大きいといえよう。

他のケースでのヘッドスライディングも大きなリスクがある。タッチプレーを伴う走塁では、駆け抜けるよりもスライディングするほうがアウトになる可能性が低いのはまちがいないが、一般的に足からのスライディングとヘッドスライディングでは、故障のリスクはヘッドスライディングのほうが大きい。むやみやたらとすべきではないだろう。

内野守備ではヘッドスライディングは、無理目の打球を捕球するためには不可欠のプレーだ。地面に平行になるほど体をつっこんでグラブの先にボールをひっかけるプレーは、内野手の華といってもよい。
おそらく、このヘッドスライディングもリスクは高いのだろうが、内野守備ではこれは不可避だ。

外野守備でもヘッドスライディングして飛球をとるプレーがあるが、福本豊などはこれを「絶対にやってはいけない」と言っている。内野ではOKのヘッドスライディングが、外野ではなぜだめなのか。
それは外野でのヘッドスライディングのほうが、はるかに長い距離を追いかけるため助走がついて激しい勢いで飛び込むことになるからだ。

福本は「僕はやったことない」と言っている。はるか後輩のイチローもヘッドスライディングでのキャッチはほとんど見たことがない。イチローは無理目の打球を捕球するときは、足からスライディングをして芝生を滑りながら落下地点に到達するのが常だ。

しかし平野恵一など内野手の経験のある外野手は、外野飛球を捕るときにしばしばヘッドスライディングをした。
赤星典広は、何度もヘッドスライディングをした挙句に頸椎を損傷し、野球ができない体になった。それどころか引退後のコーチの業務も無理なようで、阪神のオファーを辞退したとのことだ。

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走塁でも、守備でも、ヘッドスライディングにはリスクが伴う。とりわけ頭や頸椎、背骨などの損傷のリスクが高まることは深刻だ。
それを考えれば、ヘッドスライディングは、必要とされるケースを除いてやらないほうが賢明なのだろう。

日本の野球ではヘッドスライディングは「一生懸命やっている」ことを体で表現するために行われることもある。

甲子園の高校野球で、負けているチームの最終回の走者は、どんな打球でも一塁にヘッドスライディングする。このときは「駆け抜けたほうが早い」という理屈は忘却される。一塁コーチは両手を大きく振り下ろして、「突っ込め」のサインを出す。
冷静な判断ではなく「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」という特攻隊的な精神で飛び込むのだろう。
言ってみれば「一生懸命やりました」というアピールなのだ。
一種の「お約束」ともいえる。日本人はこういうの、好きだが、あまり良いこととも思えない。

一塁へのヘッドスライディングは、見るものにアピールはするが、実効性はない。やめたほうが良いのではないか。




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