わずか数時間後に再び東京ドームに入ってみると、空気は全く違っていた。昼の阪神対オークランド・アスレチックス=OAK戦が、恐らくは1万数千という入場者数であり、のどかなオープン戦の風情だったのに対し、夜の巨人対シアトル・マリナーズ=SEA戦は、凱旋報告会のようだった。
一番上の席までほぼ埋まった観客の目は、3人の日本人を追いかけていた。川崎はどこにいてもよく目立つ。打撃練習でもバントをしてダッシュしたり、ときおりヘルメットを脱いで坊主頭を見せたり。今この場所で野球をすることがうれしくて仕方がないという感じだ。

岩隈は先発投手の試験に落第して、追試を受ける気分だろう。控え捕手のキロスと、外野の左翼付近で入念にキャッチボールをしている。
そしてイチロー、その姿がひとたびグランドに現れるや、すさまじい声援が起こる。私も少し胸が高鳴った。

210安打をしてスターダムに躍り出たころから私はイチローの試合を追いかけていた。はじめの頃のイチローは素晴らしいアイドルであり、黄色い声の的になっていた。しかし、7年連続で首位打者をとり、押しも押されもせぬ大打者になっていくうちに、グランドでの声援は少しずつ小さくなっていった。イチローが安打を打つのは当たり前になり、大活躍することさえ驚きではなくなっていった。イチローは毎年好成績を積み上げていったが、それがファンの心を揺さぶることはなくなっていったのだ。
やがてイチローは海を渡り、我々の手の届かぬところで信じられないような活躍をして、MLBでも偶像的な存在になり、12年ぶりに日本に帰ってきたのだ。
ゆっくりと体を動かすさまにも、ボールを投げるときのちょっとした足遣いにも風格を感じる。巨人の坂本隼人が、ドームのロッカールームでイチローを見かけて「生イチローを見た」と騒いだそうだが、売り出し中のスター選手をして興奮せしめるような重厚さ、大物感が備わっていたのだ。


1回、イチローが最初の打席で右手に持ったバットを斜め上に掲げてそれを見る、お馴染みのポーズ(「赤木の山も今夜限り」みたいな)をとると、すさまじい数のフラッシュが光った。人々はこの一瞬をデータと記憶に収めるために球場に足を運んだのだ。

イチローは気合十分に見えた。安打は出なかったが、打点は稼いだし、外野から二塁、本塁に好返球も見せた。ただ、5回のバックホームは山なりのボールであり、捕手モンテロのミットの手前でバウンドした。レーザービームではなかった。それでも観衆は十分に満足だった。
岩隈は、恐らく球威が落ちている。速球がシュート回転しているようで、並みの打者にも打ちやすい球になっていた。オープン戦の当初から被安打が多かったのだが、今日は巨人の各打者に初球を快打されていた。調整に失敗したのではないか。このままではローテーションどころか25人枠も厳しいだろう。

川崎はオープン戦が始まってから初めてフル出場した。安打はなかったがバントを試みるなど元気いっぱい。守備でも併殺に一つ参加した。開幕戦は控えだろうが、この躍動感が続く限りチャンスはあるだろう。
巨人軍は、岩隈の打ちやすいボールを打つうちに、すっかり調子を取り戻したようだ。新外国人のボウカ―が振れていた。また村田も鋭い振りを見せた。

先発のホールトンはコントロールが定まらなかったが、SEAが拙攻するうちに調子を取り戻した。
SEAでは、アクリーが大きな打撃を見せた。足も速い。またフィギンスの動きも良かった。カープの振りも鋭かった。

ただそれ以外の打者、大物と目されるスモークやモンテロ、リディらは目立たなかった。
8回、Sweet Carolineが流れた。BOSで始まった習慣は、SEAでも定着。でも日本では反応なし。
イチローの前のウェルズで試合が終わると、球場全体がため息に包まれた。まさにイチローのための夜が終わったのだ。
明日は、本番、開幕戦。メジャーリーガーたちはどんな風に表情を変えてゆくのだろうか。
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岩隈は先発投手の試験に落第して、追試を受ける気分だろう。控え捕手のキロスと、外野の左翼付近で入念にキャッチボールをしている。
そしてイチロー、その姿がひとたびグランドに現れるや、すさまじい声援が起こる。私も少し胸が高鳴った。

210安打をしてスターダムに躍り出たころから私はイチローの試合を追いかけていた。はじめの頃のイチローは素晴らしいアイドルであり、黄色い声の的になっていた。しかし、7年連続で首位打者をとり、押しも押されもせぬ大打者になっていくうちに、グランドでの声援は少しずつ小さくなっていった。イチローが安打を打つのは当たり前になり、大活躍することさえ驚きではなくなっていった。イチローは毎年好成績を積み上げていったが、それがファンの心を揺さぶることはなくなっていったのだ。
やがてイチローは海を渡り、我々の手の届かぬところで信じられないような活躍をして、MLBでも偶像的な存在になり、12年ぶりに日本に帰ってきたのだ。
ゆっくりと体を動かすさまにも、ボールを投げるときのちょっとした足遣いにも風格を感じる。巨人の坂本隼人が、ドームのロッカールームでイチローを見かけて「生イチローを見た」と騒いだそうだが、売り出し中のスター選手をして興奮せしめるような重厚さ、大物感が備わっていたのだ。
1回、イチローが最初の打席で右手に持ったバットを斜め上に掲げてそれを見る、お馴染みのポーズ(「赤木の山も今夜限り」みたいな)をとると、すさまじい数のフラッシュが光った。人々はこの一瞬をデータと記憶に収めるために球場に足を運んだのだ。

イチローは気合十分に見えた。安打は出なかったが、打点は稼いだし、外野から二塁、本塁に好返球も見せた。ただ、5回のバックホームは山なりのボールであり、捕手モンテロのミットの手前でバウンドした。レーザービームではなかった。それでも観衆は十分に満足だった。
岩隈は、恐らく球威が落ちている。速球がシュート回転しているようで、並みの打者にも打ちやすい球になっていた。オープン戦の当初から被安打が多かったのだが、今日は巨人の各打者に初球を快打されていた。調整に失敗したのではないか。このままではローテーションどころか25人枠も厳しいだろう。

川崎はオープン戦が始まってから初めてフル出場した。安打はなかったがバントを試みるなど元気いっぱい。守備でも併殺に一つ参加した。開幕戦は控えだろうが、この躍動感が続く限りチャンスはあるだろう。
巨人軍は、岩隈の打ちやすいボールを打つうちに、すっかり調子を取り戻したようだ。新外国人のボウカ―が振れていた。また村田も鋭い振りを見せた。

先発のホールトンはコントロールが定まらなかったが、SEAが拙攻するうちに調子を取り戻した。
SEAでは、アクリーが大きな打撃を見せた。足も速い。またフィギンスの動きも良かった。カープの振りも鋭かった。

ただそれ以外の打者、大物と目されるスモークやモンテロ、リディらは目立たなかった。
8回、Sweet Carolineが流れた。BOSで始まった習慣は、SEAでも定着。でも日本では反応なし。
イチローの前のウェルズで試合が終わると、球場全体がため息に包まれた。まさにイチローのための夜が終わったのだ。
明日は、本番、開幕戦。メジャーリーガーたちはどんな風に表情を変えてゆくのだろうか。
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>岩隈は、恐らく球威が落ちている。速球がシュート回転しているようで、並みの打者にも打ちやすい球になっていた。
広尾さんの御指摘どおり、ただの棒球になっていましたね。この日のストレートの平均球速は私が調べたところだと139.7キロ。依然として球速も出ていませんし、スピンが効いていないのか?球威も感じませんでした。初回にボウカーにホームランを浴びた球はインサイドを狙ったストレートがシュート回転して真中に入っていましたよ・・・被安打10本のうち少なくとも半数以上はストレートを簡単に、しかも、強い当たりでヒットにされてしまいました・・・
>このままではローテーションどころか25人枠も厳しいだろう。
このような状況が続いてますから、仕方がないです。どこかしらに「光」を見つけて応援したいのですが、どこにも「光」がないピッチングでした・・・(ガクッ!)