イチローの今の境遇と重なるのは、1965年以降の金田正一だ。

金田は1950年に国鉄に入団してから15シーズンにわたって大エースとしてチームに君臨してきた。
しかし、65年、B級10年選手の権利を行使して巨人に移る。国鉄の身売りの話に反発したからだと言われているが、一方で金田の退団を察知した国鉄が身売りを考え始めたとの報もある。

この時点で金田は353勝。すでに1963年には別所毅彦を抜いてNPB史上1位の勝利数になっていたが、金田には史上初の400勝という大望があった。勝ち負けが半ばする国鉄から巨人に移籍することで、白星をより早く稼ぎたいという思惑があった。
もちろん、当時は別格だった“巨人選手のステイタス”も魅力だっただろう。

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金田はこの年32歳だったが永年の酷使によって、力は下り坂だった。
巨人、川上哲治監督は、登板間隔をあけたり、イニング数を制限するなど金田を「特別待遇」にした。
川上は当初、金田の獲得に乗り気でなかったようだが、金田が長嶋茂雄や王貞治などの主力選手に、食生活や生活態度を改めるように強くアドバイスし、科学的なトレーニング法なども伝授したのを見て、金田を積極的にバックアップするようになった。

最晩年には、むりやり金田に白星をつけさせるケースもあった。400勝目は3-1とリードした5回に城之内からマウンドを譲られてそのまま5回を投げ切ったものだった。

金田の巨人での5年間は、400勝という個人的な目標のためにチームに迷惑をかけた、とみられなくもない。
しかし同時に金田は巨人のチームメイトに意識改革を起こした。レベルの高い自己管理技術が、ONをはじめとする巨人ナインに浸透したのだ。V9に金田は少なからず貢献したとされる。
金田の「34」が巨人の永久欠番になったのは、その功績を讃えてのことだろう。

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2012年、シアトル・マリナーズからニューヨーク・ヤンキースに移籍したイチローもよく似た境遇だった。弱小チームからスター軍団に入団したのだから。
その時点で往時の実力がなくなっていた点も、金田正一とよく似ている。
最多安打7回、シーズン最多安打のMLB記録を持ち、殿堂入りが確実と言われていた。この時点で2533安打。イチローにとってはMLB3000本安打は宿願となっていただろう。

時折それなりのパフォーマンスは見せたが、やはり38歳という年齢による衰えは隠すべくもなかった。
この間に日米通算4000本安打を記録するが、これはイチローが活躍したためににわかに作られたマイルストーンであり、MLBで公認されているものではなかった。
やはり彼にとってはMLBでの3000本安打が生涯の目標となったのだろう。

ヤンキースをFAになった今年、イチローはマイアミ・マーリンズに移籍した。ここでチーム最多の153試合に出場したが打率.229という信じられない成績でシーズンを終えた。
しかしマーリンズはイチローと翌年の契約を結んだ。
3000本まであと65本である。

マリナーズを出てからのイチローは、外から見れば3000本という個人的な目標のためにチームに迷惑をかけた、とみられなくもない。
その見方を払しょくするためには、金田正一と同様「チームに良い影響をもたらした」というストーリーがなければならない。
日本のメディアはヤンキースやマーリンズの指導者、GMが「イチローはレジェンドだ」「若い選手の手本だ」とほめそやしているという話をたびたび伝えている。
「聞きたくない事実」は伝えず「読者が聞きたがるお話し」を喧伝する今のメディアは信用がならない。
イチローは金田正一のように「数字以上の恩恵」をチームにもたらしているのだろうか。

マイアミ・マーリンズはMLBで最も「おかしなチーム」だと言われている。オーナーは選手やファンのことを考えず、球団をマネーゲームの道具に使っているという非難を受けている。
イチローも球団の金もうけに利用されているのではないか、という疑問を抱いてしまう。

最近、メディアはイチローが「終身雇用」のオファーをされたと報じている。GMがそういったという。まるで詐欺師が言いそうな甘言である。GMの首がぽんぽん飛ぶMLBでは、もとうより空手形に過ぎないが、そういう話がまことしやかに伝えられるようになったイチローの境遇が残念だ。

私は3000本安打はどうでもいいと思っている。すでにイチローは殿堂入りに十分な資格を得ている。我々を20年以上心の底から楽しませてくれた。これ以上何もいらない。
最後の着地が、彼の功績にふさわしい安らかで栄光に満ちたものであること祈るのみだ。

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