メディアの話をして痛感するのは「地上派キー局」の強さだ。業界全体としては縮小傾向にあるし、各局は制作費の削減に血道を上げているが、相対的には圧倒的に強い。
アメリカはもともと広大な国土があり、時差があるために、全国民が同時間に同じ番組を見る習慣はなかった。新聞もテレビも基本的にはローカルだった。
新聞は都市単位に有力新聞社があって、エリアで営業をしていた。
テレビは全米三大ネットワークがあったが、それは制作局ではなく、編成、マネジメントをする局であり、番組制作は地域にあるネットワーク傘下の各局が担っていた。日本のキー局のような中央集権ではなかった。
アメリカでは近年、ケーブルテレビ局の成長によって、地上波のネットワークは伸び悩んでいる。
ケーブルテレビ局はペイテレビだ。視聴者は自分の好きな番組をパッケージで購入する。
MLBが莫大な放映権料で潤っているのは、ケーブルテレビ局の番組パッケージの中にMLB中継が組み込まれているからだ。
MLBは自分たちの会社ですべての公式戦を中継し、番組を制作し、ネット配信するとともにケーブル局にも販売している。これによって巨大な収益を上げているのだ。
ペイテレビの中で最も巨大な収益を上げているのはスポーツ専門のESPNだ。
アメリカの視聴者は「テレビ番組は金を払って見るもの」であり、MLBの試合中継はその主たるコンテンツの一つなのだ。
しかし日本の国土は狭いから時差がない。全国民が同じ時間に同じ番組を見ることが当たり前になっている。
日本のテレビはスポンサーの収益に依存した広告モデルで、番組は各家庭に無料で配信されてきた。
新聞社は1970年代からキー局との資本関係を強め、新聞社とテレビ局が一体化するクロスオーバーメディアが進展した。
全国各地にある地方テレビ局は、地方新聞社や地元企業の資本下にあるが、キー局の番組を配信してもらうために、いずれかのキー局の系列に入っている。主要な番組はキー局が制作し、系列局に卸している。こういう形で中央集権化が進んだのだ。
地方テレビ局も広告モデルであり、視聴者から金を払ってもらって番組を放映するビジネスモデルではない。
衛星放送が始まってから、ペイテレビをビジネスモデルとするBS局、CS局も誕生した。
「これからはマルチチャンネルの時代だ。いずれ日本もペイテレビの時代が来る」と言われたが20年がたってもその時代は到来していない。

一つには日本人の間に「金を払ってテレビを見る」習慣が根付かなかったことが大きい。
そんなことをしなくても、毎日洪水のように番組が流れてくる。わざわざ受像システムを買って、金を払ってまで番組を見る必要がどこにあるのか。
今、テレビの受像機は4700万世帯にあるとされる。このうち4000万世帯ではBSが視聴できるが、多くの人々はNHKのBSと、地上波キー局が無料で配信している番組しか見ていない。
WOWWOWやJ SPORTS、スターチャンネルなどの有料放送を購入するのは一握りの層に過ぎない。
その結果として、キー局とBS、CSなどの放送局の格差も大きくなっている。
多くのBS局は全国紙=キー局の系列だが、採算が取れないため制作予算は小さい。地上波コンテンツの再放送が主流になる。
CSの専門チャンネル=スカパー!は、制作予算がさらに低い分、専門性の高い放送を行っているが、採算は取れていない。
BS、CSのコンテンツに通販番組が非常に多いのは、これがこれらの局の大きな収益源だからだ。
番組と称して延々と商品広告を流すのは、放送局の信頼を失わせるし、視聴率も上がらないから、マイナスなのは明らかだが、背に腹は代えられない状況だ。
制作予算が小さいから、良い番組も作れない。有名タレントも呼べない。そのために地上波テレビにコンテンツの内容でも負けてしまう。
こうした図式から唯一自由なのはNHKだ。NHKは受信料を徴収する唯一の放送メディアであり、圧倒的な資金力と民放全てを結集したよりも大きな制作体制を持ち、時間と金をかけて番組を制作している。
NHKだけがBSでも金をかけ、作りこんだ番組を制作している。BSは地上波とは別に受信料を徴収しているのだから当然だが。
BSの視聴率調査ではNHKの番組が上位にずらっと並んでいる。
野球ファンの中には、地上波でプロ野球中継がなくなってもBS、CSを見るから構わないという人がいる。
個人的にそう思うのは全く自由だが、地上波とBS、CSのビジネス規模、社会的影響力の差を考えると、「地上波からプロ野球が消える」のは、放映権ビジネスが消滅することと同義に等しい。また、社会的影響力も激減する。
もし、地上波がプロ野球のことを話題にしなくなれば、プロレスなどと同様、マイナースポーツに転落する。
地上波放送、とりわけ民放番組は、ひどいレベルになっているが、メディアとしては絶対に無視できない。
幸いにもスポーツニュースは今もプロ野球を第1に取り上げている。
少なくともこの状況はキープする必要がある。中継放送はなくなっても、プロ野球が全国民の関心事であるという状況は維持しなければならない。
そうでなければ選手に何億もの年俸を支払うことはできなくなる。
「すぽると」の地上波撤退が、プロ野球の地上波からの撤退の兆しになってはいけない。
プロ野球は地上波放送との新たな関係を構築しなければならないのだろう。
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テレビは全米三大ネットワークがあったが、それは制作局ではなく、編成、マネジメントをする局であり、番組制作は地域にあるネットワーク傘下の各局が担っていた。日本のキー局のような中央集権ではなかった。
アメリカでは近年、ケーブルテレビ局の成長によって、地上波のネットワークは伸び悩んでいる。
ケーブルテレビ局はペイテレビだ。視聴者は自分の好きな番組をパッケージで購入する。
MLBが莫大な放映権料で潤っているのは、ケーブルテレビ局の番組パッケージの中にMLB中継が組み込まれているからだ。
MLBは自分たちの会社ですべての公式戦を中継し、番組を制作し、ネット配信するとともにケーブル局にも販売している。これによって巨大な収益を上げているのだ。
ペイテレビの中で最も巨大な収益を上げているのはスポーツ専門のESPNだ。
アメリカの視聴者は「テレビ番組は金を払って見るもの」であり、MLBの試合中継はその主たるコンテンツの一つなのだ。
しかし日本の国土は狭いから時差がない。全国民が同じ時間に同じ番組を見ることが当たり前になっている。
日本のテレビはスポンサーの収益に依存した広告モデルで、番組は各家庭に無料で配信されてきた。
新聞社は1970年代からキー局との資本関係を強め、新聞社とテレビ局が一体化するクロスオーバーメディアが進展した。
全国各地にある地方テレビ局は、地方新聞社や地元企業の資本下にあるが、キー局の番組を配信してもらうために、いずれかのキー局の系列に入っている。主要な番組はキー局が制作し、系列局に卸している。こういう形で中央集権化が進んだのだ。
地方テレビ局も広告モデルであり、視聴者から金を払ってもらって番組を放映するビジネスモデルではない。
衛星放送が始まってから、ペイテレビをビジネスモデルとするBS局、CS局も誕生した。
「これからはマルチチャンネルの時代だ。いずれ日本もペイテレビの時代が来る」と言われたが20年がたってもその時代は到来していない。

一つには日本人の間に「金を払ってテレビを見る」習慣が根付かなかったことが大きい。
そんなことをしなくても、毎日洪水のように番組が流れてくる。わざわざ受像システムを買って、金を払ってまで番組を見る必要がどこにあるのか。
今、テレビの受像機は4700万世帯にあるとされる。このうち4000万世帯ではBSが視聴できるが、多くの人々はNHKのBSと、地上波キー局が無料で配信している番組しか見ていない。
WOWWOWやJ SPORTS、スターチャンネルなどの有料放送を購入するのは一握りの層に過ぎない。
その結果として、キー局とBS、CSなどの放送局の格差も大きくなっている。
多くのBS局は全国紙=キー局の系列だが、採算が取れないため制作予算は小さい。地上波コンテンツの再放送が主流になる。
CSの専門チャンネル=スカパー!は、制作予算がさらに低い分、専門性の高い放送を行っているが、採算は取れていない。
BS、CSのコンテンツに通販番組が非常に多いのは、これがこれらの局の大きな収益源だからだ。
番組と称して延々と商品広告を流すのは、放送局の信頼を失わせるし、視聴率も上がらないから、マイナスなのは明らかだが、背に腹は代えられない状況だ。
制作予算が小さいから、良い番組も作れない。有名タレントも呼べない。そのために地上波テレビにコンテンツの内容でも負けてしまう。
こうした図式から唯一自由なのはNHKだ。NHKは受信料を徴収する唯一の放送メディアであり、圧倒的な資金力と民放全てを結集したよりも大きな制作体制を持ち、時間と金をかけて番組を制作している。
NHKだけがBSでも金をかけ、作りこんだ番組を制作している。BSは地上波とは別に受信料を徴収しているのだから当然だが。
BSの視聴率調査ではNHKの番組が上位にずらっと並んでいる。
野球ファンの中には、地上波でプロ野球中継がなくなってもBS、CSを見るから構わないという人がいる。
個人的にそう思うのは全く自由だが、地上波とBS、CSのビジネス規模、社会的影響力の差を考えると、「地上波からプロ野球が消える」のは、放映権ビジネスが消滅することと同義に等しい。また、社会的影響力も激減する。
もし、地上波がプロ野球のことを話題にしなくなれば、プロレスなどと同様、マイナースポーツに転落する。
地上波放送、とりわけ民放番組は、ひどいレベルになっているが、メディアとしては絶対に無視できない。
幸いにもスポーツニュースは今もプロ野球を第1に取り上げている。
少なくともこの状況はキープする必要がある。中継放送はなくなっても、プロ野球が全国民の関心事であるという状況は維持しなければならない。
そうでなければ選手に何億もの年俸を支払うことはできなくなる。
「すぽると」の地上波撤退が、プロ野球の地上波からの撤退の兆しになってはいけない。
プロ野球は地上波放送との新たな関係を構築しなければならないのだろう。
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地上波神話はもうとっくに崩壊している。