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プロ野球「16球団構想」を大手新聞が黙殺している 石破担当相の発言にも触れないわけ

2014年に 自民党の日本経済再生本部(本部長・高市早苗政調会長)がまとめた政府への提言「日本再生ビジョン」に「プロ野球16球団構想」が盛り込まれた野は記憶に新しい。
静岡、北信越、四国、沖縄などプロ野球のない地域に新たに球団を創設。球団数を現行の12球団から16球団とする内容。
いわゆるアベノミクスの「第3の矢」の一環だった。

その是非は別として、こうした議論が起こるのは誠に喜ばしいと思われたが、はかばかしい議論に進展もないままに立ち消えになった。

しかし今月の衆議院予算委員会で16年2月15日の衆院予算委員会で、自民党の後藤田正純議員が
「これ、できたら盛り上がると思いますよ、地方」
と質問すると石破茂・地方創生担当相は賛同する意見を述べ
「指摘を踏まえて政府として検討していく」と言ったというのだ。

しかしこの話は讀賣、朝日、毎日、サンケイ、日経、中日、東京など主要新聞は一切触れなかったという。
かろうじてスポーツ紙が一部触れたが、小さな扱いだった。

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後から知ったのだが2014年の最初の議論は、12球団の猛反対で全く議論が進まなかったのだという。
要するにマーケットを奪われることを恐れたのだろう。
讀賣新聞や中日新聞は、球団と一心同体だから、この話を立ち消えにさせようとした。
他の新聞社は義理はなさそうだが、出入り禁止になるのを恐れて、報道しなかったのだと思われる。

NPBの経営者たちの頭は1949年時点から全く進化していないことが、これで明らかになった。

1リーグだった1949年、短期間コミッショナーになった正力松太郎は、将来的な話としてMLB同様2リーグにする構想を打ち上げた。
しかし既存の8球団は「市場、客を奪われる」と猛反対した。
当時、正力は公職追放の身分で、讀賣新聞の経営から一歩引いた立場だったが、膝下のはずの讀賣新聞からも猛反対の声が上がった。旗振りは副社長の安田庄司だったと言われるが、讀賣新聞は激しい反対の論陣を張った。
終戦直後の疲弊した日本で、これ以上球団が増えると経営が立ちいかなくなり、共倒れする、と主張した。

しかし当時、毎日新聞を筆頭に球団創設をもくろむ企業は非常に多く、なし崩し的に2リーグ分立となった。
その結果は周知のとおり。
8球団合わせて200万人程度だった入場者数は10年で1000万人を超し、今や2400万人である。
2リーグ分立がなければ、プロ野球はマイナースポーツのままだったはずだ。

Jリーグは創設時358万人だったが、今季、史上最多の917万人になった。これは10球団から53球団へ、エクスパンションがあったからだ。
球団数が多すぎる。シェアを奪い合っている。採算割れの球団が多いという批判はあるが、エクスパンションがなければ、プロ野球に次ぐ観客動員はあり得なかった。
Jリーグは「おらがチームをどうしてくれる」という偏狭な意見をものともせずに、拡張を続けているのだ。

MLBは1960年までは16球団だったが、61年に18球団、62年に20球団、69年に24球団、77年に26球団、93年に28球団、98年に30球団とエクスパンションを続け、観客動員は1990万人から6700万人に増えた。
MLBの拡張に際して半世紀前までは抵抗するオーナーもいたようだが、今はそんな馬鹿な意見が声高に叫ばれることはない。

球団数の増加は、市場の拡大と直結する。これまで球団がなかった地域にプロ野球チームができると、その地を核として市場ができるのだ。

NPBはフランチャイズの概念があやふやだ。自分の地域ではなくとも隣接する地域に球団が来れば、客を取られると思っているのだ。
プロ野球球団は今、球場に客を呼ぶことに汲々としている。一人でも多くの人に、1回でも多く来てほしい。その努力には頭が下がるが、それには限界がある。
未開の地に市場を広げ、顧客の背景にいる分母、絶対数を増やさなければ将来はないのだ。

それに、球団が増えれば対戦カードが増える。コンテンツが充実し、お客の関心も高まるのだ。

NPBは一つのビジネスモデルで生きている運命共同体だ。全体のマーケットを広げなければ、超高齢化の中、球団は早晩立ち枯れする。

もちろん、自民党の言う16球団が正解とは思わない。経営的に検討しなければならないことはたくさんあるだろう。
しかし、エクスパンションの議論を広げていくことは、野球の将来を考えるうえで非常に重要だ。

NPBの経営陣は、ほんの10年前に1リーグ10球団にする案が通りかけたようなレベルである。経営者の暗愚はどうしようもない。
干上がりつつある潮だまりの魚の数を数えるだけしかせず、大海を見ない愚をいまだに続けている。

そのご機嫌を取ることでおまんまを食べている幇間ジャーナリズムが、何も言わないのも仕方がないかもしれない。彼らは今や「かくあるべき」で記事を書いていない。それにしてもマーケティングも、世の中の仕組みも知らず、新聞記者でございとは、笑わせる。

NPBの将来、市場拡大、国際化を考える議論は、いつになったら本格化するのだろうか。
いつになったらプロ野球に本当にビジネスマンが現れるのだろうか?


1951年江藤正、全登板成績【最多勝でパ・リーグ初優勝に貢献】

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