マイナーな漫画を取り上げることをお許しいただきたい。
1966年から71年まで「少年マガジン」で「巨人の星」が連載されている時期と重なって、梶原一騎はもう一つの野球漫画を「月刊少年画報」で連載していた。
「少年画報」は週刊もあり、「少年サンデー」「少年マガジン」とともに有力な少年漫画誌だったが次第に衰退し、姉妹誌だった「少年キング」と合併した。

私にとってはこの漫画が「野球漫画入門」になった。

「甲子園の土」は1968年の1月から1969年12月まで連載された。「巨人の星」同様、一人の野球少年が高校野球からプロ野球へと進む成長の過程を描いている。

画は一峰大二。川崎のぼると同じ1935年生まれ(長嶋、野村世代)。
一峰と言えば「ウルトラセブン」の漫画で私たちの世代にはおなじみだが、この時期、手広く漫画を描いていた。
しかし、一峰も野球は得意ではなかったようで、川崎のぼる以上に絵は下手である。

主人公の沢村健治は、幼くして両親を事故で失い、叔父叔母に引き取られている。「もぐら横丁」という再貧困のスラムに暮らし、チンピラを相手に喧嘩三昧の日々。

この澤村が甲子園のグランドキーパーの老人と孫娘に出会い、野球に目覚めていく様を描いている。

同じく梶原一騎原作の「あしたのジョー」は「甲子園の土」とまったく同じ1968年1月に「週刊少年マガジン」で連載がスタートした。

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沢村健治の境遇は矢吹ジョーとよく似ている。沢村のおじで、のちに支援者となる男は、ジョーのトレーナーの丹下段平にそっくりだ。
梶原一騎は「巨人の星」も含め、似たようなシチュエーションの漫画の原作をいくつも抱えていたのだ。
混線しなかったかと思う。

ただ、そこから見えてくるのは「野球」「ボクシング」などのスポーツが、貧困から脱出知る手段だったころの世相だ。

梶原の漫画には、暴力がふんだんに出てくる。また酒や女など欲望も包み隠さず描いている。
子どもたちに、世の中の現実を見せたい、という梶原の強い熱意を感じる。

梶原はスポーツ根性もの=スポ根の開祖だ。
どの漫画でも、とにかくハードワークが選手を強くすることが執拗に描かれている。
ほいちょいプロダクションが
「梶原は重たいものをぶら下げれば、その部位が鍛えられると信じている」と揶揄した通りだ。

「甲子園の土」は、主人公やチームがとにかくいじめられ、逆境に立たされる。
試合は必ず流血になる。
そのすさまじさが一峰のプリミティブな画で余計に増幅されている。
梶原一騎の原点ともいうべき漫画だ。

ほとんどの人が読んでいないと思うので、以下のブログでストーリーを紹介する。


長嶋茂雄安打あれこれ

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