「甲子園の土」は、講談社などのメジャーな出版社ではなく、マンガショップという会社からの復刻版だ。3巻にまとめられているので、その巻割に従って紹介する。
上巻

1968年、甲子園の近所にある「もぐら横丁」は、貧困者たちが住むスラム街だった。
ここに住む少年沢村健治は、やくざやチンピラとのけんかに明け暮れる不良少年だった。
家は、おじとおばとの3人家族。
家はクリーニング屋だったが小学校5年の時に、両親は居眠り運転のトラックに轢かれて即死。父は健治をかばってトラックに轢かれたのだ。
以後、おじ夫婦に引き取られたが、おじは焼酎を飲んで働かず、おばの内職で一家は支えられていた。

ある日、甲子園の前を通りかかった健治は、甲子園で勝った港高校のナインにいいがかりをつける。そして、選手にボールを投げつける。それは見たこともない剛速球だった。
しかしそれを見事にバットに当てた選手がいた。大会屈指の打者と言われる紅光一だ。

このやりとりを老人と孫娘が見ていた。
老人は甲子園のグランドキーパーだった。
突如、甲子園に雨が降り出す。しかし用具係が帰ったためにシートが出せない。大会が運営できなくなると大変と、老人と娘は自宅アパートに帰り、畳や布団を持ち出して、甲子園のマウンドにかぶせてこれを守る。

孫娘ユカの父、老人の息子は高校野球の監督だったが、病気のため甲子園出場を目前に死亡。以来老人と孫娘は二人で甲子園を守っていたのだ。

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ユカの話に感動した沢村健治は野球に興味を持ち、港高校にやってきて紅光一に再度勝負を挑む。
しかし紅は沢村の球を見事に本塁打する。

沢村は高校の学資を稼ぐために新聞配達のアルバイトをする。
まじめに働いて十万円の資金がたまったが、おじがこれを勝手に引き出して酒に変えてしまっていた。
健治は、これを知っておじを殴り、甲子園ににやってきてマウンドで号泣する。

しかしグランドキーパーの老人は「甲子園の土を涙でぬらす権利があるのは高校球児だけだ」と叱りつける。

沢村健治は強豪校である竜門高校にやってきて、剛腕を見せる。キャプテンで4番打者の不動は、沢村を学費免除で入学させる。
学費免除のため「タダ」とあだ名された健治だが、キャプテン不動が課した猛練習に見事耐えて背番号14のユニフォームをもらう。

港高校と竜門高校の練習試合、好打者紅と沢村、不動は流血の勝負を繰り広げ1-1で引き分ける。

いよいよ甲子園に向けて猛練習が始まるが、竜門高校の校長、PTA会長が監督を連れてくる。ノンプロ出身だが悪い噂のある小杉だ。
小杉はPTA会長の息子の今野安彦をエースにする。
甲子園の予選、今野が先発するが失点する。不動は、試合中、応援席のPTA会長に直談判して沢村を投げさせる。
安彦はわざと素振りをして健治の肩にバットをぶつける。
健治は痛みを押してマウンドに上がり、9回まで投げ切り3-1で勝利する。

それをスタンドで見ていた黒人との混血児、サンダー三木は沢村と紅に「甲子園で会おう」と挑戦状をたたきつけた。

■こうして書いてみると歌舞伎の芝居のようだ。主人公は徹底的に貧しく、みじめだ。悪役は徹底的に悪い。
甲子園のグランドキーパーが老人と少女だけというのもあり得ない。例によって取材も何もせず原作を書いていたのだろう。
同時期、「巨人の星」は大リーグボールで人気になっていたが、梶原一騎は別の雑誌では一時代以上前のような漫画を作っていたのだ。


長嶋茂雄安打あれこれ

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