前週に続く集中連載第2弾、ページの位置はぐっと後ろに下がった。



清原の西武入団の経緯を類推を交えながら紹介している。
巷間、王貞治監督が土壇場で「桑田をほしい」と言ったとされるが、ことはそれほど簡単ではなかった。
巨人は桑田、清原を2枚ともとるつもりでいた。清原を1位、桑田は「早稲田進学」で突っ張らせておいて、他球団にあきらめさせた挙句に2位で指名する。
巨人ならやりかねないと思うが、この企みを西武の根本陸夫球団管理部長がかぎつけて、清原を1位で強行指名するとの噂がながれた。事実そうなったのだが、巨人はKKをどちらも取れなくなることを恐れ、土壇場で桑田1位指名に切り替えたのだという。

ただ桑田が早大関係者に「巨人1位指名だったら行くつもりだったが、2位だったら辞退するつもりだった」と語っているのが腑に落ちない。
単なる言い訳だったのだろうか、巨人と桑田に事前の申し合わせがなかったのだろうか。

しかし、そのことで清原は後々までも桑田にわだかまりを抱いていたようだ。巨人入団後は仲良くしているシーンも見られたが、そうではなかったのだろうか。

プロ入り時に何らかのトラブルを経験する選手は結構多い。しかし、プロに入って数年するとそのときのわだかまりは大抵消えるものだ。
プロ入り前に描いていたプロ生活と、実際のそれとは大きく違っていただろうし、モノの見方も変わってくる。
入団時にこだわっていたことが、さして意味がなかったことに気が付くことも多いのではないか。
清原も西武ライオンズに入ったからこそ、高卒1年目からチャンスを与えられ、打てなくても使い続けられ球界を代表するスラッガーに成長したのだ。
指名してくれた西武に感謝することこそあれ、恨みに思ったり、昔の確執を根に持ったりすることは普通、考えられない。

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本当にそうだとすれば、清原は高校卒業時から精神的にほとんど成長しなかったのだということになろう。
確かに後追い報道で聞こえてくる清原の行状は、本当に成人男性かと思えるようなものも多い。
乙武洋匡氏を呼びつけて「自分の体のことを考えて『ウワー』って考えたりすることないの」と聞いたという話、乙武氏の本人談だから、本当だろうが、不躾とか失礼とかを通り越して、不気味である。

そうした人間的な未成熟が西武ライオンズでの特別待遇によるものだったとすれば、確かに西武に入ったことは不幸だったともいえよう。



清原は堤義明オーナーにかわいがられたようだが、猪瀬直樹や、堤義明の異母兄の堤清二の本を読むと、この人物は異様な家庭で育ったことがわかる。今でいえば金正恩にも比べられるような育てられ方をしたのであり、およそ人を指導したり、育成したりすることはできないと思われる。
何しろ、堤義明にお茶を運ぶ女性社員は、カーペットに手をついて、深々とお辞儀をしなければならなかったというのだから。



清原は玩具のようにかわいがられたのだろう。
ただし、堤義明にかわいがられたものが、すべてそのようになったわけではない。もっと聡明な人間もたくさんいた。

連載の後半は石毛宏典のインタビュー。
ダルビッシュ有のツイッターでのコメントを例に引いて再起してほしいと言っている。
例によって、信じられない、西武時代からやっていたとは思わない。なかったと信じたい。である。
前号の伊原春樹同様、巨人に行ってから不良化したのではないかと言っている。
西武サイドの人間からするとそうなるのか。
巨人時代の同僚がどのように言うか興味深い。
西武と巨人の同僚の論争があってもよい。

清原の野球選手としての成長の足跡が紹介されている。それも大事だろうが、19歳でプロに入っていきなり成功した清原が、どのあたりから変質していったのか、その原因、背景は何だったのか、大胆に切り込んでほしいと思う。
期待して待ちたい。

松中信彦本塁打全史


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