来年の今頃は、WBCで盛り上がっているはずである。侍ジャパンは1年前の今から着々と準備をしている。

チーム体制を強化するだけでなく、ビジネスとしても収益性を高めようとしている。
侍ジャパンを運営するNPBエンタープライズが設立されてから、NPB各球団がNPBに支払う会費は減額されている。NPBエンタープライズに一部回されているが、球団のNPB系列への負担は減っている。NPBが独自に金を稼げ、と言われているのだ。

プレミア12では日本は優勝できなかったが、予想以上の注目が集まり、試合の視聴率も上がったため、NPBにも1.4億円の収益をまわすことができたようだ。これは誠に喜ばしい。

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こういう形で日本はWBCへ向けて体制を整えている。
しかし、世界はそうではない。
台湾も国際大会のたびに野球人気が盛り上がるから、気合を入れて準備してくるだろう。
韓国は野球が五輪スポーツでなくなって、兵役免除の対象外になったことで一時期に比べ熱が冷めた感があるが、日本憎しもあってそれなりに準備はしてくるだろう。

野球発展途上国であるヨーロッパやオセアニア、他のアジア諸国は、まだ国内での認知度が低いが、少なくとも担当者レベルはやる気満々だ。それなりに準備をしてくるだろう。

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問題はアメリカ大陸だ。

MLBは言い出しっぺのバド・セリグコミッショナーが退任した。
一流のビジネスマンとして、MLB各球団オーナーの信頼が厚かったセリグコミッショナーの在任期間でさえも、MLBはフルメンバーを組むことはなかった。
いやいやながらお付き合いで選手を派遣してきた。
サッカーのワールドカップでいえば、コンチネンタルカップに当たるプレミア12には、MLB選手を一切出さず、若手もほとんど出さず、盛りが過ぎたノンブランドのマイナー選手でお茶を濁したくらいだ。

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MLBのオーナーとて、世界戦略が必要なことくらいは理解している。
しかし年俸が高騰し、巨額の投資物件となっている選手を、リスクいっぱいの国際大会に派遣することなどとんでもない、という気になっている。
彼らの巨額投資は、162試合のペナントレースで最高のパフォーマンスを発揮してもらうためのものであり、見返りのないその他のゲームでのプレーは想定外なのだ。
新たにコミッショナーになったロブ・マンフレッドは、ロンドンでのMLB公式戦を画策するなどセリグの考えを受け継ぎ、国際化に積極的だが、MLBオーナーたちを説得するのは厳しいだろう。

ドミニカ共和国、ベネズエラ、プエルトリコなどカリブ諸国は、MLBのビジネスモデルに取り込まれている。いずれキューバもそうなるだろうが、WBCでは、相応の顔ぶれをそろえてくる(この部分習性)。
カナダはもともとあまりやる気がない。

結局のところ、本当の意味での「世界一決定戦」は、2017年のWBCでも見られることはない。
マイク・トラウトやゴールドシュミットやスタントンや、アリエッタやキンブレルなど大型契約をした選手が出身国を背負って全力でプレーする姿は見られそうにない。

日本、ドミニカ共和国など「本気」の国と、お付き合いの国、選手個々だけが張り切っている国、そして野球後進国が集まって、名目だけの「世界一」を争うことになるだろう。

日本人の多くもそのことには気づいているが、最近の日本人は刹那的だ。名目だけにせよ「景気のいい話」に酔いしれたいという人が多い。だから日本がやる気のないアメリカに勝てば大喜びする。そういうシーンがまたみられることだろう。

私が恐れるのは、こうした同じパターンが続くうちに、アメリカあたりが「もうやめよう」と言わないかということだ。
WBCの収益の大部分はMLB関連に入っている。ビジネス的には成立しているが、MLB球団のオーナーにとってはメリットはほとんどない。
「いつまでこんな茶番を続けるのだ」という声が上がらないか、気になるところだ。

WBCを本当の「世界一決定戦」にするには、MLB、NPBなどのペナントレースを削減するなり、スケジュールを前倒しにするなり、抜本的な改革が必要だ。
やり続けるのなら、いずれそういう荒療治が必要になるだろう。


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