すでに何度も述べている話であり、読者各位にもその懸念を示す人が多い。野球賭博や清原の事件は、今の野球界ではなく、将来の「野球」に深刻な影響を与えるのだ。
昨日までの3日間で、プロ野球は575292人の観客を集めた。セ・パともに満員の盛況であり、プロ野球人気は衰えていない。
センバツ高校野球も多くの観客を集めている。

今、プロ野球を観戦している人は、多くが子供の頃から野球を見て育った層だ。競技経験のある人も多いし、経験がなくとも「野球文化」が、体の隅々にまでしみついている。
スポーツと言えば野球であり、努力をしなくても試合経過が頭に入ってくるくらい、野球になじんでいる。

私もその一人だが、こういう人たちは、もう「野球を選択」してしまっている。
年齢で言えば40代半ば以上ということになろうか。
野球界でおかしなことがたくさん起こっても、それに違和感を持っても、怒っても、野球そのものを捨てることはできない。
せいぜい、プロ野球を見に行く回数を減らすとか、「週べ」を買わないとか、スポーツ紙を見ないとか、消極的な「拒否」の意向を示す程度だ。多くは「サッカーが身についていない」から、サッカーに走ることもあまりない。

野球観戦に詰めかけている人は、そういう人たちだ。彼らを見ていると、少々変なことが起こっても、野球は安泰だと思える。

野球の支持率は40代以上の男子では50%を超えるだろう。2位はサッカーだろうが、20%いくかどうか。60代以上なら1位野球で60%、2位はゴルフか相撲ではないだろうか。

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しかし20年前から事情は大きく変わったのだ。
1993年にJリーグが発足して、日本のプロスポーツ界のシェアは大きく動いた。この時期に十代を迎えていた層以降は、プロスポーツと言えば「野球かサッカー」になった。
プロ野球がなかった地域ではサッカーの方が優位になった。
1998年以降、ワールドカップに日本が出場するたびにサッカーが好きな子供の比率は増えていった。
この間、NPBは人気を維持、MLB人気もあったが、これに反応したのは30代以上の世代が多かった。
2009年には、10代の男子が行ったスポーツはサッカーが40.6%、野球は36.7%に。
2013年にはサッカー45.4%、野球25.8%、そして2015年にはサッカー44.0%、バスケットボール27.3%、野球23.0%になっているのだ。

この層にとって野球は「知らないスポーツ」になっている。
サッカーが組織的に子どもたちをサッカー教室に勧誘し、地域に密着して指導を行っているのに対し、野球は近所の野球経験者が自己流の指導を行っているのみ。
組織力でも、指導の体系化でもお話にならないほどの差がついている。

そういう状況下で、野球界は「やくざが野球をしているのか」と疑わせるような不祥事を連発しているのだ。子どもたちも、その親も、「野球は品が悪い」「教育上良くない」との思いを強くするはずだ。
今回の事件は、今の「野球離れ」に拍車をかける。

あと10年経てば、スポーツ観戦の主力は「野球を選択した層」ではなく「サッカーを選択した層」になる。
以後は、地滑り的にサッカー、さらにはバスケットボールのファン層が増える。
野球の観客動員は、間違いなく減少する。不可避だ。

すでに10年後までの勝負はもうついている。
サッカー文化が染みついた若者世代を、野球に転宗させることは不可能である。
今の栄華は数年先には終わる。

「野球は今まで繁栄しすぎた。サッカーと共存するくらいがちょうどいい」という見方もあろうが、今の目減りの仕方はそんなソフトランディングでは済まないことを意味している。横這いではなく下がり続けているのだから。一気にマイナースポーツ化する可能性が高い。

私は今からソフトランディングすることを考えるべきだと言っている。サッカーに勝つことは想定していない。

野球界は15年先、さらにその先も見越して「野球の改革」を考える時期に来ているのだ。
そのことが分かっているのか。



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