何度かデータを紹介してきたが、今後10年、野球が不可避的に衰退するということを改めて説明しておく。

1)少年野球人口の減少

高知新聞の連載コラムで明らかになったが、高知県内の少年野球(小学生、軟式)の選手数は、2010年に1650人だったが、2015年には1080人に激減している。減少率は35%だ。高知新聞に問い合わせたところ、2016年は辛うじて1000人割れは食い止めたようだ。
今調べているが、これは、高知だけでなく全国でおこっている現象だ。全都道府県でほとんど例外はない(沖縄県が例外かもしれない)。

さらに、中体連の発表によると野球部(中学生、軟式)の部員数は、2009年に291,015人だったが、2014年には202,488人に減少している。減少率は30%だ。

これを少子化で説明することはできない。母数が違うので単純な比較はできないが、日本の15歳以下の人口は2010年に1752万人、2015年には1648万人。減少率は6%だ。オーダーが違う。
少子化とは別の理由で、中学、小学校の少年野球人口は激減している。

一方で、中学の硬式野球の選手数はそこまで減少していない。
一部の強豪ボーイズやリトルシニアは選手数が増えている。
先日、明徳義塾の馬淵監督に話を聞いたが、馬淵氏は「うちは全国から生徒が来るので応募者数は変わっていない。断るのに苦労する」と言った。つまり「野球エリート」の志望者は減っていない。
しかしながらボーイズ、リトルシニアなどの少年硬式野球の競技人口も増えてはいない。

ライトな競技者は激減しているが、コアな競技者は減っていないということだ。

2)十代野球愛好者の激減

笹川財団の調査によれば、十代の男子が過去1年に行ったスポーツランキングでは、
2009年はサッカーが40.6%、野球が36.7%だったが、2015年にはサッカーが44.0%、バスケットボール27.3%、野球は23.0%で3位に転落している。
この「スポーツ」のランキングにはキャッチボールと言う項目が別に立てられていて2009年には17.8%あったが、2015年は圏外に落ちている。仮に10%積み増しできるとしても、2015年の野球+キャッチボールは33%、2009年の54.5%から激減している。

男子小学生の「なりたい職業」については、さまざまな調査結果が出ているので、一概には言えないが、2010年は、1位はほぼ野球選手、2位がサッカー選手だったが、今ではすべての調査結果が1位または2位がサッカー選手となっており、野球がサッカーの上に来ている調査結果はほとんどない。

こうしたデータからもわかるように、ここ5~6年の間に、何か異変が起こって、野球人気が急落しているのだ。
もともと野球はじり貧ではあったが、それに拍車がかかったのだ。

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原因についての詮索は他日とするが、このために、小、中学校での野球人気、野球認知度は極端に落ち込んでいる。

NHKの「ようこそ先輩」という番組で、宮本慎也が母校の吹田市立藤白台小学校を訪れたときに、子どもたちの大半が野球についてほとんど知らないことに驚愕していた。

私は毎朝、近所の小学校の校庭を犬を連れて散歩するが、小学生が野球風の遊びをしているのを見たことがない。昔はゴムボールを手や木切れで打っていたものだが。

先日、埼玉県に数日いた。休日にあちこち歩いたが、空き地やグランドで子供たちがやっていたのはすべてサッカーだった。

2010年時点で15歳だった子供は、昨年、成人式を迎えている。これからこうした「野球を知らない世代」の可処分所得が増えて、消費の担い手になる時代がやってくる。

同時に、今、野球を愛好する世代は、年を取って、徐々に消費が減っていく。
特に65歳になって年金生活に入ると、消費は減少する。中には貯蓄や退職金などでふところが潤った高齢者もいるが、高齢者は消費の主役ではなくなる。

こうした現象が進めば、野球関係の消費は不可避的に下落する。野球界は衰退する。

今、野球が多数の観客を集めているのは「野球ファンが増えている」からではない。
球団が極限までマーケティングを推し進め、ファンのリピーター率を押し上げているからだ。
ネットでいえば、少ないユニークユーザーで、ページビューを稼ぐような政策を徹底的に行っているのだ。

私は何度も、この仮説以外の可能性を考えた。
例えば、

・十代で野球を知らなかった少年たちが、成人してから野球ファンになる可能性

・競技としての野球には興味はないが、「見る野球」のファンが増える可能性

どれも「なくはない」と言う程度。説得力はない。

確かに野球はルールが複雑だ。少年野球の指導者は「野球は9歳から」と言っている。

しかし、昔は、それ以前の子供はルールはよく知らなくても、家族と野球を見たり、野球の話をする環境に育っていた。野球と親和性があったのだ。
今の家庭からは、そうした「野球の気配」が消えている。
9歳になっても、野球をするようなモチベーション、シチュエーションはもはやない。

こういう趨勢が決定的になっている中、野球賭博や覚せい剤の問題は、野球の未来に深刻な影を落とすと考えている。


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