私は野球を見るときは、バックネット裏か、せいぜい一塁、三塁の後ろくらいから見ることが多かった。あまり遠い席からは、試合の様子が良くわからないからだ。
しかし、最近思うところあって、甲子園のアルプス席によく行っている。それもビジターの三塁側だ。
昔は三塁側はガラガラだったが、今は三塁側でもほぼいっぱいになる。
ヤクルトや中日、DeNAは三塁側でも阪神ファンが多くて、ビジターのファンは4割と言うところだ。

巨人戦はまだ行っていないが、広島はほぼ五分か。かなり赤の含有率が高い。

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昨年に比べて10%近く増えているNPBの観客は、どういう層なのか知りたくて、そういうお客の中に混ざって野球を見ているのだ。

他の試合はそうでもなかったが、広島戦は、赤と黄色のユニフォームを着た観客が仲良く隣り合って座っていることが多い。
広島ファンと阪神ファンが、一緒に観戦に来ているのだ。カップルで色が違うのもよく見る。

で、両軍の応援のときは、どっちも応援したりする。カンカンになって味方を応援するのではなく、相手のチームの応援歌も歌ったりしている。

後ろは教育大の学生のグループ5~6人。赤と黄が半々ずつだ。
阪神金本のユニフォームを着た兄ちゃんがなかなか面白かった。
新井貴浩が登場すると、
応援歌
赤い心見せ 広島を燃やせ 空を打ち抜く 大アーチ
をパロッて
名前は新井 打撃も荒い 眠気を覚ます 大ファウル
と、うまいことを言っている。すると周囲の赤いファンもやんやと拍手をするのだ。
和気あいあいとしている。

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この男は、なかなか芝居気のあるやつで、
赤いユニフォームのちょっとかわいいお姉さんに、いきなり
「お姉さん、この試合で広島が勝ったら、僕、結婚申し込みますけど、受けてくれますか」
とかやってる。また大うけである。

それでいて、この男は「高山今日2本目や、両方とも内野安打やけど」とか「もう8人目やでピッチャー」とか、試合展開をしっかり覚えているのだ。
ひょっとして大した奴ではないかと思った。

黒田博樹の登板に声援し、鳥谷がゴロを処理したと言っては騒ぐ。

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それと酒がどんどん売れるのにも驚いた。私は甘い酒が嫌いだが、そういうの、何とかハイとかいうのがどんどん売れるのだ。
古い言い方だが、メートルが上がるというやつだ。女性客もかなり飲んでいる。
赤と黄のユニフォームが、そこらじゅうで「宴会の一団」のようになっている。

本当に楽しそうだ。

左翼席には、真っ赤な軍団がいて、例によって応援歌を整然と歌っているが、その周辺のお客はわいわい騒いでいる。

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阪神ファンの多くは、昔から来ているような感じだ。桧山とか赤星とか、桜井広大とか引退した選手のユニフォームを着ている人が多い。大阪タイガースの「O」の帽子をかぶった人までいる。
しかし広島ファンは、黒田、マエケン、新井が多い。新参のファンが多いようだ。

7回になると表に赤い風船、裏に黄色い風船が、同じくらい飛ぶ、

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ざっくりした印象だが、今のファンは、野球そのものよりも「野球で騒ぐ」楽しみを目的に来ている。
ほぼ満員で、いろんなアトラクションがあるという「環境装置」を楽しみに来ている。
野球は割とちゃんと見ているが、カンカンになって応援はしていない。

球団のマーケティングが功を奏してお客が増えているのは事実だろうが、非日常の空間で万余の人と一緒に思い切り声を上げたり、騒いだりするのが楽しくてやってきているように思える。
「満員のお客」が、さらにお客を呼んでいるということか。

昔のパ・リーグや、今の独立リーグにやってきているファンのような一途さは感じないが、これはこれで楽しいと思った。
ただ、お客が減り始めると、こういう空気は失われる。マイナー・スポーツ化したとたん、この手のファンは突然、消えてなくなるのではないかと思った。

例によって私はスコアブックをつけていたが、完全に浮いていた。人々が私と目線をあわせせない。
こういう席では、私の方が「わがまま者」になったように感じた。

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1976年池谷公二郎、全登板成績【3年目の20勝&最多勝獲得】


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