いささか揶揄的な言辞を弄したけれども、ピート・ローズがイチローに対して発した言葉は、正しい。何ら問題はない。
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ローズ自身がアウトローになってしまったから、あまりまともに受け止められていないが、ピート・ローズこそがMLBで一番安打を打った選手であり、その価値はいささかも揺るがない。

イチローの日米通算は、どこの公式サイトにも載っていない。世界記録でもなんでもない。ギネスブックに載る可能性はあるが、それによって野球界で公認されたわけではない。

ギネスブックは玉石混交であり、暇つぶしの本である。
日本人は町おこしと称して長い巻きずしや、でかい饅頭などをちょこちょこっと作って、ギネスに認定してもらって大喜びするのが大好きだが、そういうくだらない自己満足と同列に扱われたからと言って、何ら価値が証明されたわけではない。

何度もこの例を出しているが、タイガー・ウッズの記者会見で、日本のアナが当時駆け出しのぺーぺーだった石川遼について質問をしたことがある。他の国のメディアの顰蹙を買ったが、かのアナウンサー氏は全く平気だった。

どんな大舞台に行っても、「自分の国の人にしか興味がない」のは、田舎者だ。
その舞台、そのジャンル全体をしっかり理解しようとせず、「で、日本人はどうなの」しか聞かないのは、恥ずかしい態度だ。
もちろん、同胞が異国で活躍するのを見るのは喜ばしいが、同胞以外の競技者、そのジャンルへの理解が深まってこそ、同胞が成し遂げたことの値打も分かるというものだ。

日本のメディアは「アメリカも大騒ぎ」と書き立てているが、大したことはない。それこそ「ギネスブック」程度の興味で「ほおー」と言っているだけだ。

日米通算をアメリカでも報じるようになったのは、イチローがそのうちの大半をMLBで記録したからだ。
「MLBでこれくらいやるのだから、もっと早くからやっていればそれくらいは打ったかもしれないねえ」と思い始めたのだ。別にNPBの実力を認めたからではない。

イチローについて、本当にアメリカの人が褒めたたえるのは、3000本を打った時だ(すでに十分リスペクトしているが)。
長いMLBの歴史で29人しか記録していない大記録。
それを27歳から始めて突破しようとしている異能に、人々は惜しみない称賛の声を送るはずだ。

この偉大な選手たちの列に加わるのだ。

3000Hits


MLB3000本安打に比べれば、日米通算最多安打など、グリコのおまけ程の価値しかない。

イチローがローズに対して発言をしないのは当然だ。

言葉は乱暴だが、ローズはイチローを「殿堂入りする」と認めている。MLBで最も多くの安打を打った大打者にその言葉をもらってイチローは「以て瞑すべし」と言う心境だろう。
それも含めてローズの言っていることは間違っていないのだから、反論などするはずがない。

「日本人にしか興味がない」日本のメディアは、日本人MLB選手にとって、悩みの種だったはずだ。
まわりに気配りもせず日本人選手だけを追いかけまわす日本メディアは、他の選手の反発の種にもなりかねない。
無遠慮な田舎者の親せきが、いきなり職場にやってきたような心境だっただろう。恥ずかしかったと思う。
もちろん、日本に活躍の報を伝えてくれるのはありがたいが、イチローなどは「彼らはいつになったら成熟するのだろう」と思っていたと思う。

くりかえすが、同じ国の人だからと言って、物事を精査することなく、何でもかんでも応援するのは恥ずかしい態度だ。
中身も分からず、いつでもどんな状況でも日本人選手の味方をするような日本人は、実はその選手のファンではない。日本人である「自分」が好きなだけだ。

イチローがこれから打つ1安打は、何でもない安打だ。この騒動は、とっととおしまいにしよう。


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