当サイトには、「甲子園がこんなに満員なのに」「プロ野球はチケットが取れないほど大人気なのに」なぜ、野球の危機なのだ、というコメントをいただく。


確かに高校野球も、プロ野球も人気の絶頂のように思える。
甲子園は、この夏も札止めが出るような盛況だった。「熱闘甲子園」は人気番組だし、高校球児を取り上げた雑誌もたくさん出ている。
プロ野球は今季、昨年の2423万人を上回る2498万人を記録。2011年は2157万人だから、5年間で15.8%もお客が増えた。実数で観客動員をカウントし始めてから最多を記録した。

実はいま、日本人の消費行動には大きな変化が始まっている。例えば音楽業界は、これまでCDの売り上げが収益源だったが、ネットの普及とともにCDなどソフトの売り上げは激減している。
それに代わって、コンサートやライブが主たる収益源になっている。アイドルグループは会員制のファンクラブをベースとして、チケットを先行予約で販売している。そして大型会場でのライブを頻繁に開催している。会場はかならず満員だ。
これまで、都市圏を除く日本人は、あまりイベントに行く習慣はなかったが、最近は地方公演が頻繁に行われるようになり、ライブに出かけることが多くなった。
テレビで本格的な音楽番組が放送されなくなったことも大きいだろう。ライブではテレビでは見ることができない曲やパフォーマンスも演じられるし、ファンクラブは、アイドルとのパーソナルな関係性も作ったりしている。
テレビをショーウインドーにして、ライブという商品を買う人が増えたのだ。

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おそらく、野球人気も同じである。
これまでテレビが主たる情報源だった野球ファンは、ネットの普及とともに、球団や選手とダイレクトな関係性が生じ、球場に行くようになったのだ。
球場側のマーケティングも極めて高いレベルになり、今ではファン一人一人の誕生日をフォローしたり、ひいきの選手のメッセージが携帯に届くようになったりしている。
今の盛況は、日本人が「ライブに行くことの楽しさに目覚めた」ことと大いに関係があると思う。

しかし、ファンを惹きつける表面的なマーケティングには、限界がある。手を変え品を変え興味を持たせる工夫をしているが、いつかネタ切れするときがくる。
今年、ソフトバンク・ホークスの観客動員は249.3万人、昨年の253.6万人から減少した。ここまでNPBの新しいビジネスモデルをリードしてきたソフトバンクの頭打ちは、マーケティング疲れによるものと思われる。
私は表面的な「客寄せ」も大事だとは思うが、野球そのものの訴求にもっと力を入れなければ、これ以上の成長はないだろうと思っている。
ダイエー・ホークスの高塚猛元社長は、「野球場で、野球を一生懸命見ている客などいない」と看破し、球場の客席を宴会場またはお祭り広場のようにして新たな客を呼び込んだ。
それは大事な一歩だったと思うが、時代は次の段階にさしかかっている。間もなく踊り場がやってくる。

「野球の本質的な面白さ」を訴求すべき時だと思うのだ。



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