昨日のワールドシリーズ最終戦は「ルーズベルトゲーム」になったが、いい試合だった。

連投すれば球速が落ちるアロリディス・チャプマンが、8回裏にラジャイ・デービスに同点本塁打を打たれた。インディアンス、フランコーナー監督は前日、「負けたけど彼に20球も投げさせたのは収穫だった」といったが、それはあながち強がりではなかったのだ。

9回、代走のクリス・コグランが二塁手にタックルを仕掛ける。危険行為にはならなかったが、岩村明憲のことが思い出される。「お前はまだこんなことやっとんのか!」といいたくなった。

雨を挟んでの延長戦で、ベン・ゾブリストが決勝のタイムリー。裏、インディアンスは1点差まで食い下がったが、シーズン前から最強の評判が高かったカブスの優勝で幕を下ろした。

しかし、ここに書いた顔ぶれ、みんなどこか別のチームで見た顔ばかりだ。MLBの流動性の高さを感じざるを得ない。

カブスベンチの川﨑宗則の顔も時折映った。かれはおもちゃの眼鏡のようなものを顔に貼り付けて、声援を送っていた。ロースターには入っていないから、グランドに出ることはないが、カブスの一員として屈託のない笑顔を見せていた。
試合後日本の記者に「ここまで連れてきてもらってよかった」というコメントをしている。

正直言って、これは切ない。川﨑は、いい年をしてマスコットをするような選手ではない。彼はNPBを代表する内野手だったのだ。

キャリアSTATS

M-Kawasaki


2012年イチローのあとを追いかけて、シアトル・マリナーズに押し掛け入団。マイナー契約だったが、実績を上げて開幕からMLBに残った。

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以後、規定打席に達することはなかったが、それなりの数字を上げてきた。
日本の内野手としては、珍しいことに、彼は守備でもたつくことがなかった。彼が一番長くいたトロント・ブルージェイズの本拠地ロジャースセンターが人工芝だったことも大きかったかもしれないが、本業の遊撃手でも、二塁手でも、俊敏な動きを見せた。またムードメーカーとしても人気を博するようになった。

貧打はどうしようもなかったので、毎年マイナースタートになり、シーズン中もマイナー落ちを繰り返したが、そのたびに復帰して元気な姿を見せた。

張本勲は「何やってんだ、ボールボーイじゃないか、帰ってきた方がいい」と言った。張本は「NPBの方がMLBよりも上」という、全く根拠のない妄説を広めている。MLBで必死に武者修行をしている川﨑にたいして失礼だと思っていたが、ことここに及んで、張本とは違う視点から「もう帰ってきた方がいい」と思う。

川﨑の守備がMLBで通用する、少なくとも平均点が取れることはすでに証明済みだ。
しかし、MLBの評価は総合評価であり「守備+オフェンス」で価値を図られる。
例えば、川﨑が外野も一塁もできて、シーズン10本くらい本塁打が打てたなら、「スイスアーミーナイフ」と言われたウィルソン・ベテミットのような世過ぎ身過ぎの道もあったろう。これで打撃がすごかったらベン・ゾブリストである。しかし川﨑はそうではない。
そのうえ、川﨑は35歳になった。MLBで彼に投資をしようという球団はほとんどいないだろう。その金があれば、若手に費やすはずだ。

「川﨑宗則の冒険」は、私たちにいろいろなことを教えてくれた。身をもってMLBのすばらしさや奥行きの深さをファンに知らしめた点で功績は大だ。
将来は、せこいNPBの指導者ではなく、日米をまたにかけたコーディネーターとか、コメンテイターとか、川﨑ならではの道が拓けたとは思う。

しかし野球選手としてまだ動ける間は、彼をロースターに入れてくれるところでプレーすべきではないか。
ソフトバンクが声をかけていると聞く。内野は充実してはいるが、ここで再びポジション争いをしてもよいのではないか。
今こそ、冒険から復帰すべき時だと思う。



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