ドラフトとFAの関係について質問をいただいたが、私は完全ウェーバーのドラフトと、今より短いFA権取得はセットだと思っている。さらに言えば「ルール5ドラフト」も設けるべきだ。
完全ウェーバーのドラフトになれば、選手の「球団選択権」はさらに小さくなる。それでも球団と選手の談合は行われるだろうが、特定の球団に入りたいという希望の実現性はさらに低くなるだろう。今でもそういう人はごく少数だが、「それは叶えられないもの」と選手側があきらめるところまで行けばよいと思う。
同時に、FA権取得年限を短くすることで、入りたかった球団に行けるチャンスも残してやる。
私は、プロ球団に入った選手が、プロになってからも「どうしてもこの球団に」と思い続ける可能性はそれほど高くないと思う。現実を知れば、アマチュア時代のそうした希望が大して重要でないこともわかるようになるとは思う。しかし、その可能性は担保してもよいと思う。
FA年限を短くするとともに、「自動FA」にすることも大事だ。「FA宣言」を選手にさせる今の制度は、帰属意識の高い日本社会では酷である。「育ててくれた恩を忘れて」「ファンを捨てるのか」という無言の圧力が選手を苦しめる。
FA権が選手の正当な権利であるならば、踏み絵のような通過儀礼はやめて、年限が来ればみんなが同じ条件になるようにすべきだ。
主力選手だけでなく、控えやわき役も、みんなFA権を行使できるようにすべきだ。
そういう形で選手の流動性が高まればよいと思っている。
一番大事なことは、それによってNPBが「何度でもやり直しがきく社会」になってほしいということだ。
今のNPBは、日本社会の縮図だ。一度球団に入ってしまえば、引退するまでそこにい続けるのが当たり前。出ていくのは裏切者。その代わり控え選手にも居場所はある。試合に出なくても忠誠心を明らかにすることで、飯は食っていける。忠犬ぶりを発揮すれば、引退後も球団でスタッフとして生きていくことができる。
NPBでは、野球以外の人間関係が重要なファクターとなっているのだ。
こうして多くの野球選手にとって、野球は「自己実現」、「自己表現」ではなく「世渡り」の道具になってしまう。
MLBでは、一般でいうドラフト(ルール4ドラフト)に加えて、ルール5ドラフトというものもある。ファームでくすぶっている他球団の選手を指名して獲得する仕組みだ。
これによって、才能のある選手は「やり直し」が可能になる。
そのうえでFAもある。大物選手のように大型契約で移籍する場合もあるが、1年限りの契約やマイナー契約で、多くの選手が移籍をしている。これも「やり直し」の機会だ。
NPBでは、下位指名や育成枠で入団した選手のチャンスは非常に少ない。そのままろくに試合に出ることもなくキャリアを終えることが多い。
そういう選手のためにルール5ドラフトを導入することも重要だろう。
日本そのものが「一度失敗したら終わり」という窮屈な社会である。学歴、社歴を後生大事に抱えて無難に生きていくのが成功者の道だと言われる。
NPBは、こういう生きにくい社会の縮図になっている。世の中の変化に一歩先だって、野球界が「何度でもやり直しがきく」体制になってほしいと願うものだ。
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>FA年限を短くするとともに、「自動FA」にすることも大事だ。「FA宣言」を選手にさせる今の制度は、帰属意識の高い日本社会では酷である。「育ててくれた恩を忘れて」「ファンを捨てるのか」という無言の圧力が選手を苦しめる。
選手会はFA年限の短期化を求めることには熱心ですが、自動FAに関してはなぜかダンマリです。
昨年、FAで宣言残留を認めない球団に「宣言残留を認めてほしい」と主張していましたが、その時こそ自動FA化を主張するチャンスでした。自動FAになれば、そもそも「宣言残留」などという概念そのものが消滅するはずですから、問題は解決されるはずなんですけどね。
ですから、この一件で、小生は球団が選手を従業員のように飼いならそうとする一方、選手の側もその扱いに甘んじている印象を受けました。