先週土曜日のシンポジウム「これからの指導者に求められること」の後半は日本サッカー協会の福士一郎太氏、野球医学科医師の馬見塚尚孝氏、それに慶応高校野球部元監督の上田誠氏、桑田真澄さんによるディスカッションだった。




録音も撮影も禁止されているので走り書きのメモをした。荒いまとめになるのをご容赦いただきたい。

上田氏は福士氏のサッカーの話、馬見塚氏の理念の話を受けて、野球界に理念がないことにショックを受けたと語る。誰かが立ち上がらなければ、野球界はだめになる。
上田氏は野球指導の理念として、
「子供たちを、けがなく、守って、育てていく」だとし、これに加えて国際化だといった。
高校が単独で海外の学校と野球交流をするのは、今の制度では事実上不可能だそうだ。

福士氏は、サッカーは届け出制で紛争地などでない限り、ほぼ認可される。届け出制にするのは、サッカー協会で安否確認ができるようにするためだとのこと。
福士氏は続ける。
サッカーには5つのバリューというものがある。
「エンジョイ」「プレイヤーズファースト」「フェア」「チャレンジ」「リスペクト」だ。
もちろんハードな練習などつらいところも通らなければならないが、それも自分で考えてやる。
「根性」は人につけてもらうものではない。

馬見塚氏は、野球指導者の格差を指摘する。
たとえば、安全面で見てもAEDの講習を受けたか受けないか、一時救命措置ができるかできないかで、生存率が変わってくる。
指導力の格差をなくすためには、これを学問にすべきだ。
道具や戦術は進化しているが、指導力はおくれている。

桑田さんはそれを受けて、「言葉でだまされる」状況がいまだに続いているといった。
例えば打球を処理するときに、指導者は「正面で両手で」という
しかし、桑田さんは現役時代からそうはしなかった。正面に入ると距離感がつかめなかったからだ。
それに両手で捕ると送球動作が難しくなる。
野球界では、片手では捕ることができないグラブを使っていた時代の指導法が脈々と生き続けているのだ。
「言葉でだまされる」の意味がよくわかる。

ここで福士氏。サッカー界では言葉が独り歩きしないように、指導者には選手からのWhyに答えることが求められるという。
サッカーの技術、戦術は、ワールドカップごとにトレンドが変わる。それに合わせて指導法も変わるのだという。

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野球人口減少がテーマになった。

福士氏、
「サッカーは競技人口が増えて、授業にも取り入れられたが、危機感を抱いている。うまい子が突出していたりして先生が白けてしまうなど、授業の進め方に問題がある」という。みんながサッカーを楽しむことができるようにグラスルーツフェスを開催している。

馬見塚氏は
「子供が野球を選んでいただけるような、環境、ライセンスを整備すべきだ」という。
「指導者は医師と同じだ」と。医師は診断をして治療をするが、その過程で必ず副作用が起こる。同様のことが起こっているという。それを防ぐためには、基礎的研究と臨床研究が必要だと。

上田氏は
一つのチームを同じ指導者がずっと指導するのではなく「シャッフルしてはどうか」という。
そして高校生が小学生を教えるのはいいのではないか、と言った。
残念ながら今の制度ではこれも不可能。「青田刈り」を禁止するためだそうだ。プロアマの問題もしかり。

桑田さんは、
「プロ関係者はアマ選手を育てることで還元すべきだ」という。
野球人口減少を食い止めるのは、少子化の中ではすごく大変。「最大化」よりも「最適化」を目指すべきだという。
うまい人はうまいなりに、下手な人も下手なりに野球を楽しんで
「将来どんな分野に行っても“野球って素晴らしいね”と言ってくれる人を作るべきだ」

質問コーナーでは、近畿大学で女子野球を指導する田中氏から女子野球の質問があった。
桑田さんは
「女子も甲子園をやるべき。男子と1日おきに大会をやればいい。学校数が少なくてもいいじゃないか」と言った。これは小林至さんも言っていたことだ。

まことに中身の濃い時間だった。

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