私はいわゆるアラカンだが、台湾から日本に帰ってきて早々、バラエティ番組を見て不覚にも泣きそうになってしまった。
「炎の体育会TV」、地元広島の少年野球の練習に、老人のメイクをした前田健太が、創立者だという触れ込みで加わり、マエケンの大ファンだという少年を3球三振に切って取った、あのシーンだ。
メイクをはがしてマエケンの顔があらわになり、ジャンパーの下からドジャースのユニフォームが出てきたときの、少年の驚きと、こみ上げる笑顔。カメラがあることも忘れて、夢中になるあの顔を見るうちに胸がいっぱいになってしまった。
このシーンはアメリカでも紹介されて好評を博したようだ。
マエケンから三振を奪われた少年だけでなく、その場に居合わせた子供たちは、このシーンを一生忘れないだろう。そして彼らは何があっても野球ファンであり続けるはずだ。
前田健太がナイスガイなのは以前から知っていたが、こういう「お遊び」にも一生懸命付き合う態度は敬服する。彼だってプロ野球選手にあこがれて野球を志したはずだ。初心を忘れずプレーをしているから、こういうことの大事さがよくわかっているのだろう。
いわゆる有名人、芸能人と、プロ野球選手にはちょっと違ったバリューがある。
野球少年、野球ファンにとってテレビや雑誌でよく見る人と、プロ野球中継や実際の試合で投げて、打って、活躍している人とでは、インパクトが違う。有名人は「会えてラッキー」程度だろうが、プロ野球選手は「僕、あなたのプレー見ていました!」と言いたくなるような切実な憧れがある。具体性が違うとでもいおうか。
私は芸能マネージャーをしたことがあるし、商業ライターになってからも、有名人や社長など、気の張る人にインタビューしたことがある。ほとんど上がったこともないし、お仕事としてこなすことができる。
しかし野球選手は特別だ。あのシーン、このプレーが思い浮かぶ選手と対すると、たとえひいきチームでなくても、心が浮き立つ思いがするし、どきどきしてしまう。
今月、桑田真澄さんにはじめてお目にかかった。
私が送った本を読んでくださっていて「ほぼ同じ考えです」と言ってくれた。その会合の間に何度か顔を合わせたが、そのたびに肩を軽くたたいてくれた。
私は桑田さんより9歳も年上だが、その感激たるや半端なもんではなかった。思わず「生まれた時から巨人ファンでした」と言いそうになった。
野球好きというのは、プロ野球選手を無条件で尊敬する人種でもあるのだ。
全く反対の事例もある。
何度か紹介したが、昨年NHKの「ようこそ先輩」に出演した宮本慎也は、Wプレーの面白さを小学校の後輩たちに実感してもらおうとしたが、子供たちはWプレーは愚か、野球のルールさえ知らなかった。当然、宮本慎也を知る子供も少なかった。
宮本慎也は、この番組に出演して少年の「野球離れ」を実感したのだ。
奇しくも3人ともPL学園が生んだスター選手だ。野球が日本のナショナルパスタイムであり続けた、その頂点を極めたエリート選手だ。
野球が特別のスポーツであり、圧倒的な支持を得てきたのは、その頂点であるプロ野球選手が、子供たちの英雄であり、先生よりも親よりも尊敬するあこがれの存在だったからだ。
しかし、今、プロ野球選手を「あこがれの存在」とみなす子供たちは少数派になっているはずだ。
何しろ10代で野球が好きな子供は25%しかいないのだから。
マエケンを憧れの目で見つめた少年野球の子供たちは、実は少数派なのだ。
少年層への普及活動は、ようやく各地で始まっているが、プロ野球選手会やNPBは野球のすそ野を再び広げる努力をしなければならない。
小手先の取り組みではなく、オフの最優先課題として、組織、機構をあげて、野球の魅力を少年たちに伝えなければならない。
どうすれば魅力が伝わるのか、専門家も交えて色々と工夫を凝らしてほしい。このTVのような演出も必要かもしれない。
プロ野球選手がまだ「あこがれの存在」であるうちに。他の有名人にはないオーラを身にまとっているうちに、少年たちを野球に引き戻してほしい。
2015・16年金田和之、全登板成績【2年間で16試合の登板に終わる】
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マエケンから三振を奪われた少年だけでなく、その場に居合わせた子供たちは、このシーンを一生忘れないだろう。そして彼らは何があっても野球ファンであり続けるはずだ。
前田健太がナイスガイなのは以前から知っていたが、こういう「お遊び」にも一生懸命付き合う態度は敬服する。彼だってプロ野球選手にあこがれて野球を志したはずだ。初心を忘れずプレーをしているから、こういうことの大事さがよくわかっているのだろう。
いわゆる有名人、芸能人と、プロ野球選手にはちょっと違ったバリューがある。
野球少年、野球ファンにとってテレビや雑誌でよく見る人と、プロ野球中継や実際の試合で投げて、打って、活躍している人とでは、インパクトが違う。有名人は「会えてラッキー」程度だろうが、プロ野球選手は「僕、あなたのプレー見ていました!」と言いたくなるような切実な憧れがある。具体性が違うとでもいおうか。
私は芸能マネージャーをしたことがあるし、商業ライターになってからも、有名人や社長など、気の張る人にインタビューしたことがある。ほとんど上がったこともないし、お仕事としてこなすことができる。
しかし野球選手は特別だ。あのシーン、このプレーが思い浮かぶ選手と対すると、たとえひいきチームでなくても、心が浮き立つ思いがするし、どきどきしてしまう。
今月、桑田真澄さんにはじめてお目にかかった。
私が送った本を読んでくださっていて「ほぼ同じ考えです」と言ってくれた。その会合の間に何度か顔を合わせたが、そのたびに肩を軽くたたいてくれた。
私は桑田さんより9歳も年上だが、その感激たるや半端なもんではなかった。思わず「生まれた時から巨人ファンでした」と言いそうになった。
野球好きというのは、プロ野球選手を無条件で尊敬する人種でもあるのだ。
全く反対の事例もある。
何度か紹介したが、昨年NHKの「ようこそ先輩」に出演した宮本慎也は、Wプレーの面白さを小学校の後輩たちに実感してもらおうとしたが、子供たちはWプレーは愚か、野球のルールさえ知らなかった。当然、宮本慎也を知る子供も少なかった。
宮本慎也は、この番組に出演して少年の「野球離れ」を実感したのだ。
奇しくも3人ともPL学園が生んだスター選手だ。野球が日本のナショナルパスタイムであり続けた、その頂点を極めたエリート選手だ。
野球が特別のスポーツであり、圧倒的な支持を得てきたのは、その頂点であるプロ野球選手が、子供たちの英雄であり、先生よりも親よりも尊敬するあこがれの存在だったからだ。
しかし、今、プロ野球選手を「あこがれの存在」とみなす子供たちは少数派になっているはずだ。
何しろ10代で野球が好きな子供は25%しかいないのだから。
マエケンを憧れの目で見つめた少年野球の子供たちは、実は少数派なのだ。
少年層への普及活動は、ようやく各地で始まっているが、プロ野球選手会やNPBは野球のすそ野を再び広げる努力をしなければならない。
小手先の取り組みではなく、オフの最優先課題として、組織、機構をあげて、野球の魅力を少年たちに伝えなければならない。
どうすれば魅力が伝わるのか、専門家も交えて色々と工夫を凝らしてほしい。このTVのような演出も必要かもしれない。
プロ野球選手がまだ「あこがれの存在」であるうちに。他の有名人にはないオーラを身にまとっているうちに、少年たちを野球に引き戻してほしい。
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一方で、中居さんの番組はつまらなかったですね。彼は野球好きなのは分かるけど番組を私物化している感じがして嫌な気分になります。野球選手に対する接し方も不快ですね。
女子ソフトの選手と対戦する企画だったんですが、日ハムの中田選手が年上のアボット投手を呼び捨てにしたり挑発したりするのが不愉快でしたね。あと西川選手も年上の山根投手を指名するのに「山根ちゃーん」とふざけた言い方をしたのも気になりましたね。