今時の本は、書店店頭に並ぶ前に、アマゾンから売れていく。まだ編集者とやりとりをしている段階で、書名がアップされ、予約販売がはじまるのが通例だ。
そういう意味では、アマゾンはありがたい存在だが、とんでもない書評が載ることも多い。黒田騒ぎの時に出した本には「広島と黒田の敵」「ただの素人ブロガーが出した本」などというのが載った。これは結構応えた。

しかし「野球崩壊」の書評は、まだ4本だがみんな5つ星だった。よくぞ言ってくれたという声も聞かれた。私にはちょっと意外だった。

正直に言うが、書き始めた当初、「日本の野球界がやばい状態になっているんじゃないの?」という程度の認識だった。高知県の実態や、子供の好きなスポーツ調査などで、ある程度数字はわかっていたが、NPBは史上空前の観客動員に沸いているし、甲子園も満員札止めの日もあったくらいだ。
「そうはいっても、腐っても鯛かもしれない」という気持ちが書いてる私自身にもあった。

でも、書評を読むと、そうではないらしいと思えてきた。

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決定的だったのは、今月初めに参加した「日本野球科学研究会」だった。これは、長谷川晶一さんがご紹介くださったのだが、私はかなり敷居が高い気持ちもあった。

しかし、2日あるうちの1日目、駒場東大に足を運んで、シンポジウムを聞いていると、多くの講師が「野球の危機」を口にした。
特別講演をした桑田真澄さんも、口を開いて最初に言ったのが「30年後に野球はマイナースポーツに転落する」という言葉だった。

この日に懇親会があった。この席で私は旧知の金澤慧さんにお目にかかった。「球辞苑」のコメンテーターとして活躍する金澤さんは、いろんな人をご紹介くださった。大学の研究者や、NPB球団の職員など、多くの人と名刺交換をした。
2日目、私はパネラーとして話をした。小林至さんが議論をリードしたが、私も言いたい放題させていただき、会場がちょっと引くような気配も感じた。そのあと、桑田真澄さんに挨拶に行くと「あの“野球崩壊”に書いてあることは、ほぼ僕の意見と同じです」と言われた。
ここでは書けないが、桑田さんは、野球界でこのことについて危機感を広げようとして、苦労をしておられるのだ。

名刺をもらった人に、その日のうちに御礼のメールを送ったが、多くの人から「まさに“野球離れ”が進行している」という返事をもらった。
驚いたのはNPB球団の職員、就中、元野球選手の職員が、「僕らも全く同じ危機意識を持っています」とメールしてきたことだ。「あなたは外部ではない、同志だ」と書いた人さえいた(それが全部パの人だったのは象徴的だ。セの関係者はそもそも会場に来ていなかった)。大学の先生からもそういうメールを複数いただいた。

変な話だが、それを読んで「俺が書いてきたことは絵空事ではなかったのだ」と思った。

そのあと、桑田真澄さんの本を集中的に読んだ。まことに恥ずかしいことに、私は桑田さんの本をまともに読んでこなかった。改めて通読してみて、桑田さんが5年以上前から「野球界の危機」について警鐘を鳴らしていたことを知った。
まだ、そのときは、「野球離れ」は顕在化していなかった。しかし桑田さんは、野球が持っている旧弊で硬直化した体質が、「野球離れ」を招くに違いない、とはっきり書いていた。
私は読了後、桑田さんにお詫びのメールを送った。

今回の「日本野球科学研究会」は、桑田さんの考え方がかなり反映されていたようだ。「野球離れ」が主要なテーマの一つになったのも、桑田さんの意向だったのだと思う。

その後も少年野球の関係者や大学、高校野球の指導者と知り合いになった。

「野球崩壊」は、私の著作に過ぎないが、たまたま今の「野球界の危機」に対する問題提起になっていたのだ。

このまま次のテーマに行くことはできないと思った。来年は、引き続き「野球崩壊」に関する調べと思考をさらに推し進めていきたいと思っている。

メディアは取り上げてくれないだろうが、当サイトの読者各位にはよろしくお願いしたい。



1973・74年小林繁、全登板成績【リリーバーとして頭角を現す】

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