WBCを存続し、野球の国際化への起爆剤にするために、一番重要なことは「アメリカが活躍する」ことだ。

経済的に見ても、人気でも、アメリカと日本は、二大野球大国だ。これにメキシコ、韓国、台湾が続くが、ドミニカ共和国、ベネズエラ、プエルトリコなどは、MLBへの人材供給国であっても、自国のトップリーグに力はない。ウィンター・リーグで盛り上がっているだけだ。

最大の野球大国、そしてWBCの主催国であるアメリカが、活躍しないことがWBCの価値、ステイタスを大幅に減じている。

過去3大会の勝敗と順位、通算勝率、平均順位 通算順位順に並べる

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2回敗北することでトーナメントから除外されるダブルエリミネーションという複雑な方式のため、各国の試合数はまちまちだ。
そして、勝率と順位が一致していないことがこれでわかる。

ドミニカは2009年にオランダに負けるなど大番狂わせで敗退したが、2013年は無傷で優勝。勝率では1位だ。
韓国は2006年、日本に1敗しただけだったが、この方式のために準決勝で敗退。前回大会では決勝ラウンドに進めなかった。
日本は勝率では3位だが、唯一3大会連続で準決勝以上に進んでいる。
キューバは2006年は決勝で日本に敗退したが、その後は決勝に進んでいない。

アメリカは3大会ともに勝率5割だ。予選ラウンドは突破するが、自国で行われる準決勝、決勝ラウンドで勝利したことはない。
もともとアメリカのファンはWBCをエキシビションとみなして、さして興味を抱いていないと言われる。
アメリカのラウンドの視聴率は2%と言われている。

しかしそれは「もともと人気がない」というよりも、「弱いから人気がない」という部分もあるはずだ。
MLBの公式サイトでは、大会が近づくとWBCの情報を大々的にアピールし始める。それなりに意欲はあるのだ。
残念なことに肝心のMLB選手、球団が「やる気がない」ために、アメリカは決勝まで残らず敗退し、盛り上がらないままに集結してしまうのだ。

MLB球団は巨額契約をしている選手たちが、レギュラーシーズン以外の試合で怪我や故障をすることを恐れている。腰が引けている。
スター選手たちも勝っても年俸に響かないWBCにモチベーションを感じない。そもそも3月にコンディションを上げるような調整はしていない。
さらに言えばアメリカは「世界に自国をアピールする」という気持ちがもともと希薄だ。すでに「No.1だ」という自負がある。「オリンピックに最も無関心な国」なのはそのためだ。
そういう要素が重なって、アメリカは弱いのだ。

ドミニカやベネズエラの選手も、MLB球団から圧力を加えられているが、彼らにとって自国を背負う栄誉は大きい。さらに、選手の中にはFA状態で、MLBやNPBに売り込みたい選手もいるのだ。アメリカとはモチベーションが違う。

日本はアメリカほどに巨額な契約をしている選手はいない。「国のために」という意識も強い。甲子園の選抜大会があるために、春先の調整も巧みだ。

韓国や、台湾も「自国のために」という意識が強い。
キューバには、「アマ野球世界一」というプライドがある。

要するに、WBCは、誰が見ても「最強」のアメリカのモチベーションが上がらないために、「ワールドチャンピオン決定戦」になっていないのだ。

MLB側にも危機感があるようだ。アメリカラウンドに入ってから選手の「スポット参戦」が認められたのはこのためだろう。
また、有力選手が参加を表明しているのは、MLB側のプッシュがあると思われる(例年通り辞退者続出の可能性もあるが)。

WBCがなくなれば、侍ジャパンの存在意義は半減する。日本が「国際大会」をする大義名分も失われる。そうならないためにも、WBCは今後も続けていかなければならない。

そのためにはアメリカに勝ってもらわなければならない。日本はアジアラウンドを勝ち抜いて、アメリカに渡ることさえできれば、メディアは大騒ぎしてくれるのだから、優勝しなくてもいい。

理想的にはアメリカと日本の決勝戦で、アメリカが勝つことだ。決勝の相手は日本でなくてデフェンディングチャンピオンのドミニカ共和国でもよい。
それで多少なりともアメリカ国内が湧くことが絶対に必要だ。
アメリカに頑張ってもらわないと、野球の未来が暗くなる。がんばれ、アメリカ。



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