川﨑宗則がなぜ、身分も収入も保証されている日本、NPBへの復帰を選択しなかったのか。いろいろな見方ができると思う。



一つには「まだやれる」という気持ちがあると思う。今年36歳の川﨑だが、売りである守備力は落ちていない。走力も健在だし、自分なりの打撃もできる。まだMLBに挑戦できる、という気持ちもあるだろう。それにチアリーダーとしてもチームに認められている。
「日本に帰るのは、もっと衰えてからでもできる」ということではないか。

もう一つは、NPBに復帰しても、レギュラーの座が保証されていないこと。
川﨑がMLBに挑戦して今年で6年目になる。この間に福岡ソフトバンク・ホークスも他球団も新陳代謝が進んだ。ソフトバンクの遊撃には今宮がいる。若手がどんどん伸びてきている。日本ハムの田中賢介のように、2年で復帰して何事もなかったかのように元のポジションに収まっている選手もいるが、岩村明憲、西岡剛、中島宏之のように、復帰後、成績が低下して苦しんでいる選手も多い(岩村、西岡は怪我の影響が大きいだろうが)。5年間もアメリカでプレーをしたことによるギャップを考えて、慣れたマイナー契約を選んだ可能性はあろう。

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さらに「尊敬するイチローさんと一緒にいたい」説。確かに渡米の動機は、イチローだっただろう。2012年3月、マリナーズのユニフォームでイチローとキャッチボールをする川﨑はうれしそうだった。
しかしその年の8月にイチローがヤンキースに移籍してからは、二人は違う道を歩んでいる。
すでにレジェンドだったイチローが、衰えながらも特別待遇でチームを移っているのに対し、川﨑は”一軍半”の身分のまま、毎年、落ちたり上がったりを繰り返しつつ、だんだん出場機会が少なくなっている。メジャーとは天地ほど違うマイナーリーグの生活もつぶさに体験している。
川﨑はイチローとは違う体験を積み重ねている。もはや、イチローの背中を追いかけてはいないのではないか。

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そしてこれは本質論になるが、「アメリカの野球界の奥行きを知ってしまったから」という部分が大きいのではないか。
野茂英雄、長谷川繁利、佐々木主浩、松井秀喜、MLBに挑戦した選手の中には、引退後、日本球界に復帰していない例が散見される。
MLBで成功した選手にその傾向がみられる。MLBの成功者は、巨額の資産を築いている。今更日本球界にあくせくポストを求めなくても、食っていくことくらいできる、という部分もあろう。
しかし、それだけではないようにも思う。
MLBとNPBでは、試合環境も、選手の待遇も大きく異なっている。
松井秀喜は、日本球界に復帰しなかった理由として「人工芝」を上げた。固くて無機質な人工芝は、選手の膝、腰に大きな負担を与える。松井秀喜は、それを理由に日本復帰を拒んだ。

日本球界は、選手の身体や、見た目の美しさを犠牲にしても、用途の多様性や、経済効率を考えて、人工芝のグランドを選択している。
このことに象徴されるように、日本球界はいまだにプレイヤーファーストとは言えない。

さらに、MLBは、関連ビジネスのすそ野も非常に大きい。NPBのビジネスのスケールはここ30年ほとんど変わらず、MLBとの経済格差は開く一方。選手のステイタスも日本とアメリカでは大きく異なる。

齋藤隆は今年からサンディエゴ・パドレスのパドレスの「ベースボールオペレーション・アドバイザー兼パシフィックリム・アドバイザー」としてフロント入りした。
彼はMLBの「選手、球団、機構のパワーバランスがとれた体制」を高く評価している。元選手という立場で、マネジメントやビジネスを学び、手腕を発揮しようとしている。
松井秀喜や、ヤンキースのアドバイザーに就くと言われる黒田博樹も、MLBの仕事の多様さ、すそ野の広さに関心があると思われるが、川﨑もそうではないのか。

コーチか解説者、タレントしか生きる道がない、日本の野球界での将来は、MLBに比べればつまらなく見えているのではないか。
川﨑は現役生活を続けつつ、自らのセカンドキャリアも考えているのではないか。

「今経験していることは、一つも無駄にならない」という意識で、今年もアメリカに渡るのではないか。


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