金田正一は、今年の年男だ。8月1日には84歳になる。髪は真っ白になったが、今朝の「サンデー・モーニング」でも意気軒高だ。
張本勲とならんで座り、大谷翔平について聞かれると
「二刀流じゃなくて、一本に絞ってまじめにやったら、(私を)抜くでしょう」
「今は良しとして、一本にせい! ピッチャーならピッチャー、バッターならバッターで良いから」

と語った。

うーん、こういうご老人の「野球放談」いつまで続くんだろうと思う。
張本勲、野村克也、金田正一、広岡達朗、いずれも殿堂入りした偉大な野球人だけど、もう野球の試合をちゃんと見ていないだろうし、MLBのことなんかほとんど知らないだろうと思う。

日本の解説者の中には、試合前から選手や指揮官を取材し、スコアをつけてしっかり試合を分析している人もたくさんいる。
また、現場の指導者として永年選手を見てきた経験を活かして、選手の動きを的確に指摘する解説者もいる。
さらにMLBもNPBも選手として経験したうえで、両方の野球の違いを説明する解説者もいる。

私の最近のお気に入りは、新井宏昌だ。すでに64歳だが、一昨年広島コーチを退任し、昨年が解説者デビューだった。
打撃に対する独特のこだわりがあり、新鮮な言葉遣いをする。
「(アレックス・ロドリゲスの)左手の使い方が大好きです。左手で振りぬき、強い右手を使いすぎません。右手を早く離しているでしょう」
「(ブルージェイズのエンカルナシオンに対して)同じ球が来た。でもボールだからやめておこうというのができるのがいいバッター」
「(球の切れについて聞かれて)投手の球は、どうしても手元へきてスピードが落ちます。でも終速の落ち方が、打者の想像よりも小さいと、打者は切れがあると感じます」


山本昌もいい解説者だ。
「僕なら、わざとバントしやすい球を投げますね。アウトを一つくれるって言ってるわけですから。それにバントしてくださいっていう球を投げると、失敗することも割とあるんですよ」

吉田義男は金田正一と同い年だが、いまだに関西で解説者として活躍している。
「この遊撃手は、二塁寄りに守ってますけど、左にも十分動けますね。いい野手が後ろにいると、投手は安心してコーナーつけるんですよ」
時折眠たそうな声を出す。また岡田彰布と組むときには「岡田の言う通りです」を連発するときもあるが、良い解説もする。

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最近は、「球辞苑」や「スポーツ酒場語り亭」などでも、元プロ選手のいい言葉が次々に生み出されている。

でも、こうした本物の「野球の言葉」よりも、張本勲、野村克也、金田正一、広岡達朗の方が注目度が高いのだ。

金田の「(WBC)に選ばれた選手は、頑張ってほしい。とにかく一生懸命やることです」を、「ほおー!」と感心して聞く年寄りもたくさんいるのだ。

こういう老人たちの言葉は、せんじ詰めれば「俺は偉かった」「俺に任せないから野球界はだめなんだ」に帰する。「自慢話」と「ほら話」なのだ。今の野球選手へのリスペクトはない。

「野球放談」が一定のニーズがあるのはよくわかるし、仕方がないが、野球現場から遠く離れてしまった老人の言葉がいまだに重みがありすぎるのは、良くないことだと思う。

年功序列で、権威をありがたがり、ちっとも勉強しない野球界の古くて悪い一面が出てしまっていると思う。

もう少し「実のある言葉」が重視されるようになれば、野球界の現状や、未来に目を向ける人が増えてくると思うのだが。

具体的なプランはないが、この本に続いてまた「野球の言葉」をまとめて上梓したいと思い始めている。




1980年鈴木啓示、全登板成績【苦しい時に働いていないんだから・・・】

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