朝日新聞がMLBの奨学金制度について紹介している。





憧れの舞台、メジャーリーグ。しかし、たどり着けるのは一握りだ。引退後、第二の人生で苦労する選手も多い。そんな選手を支援すべく、大リーグでは各球団が共通の「大学奨学金制度」を設けている。対象は、高卒と大学を中退した選手。今年で開始から50年以上が経ち、これまで1万人以上が恩恵を受けている。

記事ではリチャード・サリバンというAAで終わった投手が、ブレーブスの奨学金制度を利用して美術系の大学に入学しなおし、卒業後、水彩画家として活躍していることが紹介されている。
MLBでは1962年に奨学金制度が創設された。当初はドラフト上位のエリート選手だけだったが、不安定なプロ選手になることに不安を示す親の説得材料として、普及したという。

新人がプロ契約を結ぶ際に球団と交渉し、奨学金の金額と受け取る期間を契約条項に入れることが受給の条件だ。期間は最大8セメスター(半期)で、金額は開始当初は1半期につき1千ドル(約12万円)が上限だったが、89年を境に撤廃。現在は球団が合意する金額がもらえる。15年には計40万ドル(約4600万円)を約束された選手もいたという。

対象となる学校は、4年制の大学が原則。国外や通信も認められるが、大学院や専門学校は適用外となる。選手によって金額や条件は異なるが、球団が持つ経費には寮費や食費、教科書代も含まれる。引退した選手が多い中、オフを利用して、単位を取得する現役選手もいる。


アメリカの大学は、政府からの補助金を受けていない場合も多く、学費は日本の数倍、年間数百万円もする。だから大学生の7割は奨学金を受ける。
そういう意味では、奨学金を契約に組み入れるのは自然の成り行きだとも思う。

日本でも契約時にこうした奨学金を組み入れることは可能だろう。契約金の中から、一定の金額を奨学金名目で引き当てておき、引退時に一時金にするか、奨学金にするか選択すればいいだろう。
リハビリ関係、スポーツ医療関係の資格を取ったり、教員免許を取るために使うことができる。セカンドキャリアのためには有用だ。

ただ、アメリカの制度は日本のものよりももっとスケールが大きいし、夢がある。
野球選手がダメだったら、それに次いで自分がなりたいものになるために、大学に入りなおして再チャレンジをする。
野球選手をやめてから医師や弁護士になるケースもある。また一流のビジネスマンになる場合もある。いずれも大学に入り直し、一から学んで違う道のプロになったのだ。
ゲール・ホプキンスは広島と南海でプレーしたスラッガーだったが、試合のない日には論文作成のため日本の医大に通って医学の勉強をしていた。彼が奨学金を利用したかどうか知らないが、引退後は希望通り医師(整形外科医)になった。

日本で奨学金制度を導入したとしても、大学に入りなおして、全く違う分野の勉強をする選手はまずいないだろう。たとえ単位を取得して大学を出たとしても、就職の道はほとんどないからだ。

日本では「キャリア」とは、一定の年限までに大学を卒業して、企業に正社員で入社することだ。
25歳以降に大学に入りなおして卒業したとしても、一流企業や公務員で正規雇用される可能性はほとんどない。あとは学歴に頼らず、徒手空拳で生きていくしか道がないのだ。
要するに一度キャリアを踏み外せば「やり直しがきかない」社会なのだ。

プロ野球選手も同様だ。引退後、野球時代のつながりでスポーツ関連に就職するか、指導者になるか、解説者、タレントになるか、飲食業を開業するかくらいしか選択肢がない。

日本は、リスタートのできない、リベンジができない社会なのに、貧富の格差が広がり、階層化が進んでいる。ますます「失敗ができない」社会になってきている。

本来夢のある世界のはずのプロ野球も、お寒い状況だ。野球界の改革でどうなるという話ではないが、日米の格差を痛感する。

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