今年は、かの国の新大統領のおかげで「利益相反(Conflict of Interest)」という言葉がはやりそうだ。
WBCにおけるMLBサイドもこの言葉で説明できそうだ。


利益相反とは、ある行動、行為が一方には利益となり、他方には不利益となるような状態のことを言う。

トランプ次期大統領でいえば、大統領でありながら、実業家として利潤を追求することで、自社には利益をもたらすが、アメリカ社会には不利益をもたらしかねないような状態。
大統領という公職に就くときに、それまでの仕事をやめなければいけないのは「利益相反」が起こる可能性があるからだ。
トランプは、自分が経営する企業の役職から退いたが、自分の子供をその後継に据えた。それは実質的な傀儡ではないのか、トランプは経営の実権を握ったまま大統領になるのではないのか、と言われているわけだ。

WBCについて、いつも抱いているMLBの釈然としない動きも「利益相反」で説明できるのではないかと思う。

MLB機構、選手会は、各球団の選手を借り受けて「アメリカ代表」を結成し、WBCを戦う。選手が活躍し、チームが勝ち進めば、WBCは盛り上がる。MLB機構、選手会は、WBCの主催者でもあるから、それは大会の収益を考えても良いことだ。
しかしながら、MLBの構成員である各球団にとっては、レギュラーシーズン以外の試合で選手がプレーすることは、利益に結びつかないし、ケガのリスクもある。
MLB全体のことを考えるべき機構、選手会が、球団の利益にならないイベントを挙行している、これは「利益相反」ではないのか。
WBCがいくら黒字でも、これではMLB球団は納得できない。

NPBの場合も各球団は故障、消耗のリスクがあるにもかかわらず、選手を「侍ジャパン」に貸し出している。
その点は同じだ。しかしながら、日本ではWBCの注目度は極めて高い。「侍ジャパン」が活躍すれば、NPBへの注目度も高まり、全体が盛り上がる。
NPBでも「利益相反」が起こっているはずだが、それを上回る有形無形のメリットがある。NPB球団がWBCに非協力な態度を示せば、世間の非難を浴びかねない。そうした圧力もあるので、NPB球団はWBCに協力する。

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「利益相反」は、利害が一致しない二つのスタンスを、1人、1組織が兼ねることによって生じる。トランプが経営者をやめて大統領に専念するように、MLB機構、選手会も、WBCの主催者から降りるべきだ。そして客観的な第三者がWBCを主催すべきだ。もちろん、MLB関係者がそこに関与するのは構わない。しかし、立場の違いを明確にすべきだ。
それは当然ながら、WBSC(世界野球ソフトボール連盟)傘下の組織になるべきだ。

そのうえで、主催者はMLB球団(だけでなくすべての参加国)に、明確なビジョンとメリットを提示すべきだろう。
巨大な経済規模を誇るMLB球団を満足させるようなメリットを提示するのは難しそうだが、例えば勝利に応じたインセンティブを与えるようなもの。
それ以上に重要なことは、WBCが、今後、どのような方向に発展していくのかを明示することだろう。
WBCを核として、どんなビジネスモデルを構築していくのか。国内リーグの延長線上に世界リーグを創設するとか、何らかの目標とロードマップを示すべきだろう。

日本だけでなく、アメリカもそうだが、野球界はこういうビジョンを打ち出すのが苦手だ。MLBは、草創期からライバルを蹴落として利益を独占してきた。NPBも自分たちの「今」の利益しか考えてこなかった。「みんな」の「未来」を思い描くことは本当に苦手だ。

しかし、日米ともに国内市場での野球ファンのシェアが低下する中、ビジョンが描けなければ、将来はない。

「利益相反」を放置したままWBCを続けることは、健全とは思えない。このタイミングで、野球界全体が話し合うべきではないか。


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