東スポ
巨人のドラフト2位ルーキー・畠世周投手(22=近大)が昨年、ドラフト後に右ヒジの遊離軟骨除去手術をしていたことが発覚し、球団内に波紋が広がっている。
もともとこの投手は、右ひじに問題があったが、大学の先輩でもある山下前スカウト部長の強いプッシュで指名が決まったという。
しかし、キャンプイン前に手術は大きな誤算だ。大卒投手は即戦力だが、キャンプで出遅れることは、1年棒に振ることにつながりかねない。

NPBの健康管理は、今はかなり進んでいる。肩、ひじや腰など全身の状態をスキャンし、必要があれば治療を施している。一方で、キャンプでの投げ込みなど、過度のハードワークなどは残ってはいるし、MLBに比べれば、まだまだ十分とは言えないが、選手を巨額の投資をした「資産」とみる考え方は定着してきたといえよう。

しかしアマチュア野球の健康管理は様々だ。大学野球部ともなれば、チームドクターもいるし、メディカルチェックも行っているが、選手を出場させるかどうかは、指導者の判断にゆだねられる。
勝利、優勝のために故障を抱えた選手を出場させることは、ふつうにあることだ。
リスクはあるだろうが、幸運に恵まれれば故障は悪化しない。そういう認識で選手を起用するのだ。

高校野球に至っては、さらに問題がある。高野連の八田会長は「東洋経済」の取材で、甲子園での登板過多の話が出た時に「健康管理は重要だが、中には甲子園で燃え尽きたいという生徒もいる」と言った。
高校野球のトップがこんなことを言うのだから、推して知るべし。

甲子園大会の前には、高野連は選手のメディカルチェックを行っている。それでひっかかれば出場できないが、その後の甲子園で過酷な登板をして、故障することについては問題視していない。

高校の中には、厳しいメディカルケアをしている学校もあるが、そうでない学校も多い。医療知識などない指導者が、昔ながらの指導をして、選手をつぶすケースは非常に多い。
極端に言えば「ハードな練習でつぶれるのは、選手が悪い。そこまでの選手だ」という意識がまかり通っている。
勝利のために野球ができなくなるのはいまだに「美談」でさえある。

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少年野球はさらに問題だ。学校のような大きな組織に属さず、ボランティアや小規模な営利組織が運営している少年野球チームでは、十分な健康管理ができていないケースも多い。知識のない指導者も多い。
その段階で怪我、故障をして野球を断念する子供たちも多いのだ。

日本のアマチュア野球は、小中学校、高校、大学の各レベルで、結果を出すことを求められる。勝利が大前提になっている。勝つためには、選手に無理を強いるのは当たり前のことになっている。

本来ならば、優れた資質に恵まれた野球少年は、まさに「至宝」だ。各レベルで成長を促しながら順調に育てて大成させるべきだと思うが、アマチュア指導者は、自分が預かった期間に結果を出すことばかり考えている。選手を消耗して勝利を得ようとしているのだ。
桑田真澄がそうだったが、多くの選手は、指導者の無茶な練習や試合での酷使を拒絶して、自分で自分の体を守ったものだ。

アマとプロが一体化していない上に、指導者のライセンスもないから、こういう事態が起こる。

ドラフトで指名されて、ろくに試合に出ることもなく消えていく選手は、常にいるが、彼らはお粗末な「日本野球界」の犠牲者だと言えるだろう。


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